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第6回 | 大人ライダー向けのバイク

40男の間で人気沸騰、甦る伝説「アフリカツイン」

1983年から1991年まで『週刊少年マガジン』で連載され、熱狂的支持を集めた『バリバリ伝説』。天才ライダーを主人公にしたこの大ヒット漫画の影響もあり、1980年代の日本には空前のバイクブームが訪れた。毎年夏に行われる日本最大のバイクの祭典「8耐(鈴鹿8時間耐久ロードレース)」には、当時、じつに15万人の観客が詰めかけたほどだ。各メーカーはニューモデルを次々と投入し、ヤマハ「RZ350」、スズキ「GSX1100S カタナ」、ホンダ「VT250F」「CBX400F」など、現在も語り継がれる名車が数多く生まれた。オフロード車にもさまざまなモデルが登場し、なかでも、ビッグオフローダーとしてバイクファンの心を掴んだのが、ホンダ「アフリカツイン」である。そして2016年2月、この伝説のバイクがついに復活。新型本格オフローダー「CRF1000L アフリカツイン」は、発売からわずか1週間で年間販売目標の1000台を売り切るなど、40〜50代男性の間で大人気となっている。

わずか1週間で年間販売目標の1000台をクリア

1980年代のバイクブームのなかで、「世界一過酷なラリー」として紹介され、人気を集めたパリ・ダカール・ラリー。このパリダカで4年連続優勝するなど、圧倒的な強さを発揮していたラリーマシン「NXR」をモチーフに、1988年に市販化されたのが、650ccのVツインエンジンを積んだ「XRV650 アフリカツイン」だ。

初代アフリカツインは1989年、パリダカの市販車無改造クラスに参戦し、デビューウィンを飾った。砂漠の王者としてそのイメージを強固なものとし、大排気量のオフローダーという独自のスタイルによって世界中に熱狂的なファンを獲得する。

その後、アフリカツインは1999年に生産を終了。アフリカツインが切り拓いた「アドベンチャー」というカテゴリは、BMW「GSシリーズ」に引き継がれ、オン・オフを問わないマルチな走行性能と疲れ知らずの快適性で支持を集める。世界中のバイクメーカーがアドベンチャーに参入し、巨大なブームとなっていくのだ。

しかし、昔のアフリカツインを知る40〜50代が待ち望んでいたのは、アドベンチャーバイクのブーム化ではなく、オリジナルモデルの再販だった。そして、生まれたのが新型アフリカツインである。その変わらぬ人気ぶりは、発売1週間で年間販売目標をクリアしたことでもよくわかるだろう。

お値段は135万円から、街中で抜群の存在感

新型アフリカツインは、かつてのVツインではなく、新開発の1000cc並列2気筒エンジンを採用。初代よりも排気量を向上させたことでパワーとトルクが向上し(最高出力92ps/7500rpm、最大トルク9.7kgm/6000rpm)、街乗りや高速巡航、そしてオフロードでの走破性も同時に高めている。

トランスミッションは6MTのほか、「Gスイッチ」付きの6速デュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)も用意。このスイッチをONにすると、どのモードでもよりダイレクトなシフトフィーリングが味わえる。後輪のABSも完全にOFFにすることが可能。砂煙を巻き上げてのドリフト走行なども自由自在に行える。

デザインは高級感と力強さを併せ持ち、車体価格はMTモデルが135万円から、DCTモデルは145万8000円からとなっている。安くはないが、高いというわけでもなく、機能装備面からみても納得の価格設定だ。抜群の走行性能と街中における存在感などを考えれば、40代男性が休日のリフレッシュツールとして手に入れてもなんら不満はないはずである。

1980年代当時の熱い思いを甦らせる40男たち

実際、新型アフリカツインのオーナーには、やはり1980年代当時を知る40〜50代が多いという。

「かつてのアフリカツインを知っている世代には、非常に注目度が高いですね。当店で最初に購入されたお客様の場合、新型アフリカツインが発表された直後にお問い合わせいただきました。初代アフリカツインを手放した後、いろいろなバイクを乗り継いだそうですが、新型発売のニュースを聞いてかつての思いが蘇ったようです」。そう話すのは、川崎市にあるホンダのスポーツモデル販売店、「ホンダドリーム川崎中原」の営業部長、吉岡信太郎さんだ。

また、現在アドベンチャーバイクの代名詞となっているBMW「R1200GS」のオーナーにも、アフリカツインに熱い視線を注ぐ人が多いという。バイクはクルマと違い、いくら高級で高性能でも、そのモデルに見合う体力がなければ乗りこなすことはできない。とくに、欧州メーカーのバイクは欧州の人の体格に合わせて作られているため、ライディングポジションや足つき性などが日本人向きではない。その点、アフリカツインは平均的な日本人の体格も考えて開発されたので、その外観とは対照的に非常に乗りやすいのだ。

「比較的小柄な方でも無理なく『イージーに』乗れるのも、アフリカツインの魅力のひとつ。乗りやすいので、普段使いもこなせると思います。それに、アフリカツインに乗っていると、信号待ちで隣の車から羨望の眼差しを向けられることがよくある。そういう意味での満足感も非常に高いモデルです」

ひとつ心配なのは、2016年4月に発生した熊本地震がホンダバイクの生産拠点である熊本製作所を直撃したこと。しかし、ホンダは8月中旬の復旧を目指して全力を上げており、アフリカツインのファンは手に入る瞬間を待ち続けている。復活したこの伝説のバイクは、きっと40男たちを新たな世界に誘ってくれることだろう。

Text by Tetsuya Abe

取材協力
ホンダドリーム川崎中原
スポーツモデルを中心に原付から大型までホンダ製のバイク全てを取り扱い、店内にはバイク用品やウエアなども展示。車検・整備はもちろん、カスタムの相談も可能だ。ツーリングを始め年間多数の独自イベントを開催するなど、購入後のバイクライフの充実も積極的に応援している。

住 所 :神奈川県川崎市中原区上平間1700-291
TEL:044-555-2222
MAIL:Info_Kawasakinakahara@honda-dream.com
営業時間:10時〜19時
定休日 :毎週水曜日、第3火曜日
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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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