わずか1週間で年間販売目標の1000台をクリア
1980年代のバイクブームのなかで、「世界一過酷なラリー」として紹介され、人気を集めたパリ・ダカール・ラリー。このパリダカで4年連続優勝するなど、圧倒的な強さを発揮していたラリーマシン「NXR」をモチーフに、1988年に市販化されたのが、650ccのVツインエンジンを積んだ「XRV650 アフリカツイン」だ。
初代アフリカツインは1989年、パリダカの市販車無改造クラスに参戦し、デビューウィンを飾った。砂漠の王者としてそのイメージを強固なものとし、大排気量のオフローダーという独自のスタイルによって世界中に熱狂的なファンを獲得する。
その後、アフリカツインは1999年に生産を終了。アフリカツインが切り拓いた「アドベンチャー」というカテゴリは、BMW「GSシリーズ」に引き継がれ、オン・オフを問わないマルチな走行性能と疲れ知らずの快適性で支持を集める。世界中のバイクメーカーがアドベンチャーに参入し、巨大なブームとなっていくのだ。
しかし、昔のアフリカツインを知る40〜50代が待ち望んでいたのは、アドベンチャーバイクのブーム化ではなく、オリジナルモデルの再販だった。そして、生まれたのが新型アフリカツインである。その変わらぬ人気ぶりは、発売1週間で年間販売目標をクリアしたことでもよくわかるだろう。
お値段は135万円から、街中で抜群の存在感
新型アフリカツインは、かつてのVツインではなく、新開発の1000cc並列2気筒エンジンを採用。初代よりも排気量を向上させたことでパワーとトルクが向上し(最高出力92ps/7500rpm、最大トルク9.7kgm/6000rpm)、街乗りや高速巡航、そしてオフロードでの走破性も同時に高めている。
トランスミッションは6MTのほか、「Gスイッチ」付きの6速デュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)も用意。このスイッチをONにすると、どのモードでもよりダイレクトなシフトフィーリングが味わえる。後輪のABSも完全にOFFにすることが可能。砂煙を巻き上げてのドリフト走行なども自由自在に行える。
デザインは高級感と力強さを併せ持ち、車体価格はMTモデルが135万円から、DCTモデルは145万8000円からとなっている。安くはないが、高いというわけでもなく、機能装備面からみても納得の価格設定だ。抜群の走行性能と街中における存在感などを考えれば、40代男性が休日のリフレッシュツールとして手に入れてもなんら不満はないはずである。
1980年代当時の熱い思いを甦らせる40男たち
実際、新型アフリカツインのオーナーには、やはり1980年代当時を知る40〜50代が多いという。
「かつてのアフリカツインを知っている世代には、非常に注目度が高いですね。当店で最初に購入されたお客様の場合、新型アフリカツインが発表された直後にお問い合わせいただきました。初代アフリカツインを手放した後、いろいろなバイクを乗り継いだそうですが、新型発売のニュースを聞いてかつての思いが蘇ったようです」。そう話すのは、川崎市にあるホンダのスポーツモデル販売店、「ホンダドリーム川崎中原」の営業部長、吉岡信太郎さんだ。
また、現在アドベンチャーバイクの代名詞となっているBMW「R1200GS」のオーナーにも、アフリカツインに熱い視線を注ぐ人が多いという。バイクはクルマと違い、いくら高級で高性能でも、そのモデルに見合う体力がなければ乗りこなすことはできない。とくに、欧州メーカーのバイクは欧州の人の体格に合わせて作られているため、ライディングポジションや足つき性などが日本人向きではない。その点、アフリカツインは平均的な日本人の体格も考えて開発されたので、その外観とは対照的に非常に乗りやすいのだ。
「比較的小柄な方でも無理なく『イージーに』乗れるのも、アフリカツインの魅力のひとつ。乗りやすいので、普段使いもこなせると思います。それに、アフリカツインに乗っていると、信号待ちで隣の車から羨望の眼差しを向けられることがよくある。そういう意味での満足感も非常に高いモデルです」
ひとつ心配なのは、2016年4月に発生した熊本地震がホンダバイクの生産拠点である熊本製作所を直撃したこと。しかし、ホンダは8月中旬の復旧を目指して全力を上げており、アフリカツインのファンは手に入る瞬間を待ち続けている。復活したこの伝説のバイクは、きっと40男たちを新たな世界に誘ってくれることだろう。
Text by Tetsuya Abe
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