日本未導入のモデルを手にできる「並行輸入」
輸入車に乗るには、「メルセデス・ベンツ日本」や「プジョー・シトロエン・ジャポン」など、正規インポーターが輸入した日本仕様のモデルをディーラーで購入するのが最も一般的な方法だ。しかし、こうした正規輸入モデルは、装備や仕様が日本向けに厳選されており、「本国らしい」かといえば、必ずしもそうとはいえない。また、日本に導入されていないモデルやグレードも多いのだ。
その点、並行輸入なら「日本未導入のあのクルマがほしい」「左ハンドルのMTで乗りたい」というオーナーの要望が叶うのである。「並行輸入のメリットは、ほかにもたくさんあります」と話すのは、フランス車、イタリア車を中心に長年、並行輸入を行っている「カーボックス横浜」の代表、吉田友宣さんだ。
「並行輸入の醍醐味は、日本に導入されていないモデルやグレード、エンジン、トランスミッション、ボディカラーなどが手に入ることです。弊社では現在、シトロエン『C5』や『C4カクタス』(下の写真)、フィアット『パンダ』、ルノー『グランカングー』などを数多く輸入していますが、その多くが左ハンドルのディーゼル車。MTも人気です」
加えて、並行輸入には、本国で発表された新型車をいち早く手にすることができるメリットもあるという。近年は本国発表と同時に日本デビューを飾るクルマも増えてきたが、依然、発表から日本導入までにタイムラグがある場合も多い。
たとえば、2015年6月に発表されたアルファロメオ「ジュリア」(メイン写真と下の写真)は、本国では2016年中のデリバリー開始が伝えられているが、日本仕様の発売は未定。2016年中に正規輸入モデルがやってくることはなさそうだ。
「現地ディーラーへの発注から生産まで2~3カ月、船便で約1カ月。さらに通関などの手続きを加えると、発注から納車までに5~6カ月かかりますが、それでも並行輸入なら正規輸入を待つより早く乗ることができます」
フェラーリは為替次第で100万円単位のお得
正規輸入を待たずに入手できるのはうれしいが、「自分だけのために輸入される」と考えると、やはり気になるのは費用だろう。
「本国での購入価格に加え、輸送費などがかかりますが、よほどの希少モデルで、新規で排ガス検査を受けなければいけない場合を除けば、正規輸入で買う価格と基本的には変わりません。また、リセールについても、正規輸入車と同等かそれ以上。希少性が評価されて高くなるケースもあります」
むしろ、並行輸入車の購入費用で気をつけるべきなのは為替相場だという。正規輸入の場合、日本円の価格が決まっているが、並行輸入車の価格は為替相場で変動する。「カーボックス横浜」では、発注した時点の為替で日本円の購入価格が決まるという。
「フェラーリのような高級車なら、為替相場次第では100万円単位の差が出てきます。2013年にユーロ高となったときには、価格面で並行輸入車が注目されたこともありました」
フェラーリのようなスーパーカーは正規ディーラーで購入してもフルオーダーとなるため、クルマ自体は並行輸入車も正規輸入と変わらない。ただし、為替相場による内外価格差によって並行輸入のほうがお得になるケースもあるのだ。
デメリットもあるが、それ以上に大きい醍醐味
しかし、こうした並行輸入の醍醐味は、あくまでも一例にすぎない。吉田さんによると、もちろん並行輸入での購入にはデメリットもあるという。
「並行輸入車は、例えるなら『添乗員のいない海外旅行』のようなもの。たしかに、カーナビが日本に対応していない、事故を起こしたときに部品の調達に時間がかかる、といったデメリットもあります」
もっとも、他人とは違う「本国仕様の輸入車」を手に入れる以上、多少のリスクがあるのは当たり前。そもそも、「海外旅行」にハプニングはつきものでもある。
「旅先で何かトラブルがあっても、それも後になって良い経験や思い出になりますよね。並行輸入車には、本来あるべきものがない不自由さも感じるかもしれません。しかし、きっとそれ以上に、『特別なもの』が手に入ると思います」
Text by Muneyoshi Kitani
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「ツルシ」の正規輸入新車では飽き足らない方のためにヨーロッパ各国から直輸入を行う、フランス・イタリア車のセレクトショップ。左ハンドル、MT、ディーゼルエンジンなど、「通好み」なクルマを届ける。