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第23回 | 大人のための最新自動車事情

もはや自動駐車は当たり前、オートパイロット最前線

「自動運転? 実用化はまだまだ先の話でしょ?」。クルマ好きの大人の男性のなかにも、まだそう思っている人がいるかもしれない。たしかに、ほんの5年前まで「自動運転」は遠い未来の話にすぎなかった。しかし、米グーグルが完全自動運転を目指して積極的に開発を行っているように、世界の自動車メーカーも、欧州車を中心にリモコン操作によるリモート・パーキングや、ステアリング操作まで行うドライブアシストシステムなど、さまざまな自動運転技術をすでに実用化しているのだ。

BMW「7シリーズ」が導入した自動駐車システム

2016年5月、BMWのフラッグシップセダン「7シリーズ」に、「リモート・コントロール・パーキング」というオプションが設定された。名称でもわかるように、つまり「自動駐車システム」である。

これまでも、運転席に座ったドライバーのステアリング操作を自動制御してくれるタイプの駐車支援システムはあったが、BMWの「リモート・コントロール・パーキング」はそれとはまったく違う。ドライバーが外からディスプレイ内蔵のリモコンキーを操作して、無人のクルマを所定の位置まで動かすことができるのだ。操作時は常にPDC(パークディスタンスコントロール)センサーが作動し、歩行者などを検知すると、自動的に動作を停止する。ドライバーなしの自動駐車システムは、量産車として世界で初めてのことだ。

自動駐車システムを導入しているのはBMW 7シリーズだけではない。やはり2016年5月、内蔵ソフトウェアを更新することでさまざまな機能を追加できる高級EV「テスラS」も、日本市場に向けて自動駐車システム「サモン」の無料配信を開始。いまのところ、BMWもテスラも、駐車場所の正面にクルマを停めたときにしかシステムは対応しないが、テスラの場合、来るべき「完全自動運転」時代に備え、すでにセンサーや制御システムも搭載済みで、ソフトウェアのアップデートで機能を追加することが可能だ。

世界最先端をいくメルセデス・ベンツ「Eクラス」の自動運転機能「ドライブパイロット」

しかし、これはまだ序の口にすぎない。BMWと同じドイツのプレミアムブランド、メルセデス・ベンツは2016年1月、「ドライブパイロット」と呼ばれる最先端の新技術を搭載した新型「Eクラス」を発表した(メイン写真と下の写真)。

メルセデス・ベンツはすでに2013年、レーダーセンサーやステレオマルチパーパスカメラでクルマの周辺のほぼ360度を監視し、事故の危険性があればドライバーに警告、自動ブレーキなどによって事故を未然に予防する「レーダーセーフティ」を標準装備して部分自動運転を実現している。

ドライブパイロットは、これをさらに進化させたものだ。とくに、先行車との車間距離、周囲の交通状況を常に監視することで、これまでよりもステアリングアシストが作動する状況が大幅に拡大。道路の混雑時や高速道路が渋滞した際は、このシステムによってドライバーにかかる負担を大きく軽減する。

たとえば、「ディストロニックプラス」は、ステアリングに手を添えているだけでクルマが自動的にコーナーを駆け抜けてくれるアシスト機能で、新型Eクラスでは130km/hまでの速度なら車線のない道路でも動作する。渋滞時の発進停止もクルマ任せでOKなのだ。

さらに、「アウトバーンパイロット」は、ウィンカーレバーを操作すると隣のレーンの交通状況を認識し、可能なタイミングで自動的に車線を移るなど、車線変更も自動で行う機能。また、ドライバーが車線変更をしようとステアリングを切ったとき、隣の車線にクルマがいることを検知すると、自動的に元の車線に戻ってくれる機能もある。

自動車線変更機能はテスラも実用化しているが、その制御はメルセデス・ベンツのほうがより自然だという。新型Eクラスは、スマートフォンで操作する「リモート・コントロール・パーキング」も装備している。

オートパイロットの完全実現は2020年以降!?

自動運転には、緊急自動ブレーキや追従型クルーズコントロールなど、ひとつの機能を自動化する「レベル1」から、完全自動運転の「レベル4」まで4段階あるが、メルセデス・ベンツの「ドライブパイロット」は、ステアリングを握らずハンズフリーで走行できる「レベル3」に限りなく近いもの。まだ手放し運転は認められていないが、技術的にはその段階まできているのだ。

問題は、法律やルールが自動運転技術の進化に追いついていないことだろう。「ハンズフリー(手放し運転)はどこまで認められるのか?」「その場合の運行責任は誰が持つのか?」など、自動運転の国際的なルールが確立されれば、オートパイロット化の波はさらに加速していくはずである。日本政府の高度情報通ネットワーク社会推進本部も、東京オリンピックのある2020年後半以降の完全自動運転の実現を目標に掲げている。

世界の自動車産業にとって、「オートパイロット」の完全実現は待ったなしなのだ。今後の数年で「自動運転」をめぐる事情が大きく変わるのは間違いない。

Text by Muneyoshi Kitani

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第129回 | 大人のための最新自動車事情

マッチョな軍人たちへ──愛国仕様のダッジチャージャー

『ワイルド・スピード』の第一作が公開されたのは2001年のことだ。主人公ドムの愛車は、圧倒的パワーをもつ古き良き時代のダッジ『チャージャー』。言わずとしれたマッスルカーである。あれから10余年。アメリカでは今、シリーズにたびたび登場する1960〜70年代の『チャージャー』の価値が上昇し続けている。なにしろ、このSUV全盛の時代にあって、現行の『チャージャー』『チャレンジャー』までもが10年間で70%も販売台数が伸びているのだ。そして、この人気を逃すまいとブランドもさまざまな限定車やオプションを設定。今年4月には、なんとも印象的なストライプのカスタムルックが登場した。

モダンマッスルカーの代表車種2台。ダッジ『チャージャー』と『チャレンジャー』

マッスルカーとは、広義では大排気量のV8エンジンを搭載するハイパフォーマンスのアメリカ車を指す。狭義では1968年から1971年にかけて作られた高性能でハイグレードなアメ車のこと。フルサイズのセダンやクーペ、後輪駆動車が多い。したがって、より正確にいうと、現行車種はマッスルカーではなく、ニューマッスルカーなどと呼ばれる。

そのモダンなマッスルカーのひとつが、ダッジブランドの現行『チャージャー』『チャレンジャー』だ。『チャージャー』は2ドアクーペで、いわば生まれながらのマッスルカー。『チャレンジャー』は4ドアセダンで、フォード『マスタング』と同様にポニーカー(手頃な価格のスポーティカー)として誕生した。いずれも現行型は第三世代で、発表されてから10年以上の時を刻んでいる。にもかかわらず、本国では依然高い人気を誇るモデルだ。

その証拠に、4月のニューヨークオートショー2019において、2台の上位グレードに設定可能な特別パッケージが発表されると、それだけでニュースになったほど。パッケージの名称は「stars & stripes edition(スター・アンド・ストライプス・エディション)」。ミリタリーをテーマとする渋いストライプをまとったカスタムルックのオプションである。

テーマは星条旗。フロントからリアにかけて走る極太のサテンブラック・ストライプ

「stars & stripes edition」は、その名のとおり、「スター・アンド・ストライプス(星条旗)」をテーマにしたカスタムルックだ。最大の特徴は、フロントからリアにかけてボディを覆うようにペイントされたサテンブラックのストライプ。この極太ストライプの正面に向かって右側、つまりドライバーズシート側には、シルバーの縁取りが入っている。

シートはブラックのファブリック(布製)で、ヘッドレスト側面に刺繍されたブロンズのスターが目を引く。このブロンズカラーはシートとステアリングホイールのステッチにも使用されている。そのほか、ボディ側面にさりげなく描かれている星条旗、20インチホイール、前後のスポイラー、装備されるバッジ類は、すべてサテンブラック仕上げだ。

選択できるボディカラーは、「デストロイヤーグレイ」「F8グリーン」をはじめ、「グラナイトクリスタル」「インディゴブルー」「マキシマムスティール」「オクタンレッド」「ピッチブラック」「トリプルニッケル」「ホワイトナックル」の全9色。写真の『チャージャー』はデストロイヤーグレイ、『チャレンジャー』がまとっているのはF8グリーンだ。

軍人や愛国精神をもつマッチョたちのために設定されたカスタムルックのオプション

「統計によると、軍人が購入するアメリカンブランドのなかで、もっとも人気があるのはダッジ」。これはダッジのプレスリリースにある一文だ。とりわけ、彼らがもっとも多く選択しているのが『チャージャー』と『チャレンジャー』だという。つまり、軍人や愛国精神をもつマッチョな男たちのために設定されたのが今回の星条旗ルックというわけだ。

愛国精神はともかく、マッスルカーがマッチョな男に似合うのは『ワイルド・スピード』シリーズを見れば一目瞭然。日本人はよほど筋トレしないとむずかしいかもしれない。

なお、「stars & stripes edition」が設定されるのは『チャージャーR/T』『チャージャー スキャットパック』『チャージャーGT RWD』『チャレンジャーR/T』『チャレンジャーR/T スキャット・パック』『チャレンジャーGT RWD』の6車種。5月から発売される。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fiat Chrysler Automobiles
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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