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第25回 | 大人のための最新自動車事情

セレブやVIPが愛用するアメリカン「フルサイズSUV」

いま世界の自動車市場でもっとも熱いカテゴリとなっているSUV。とくに、余裕のある大人の男性に人気が高いのが、ポルシェ「カイエン」、BMW「X6」、レクサス「RX」などのラグジュアリーなクロスオーバーSUVだ。しかし、SUVの本場であるアメリカでは、セレブやVIPの間でまったく異なるタイプのSUVが絶大な支持を集めている。それが、マッシブな外観とゴージャスで広大な室内を持つ、アメリカン「フルサイズSUV」である。

高級サルーンのメルセデス・ベンツ「Sクラス ロング」よりも全長が長いフルサイズSUV

トヨタ「アルファード」「ヴェルファイア」と日産「エルグランド」は、国産車として最大級のボディサイズの大型「ミニバン」だ。ミニバンとは、1980年代半ばにアメリカで生まれたカテゴリで、元祖はダッジ「キャラバン」。そして、この元祖ミニバンも、ボディサイズは全長4468mm×全幅1765mm×全高1636mmと、けっして「ミニ」というほど小さいクルマではなかった。

では、なぜこれらのクルマがミニバンに分類されているのか。それは、もとともとアメリカには、ミニバンより大きく乗員数も積載量も多い「フルサイズバン」が存在していたからである。

アメリカの人々にとって、「普通サイズ」のクルマとは、全長5m以上の「フルサイズ」を意味する。そのため、日本では大型のアルファードやエルグランドも、アメリカの感覚では物足りないサイズの「ミニ」となってしまうわけだ。

「フルサイズSUV」は、そうしたケタ違いに大きなボディを持つアメ車のSUV。リンカーン「ナビゲーター」、キャデラック「エスカレード」、フォード「エクスプローラー」が代表的なモデルで、ナビゲーターのボディサイズは、じつに全長5290mm×全幅2010mm×全高1980mmに達する。全長は、ロングボディの高級サルーン、メルセデス・ベンツ「S550ロング」より40mmも長いのだ(下の写真はキャデラック・エスカレード)。

別次元の広さと豪華さのフルサイズSUVの室内

ここまで大きいサイズのSUVは、欧州にもそれほど存在しない。アメリカでフルサイズSUVが人気となっているのは、やはり国土が日本や欧州諸国とは比較にならないほど広大なことが一番の理由だという。

「アメリカは、街から街への移動に数時間かかることもザラなので、移動中の快適性が非常に大切です。その点、フルサイズSUVの室内はゆったり広々としているので、長時間の移動でもそれほど疲れません。移動そのものが、家族で愉しめる時間となるのです」。そう話すのは、多数のフルサイズSUVを輸入・販売する東京都町田市のアメ車専門店「GRIDE(グライド)」の鈴木正人店長。

移動の際の快適性を重視しているだけに、フルサイズSUVの室内の広さと豪華さは別次元だ。たとえば、キャデラック・エスカレードのシートは、最高級素材のナッパレザーをセミアニリン仕上げで色付けしたもので、まるで5つ星ホテルの最上級ソファーのように柔らかく包み込んでくれる。縦にも空間が広いため、頭上から圧迫感を感じることもまったくない。また、ドアは80度開くうえ、乗り降りしやすいようにドアが開くと自動的にステップがせり出てくるのだ。リンカーン・ナビゲーターにいたっては、リアゲートが電動で開閉可能なだけではなく、サードシートも外から電動で倒せたり起こしたりもできる。

こうした快適性、ゴージャスさから、フルサイズSUVはアメリカのセレブやVIPの移動用の足としても愛用されている。ホワイトハウスにやってくる政治家や、アカデミー賞に出席してレッドカーペットを歩くセレブたちが乗っているのも、いまやその多くがフルサイズSUVだ。

新車のフルサイズSUVは価格1000万円以上、しかし数年の型落ちなら数百万円で購入可能

アルファードなどの高級ミニバンが売れている日本の自動車市場でも、フルサイズSUVが評価を高めている。「GRID」の鈴木店長によれば、フルサイズSUVのユーザー層は20〜30代が中心とやや若めだが、最近は経済的に余裕のある40代の「ちょい悪」層の間でも人気が高まっているという。

「フルサイズSUVは、さすがに新車で買うと1000万円以上はしますが、2006年モデルなどなら200万円台から購入可能です。ガゾリンはレギュラーでもOKで、燃費は街中でだいたい6〜7km。想像するほど維持費も高くありません」

ただし、フルサイズSUVは並行輸入車がほとんどで、そこには落とし穴も存在する。アメ車の並行輸入車にはメーターが巻き戻され、走行距離をごまかしているクルマが多いという。そのため、走行距離の計測ツールを使った証明書を発行してくれるなど、きちんとしたディーラーを選ぶことが重要となるのだ。

「証明書の有無で100万円以上の価格の違いが出てきますが、後で故障などに悩まされないためにも、証明書つきのクルマを選ぶことをおすすめします。そこにさえ注意すれば、故障の心配もありません。フルサイズSUVは大柄のわりに取り回しがよく、ユーザーフレンドリーな面もあるので、愉しいアメ車ライフが送れると思いますよ」

移動の快適性だけではなく、フルサイズSUVが漂わせるいかつくもリッチでゴージャスな雰囲気は、街中を走れば人々の視線を独占する。セレブやVIPの気分も堪能できるフルサイズSUVは、まさに大人の男のためのクルマといえるだろう。

Text by Tetsuya Abe

取材協力
アメ車専門店 GLIDE
住所:東京都町田市鶴間7-5-32
TEL:042-788-2888
FAX:042-788-3555

SUVだけではなく様々なアメ車を専門的に取り扱う。アメリカに現地法人があり、日本人担当者が厳選した車両のみを輸入し、納車前にはスタッフが110項目に及ぶ納車整備を行うなど品質補償に絶対の自信を誇る。
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第129回 | 大人のための最新自動車事情

マッチョな軍人たちへ──愛国仕様のダッジチャージャー

『ワイルド・スピード』の第一作が公開されたのは2001年のことだ。主人公ドムの愛車は、圧倒的パワーをもつ古き良き時代のダッジ『チャージャー』。言わずとしれたマッスルカーである。あれから10余年。アメリカでは今、シリーズにたびたび登場する1960〜70年代の『チャージャー』の価値が上昇し続けている。なにしろ、このSUV全盛の時代にあって、現行の『チャージャー』『チャレンジャー』までもが10年間で70%も販売台数が伸びているのだ。そして、この人気を逃すまいとブランドもさまざまな限定車やオプションを設定。今年4月には、なんとも印象的なストライプのカスタムルックが登場した。

モダンマッスルカーの代表車種2台。ダッジ『チャージャー』と『チャレンジャー』

マッスルカーとは、広義では大排気量のV8エンジンを搭載するハイパフォーマンスのアメリカ車を指す。狭義では1968年から1971年にかけて作られた高性能でハイグレードなアメ車のこと。フルサイズのセダンやクーペ、後輪駆動車が多い。したがって、より正確にいうと、現行車種はマッスルカーではなく、ニューマッスルカーなどと呼ばれる。

そのモダンなマッスルカーのひとつが、ダッジブランドの現行『チャージャー』『チャレンジャー』だ。『チャージャー』は2ドアクーペで、いわば生まれながらのマッスルカー。『チャレンジャー』は4ドアセダンで、フォード『マスタング』と同様にポニーカー(手頃な価格のスポーティカー)として誕生した。いずれも現行型は第三世代で、発表されてから10年以上の時を刻んでいる。にもかかわらず、本国では依然高い人気を誇るモデルだ。

その証拠に、4月のニューヨークオートショー2019において、2台の上位グレードに設定可能な特別パッケージが発表されると、それだけでニュースになったほど。パッケージの名称は「stars & stripes edition(スター・アンド・ストライプス・エディション)」。ミリタリーをテーマとする渋いストライプをまとったカスタムルックのオプションである。

テーマは星条旗。フロントからリアにかけて走る極太のサテンブラック・ストライプ

「stars & stripes edition」は、その名のとおり、「スター・アンド・ストライプス(星条旗)」をテーマにしたカスタムルックだ。最大の特徴は、フロントからリアにかけてボディを覆うようにペイントされたサテンブラックのストライプ。この極太ストライプの正面に向かって右側、つまりドライバーズシート側には、シルバーの縁取りが入っている。

シートはブラックのファブリック(布製)で、ヘッドレスト側面に刺繍されたブロンズのスターが目を引く。このブロンズカラーはシートとステアリングホイールのステッチにも使用されている。そのほか、ボディ側面にさりげなく描かれている星条旗、20インチホイール、前後のスポイラー、装備されるバッジ類は、すべてサテンブラック仕上げだ。

選択できるボディカラーは、「デストロイヤーグレイ」「F8グリーン」をはじめ、「グラナイトクリスタル」「インディゴブルー」「マキシマムスティール」「オクタンレッド」「ピッチブラック」「トリプルニッケル」「ホワイトナックル」の全9色。写真の『チャージャー』はデストロイヤーグレイ、『チャレンジャー』がまとっているのはF8グリーンだ。

軍人や愛国精神をもつマッチョたちのために設定されたカスタムルックのオプション

「統計によると、軍人が購入するアメリカンブランドのなかで、もっとも人気があるのはダッジ」。これはダッジのプレスリリースにある一文だ。とりわけ、彼らがもっとも多く選択しているのが『チャージャー』と『チャレンジャー』だという。つまり、軍人や愛国精神をもつマッチョな男たちのために設定されたのが今回の星条旗ルックというわけだ。

愛国精神はともかく、マッスルカーがマッチョな男に似合うのは『ワイルド・スピード』シリーズを見れば一目瞭然。日本人はよほど筋トレしないとむずかしいかもしれない。

なお、「stars & stripes edition」が設定されるのは『チャージャーR/T』『チャージャー スキャットパック』『チャージャーGT RWD』『チャレンジャーR/T』『チャレンジャーR/T スキャット・パック』『チャレンジャーGT RWD』の6車種。5月から発売される。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fiat Chrysler Automobiles
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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