本物のヴィンテージカーのような美しい内外装
エッフェッフェ・ベルリネッタが初めて公開されたのは、世界6大自動車コンクールのひとつ、2014年に開催された「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」でのこと。それから2年のときを経て、2016年4月の「トップ・マルケス・モナコ」で正式に発表された。
1960年代のイタリアンスポーツカーのようなデザインは、当時のクルマに敬意を表して作られた完全なオリジナル。古き良き時代のカロッツェリアのように、職人が丁寧に1台1台仕上げる美しいボディには、ボディパネルの継ぎ目がまったく見当たらない。小ぶりのテールランプ、センターロック式のワイヤーホイールに至るまで、どれを取っても「本物のヴィンテージカー」にしか見えない凝りようだ。
もちろん、インテリアもクラシカルに仕上げられている。ボディ同色仕上げとなるインパネにはトグルスイッチとイェーガーのメーターが並び、ステアリングはナルディ製「クラシック」。シートやトリムは、マテオグラッシ製のレザーで包まれており、まるで博物館に展示されているヴィンテージカーそのもの。ちなみに、この内装はすべてカスタムメイドとなっていて、オーナーの好みに合わせていかようにも仕立ててくれる。
アルファロメオ製エンジンで1960年代を演出
エッフェッフェ・ベルリネッタに「現代」を感じさせるものがあるとすれば、それは唯一、シャシーが最新のCADによって設計されたことだろう。
とはいえ、チューブ(鋼管)をつなぎ合わせたフレームは手作業で製作され、フロントにダブルウィッシュボーン、リアにリジットアクスルを採用した足回りとともに、1960年代のイタリアンスポーツカーの乗り味を忠実に再現している。
フロントミッドに搭載されるエンジンは、1971年に設計されたアルファロメオの2.0Lツインカム。ウェーバーのキャブレターが組み合わされ、最高出力は180hp/6500rpm、トランスミッションは5速マニュアルだ。1960年代のイタリアンスポーツカーの雰囲気を演出するうえで、アルファロメオのエンジンを搭載したのは非常にいい選択だったと思える。外観だけではなく、メカニズムも当時のクルマとほとんど変わらないのである。
自分好みの「走り」にオーダーメイドも可能
1960年代のイタリアには、アルファロメオ「ジュリエッタSZ」や「ジュリアTZ1」、フィアット「アバルト750GTザガート」など、宝石のように美しいデザインのスポーツカーが数多く存在した。これらのモデルは、現在も愛好家の手によって大切に受け継がれ、各国で行われるクラシックカーイベントやコンクール・デレガンスでその姿を見せてくれることがある。
しかし、こうした貴重なヴィンテージカーはもはや「文化財」に近く、所有し続けるためには経済的にも心理的にも大きな負担がかかる。エッフェッフェ・ベルリネッタの3500万円というお値段は本物のヴィンテージカーを買えてしまうほど高価だが、そこにはサーキットでのテスト走行費用や、オーナーの好みに合わせてシャシーセッティングをファインチューニングする費用も含まれているという。
走りや内装を自分好みにオーダーメイドすることができるうえ、本物のヴィンテージカーのオーナーのように、「古いクルマだから」とドライブに行くのを我慢する必要もないのである。新興ブランドが叶えたエッフェッフェ・ベルリネッタという夢は、「文化財」に近かった憧れのヴィンテージカーを、より身近な存在にした「新しい形のヴィンテージカー」といえるのかもしれない。
Text by Muneyoshi Kitani