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第18回 | 大人のための最新自動車事情

新車で買える“60年代イタリア車風”ヴィンテージカー

これはフィアットかアルファロメオか? それともザガートか? 誰が見ても1960年代の古いイタリア車としか思えないこのクルマは、その名を「エッフェッフェ・ベルリネッタ」といい、じつは2016年4月にデビューしたばかりの新車だ。イタリア・モンツァにある新興ブランドのフリジェリオという兄弟が、「あの時代のスポーツカーをもう一度、思う存分走らせたい」という思いを実現するために、数年間を費やして丹念に作り上げたクルマである。しかも、このエッフェッフェ・ベルリネッタは1台限りのワンオフモデルではなく、3500万円の価格が付けられたれっきとしたカタログモデルなのだ。

本物のヴィンテージカーのような美しい内外装

エッフェッフェ・ベルリネッタが初めて公開されたのは、世界6大自動車コンクールのひとつ、2014年に開催された「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」でのこと。それから2年のときを経て、2016年4月の「トップ・マルケス・モナコ」で正式に発表された。

1960年代のイタリアンスポーツカーのようなデザインは、当時のクルマに敬意を表して作られた完全なオリジナル。古き良き時代のカロッツェリアのように、職人が丁寧に1台1台仕上げる美しいボディには、ボディパネルの継ぎ目がまったく見当たらない。小ぶりのテールランプ、センターロック式のワイヤーホイールに至るまで、どれを取っても「本物のヴィンテージカー」にしか見えない凝りようだ。

もちろん、インテリアもクラシカルに仕上げられている。ボディ同色仕上げとなるインパネにはトグルスイッチとイェーガーのメーターが並び、ステアリングはナルディ製「クラシック」。シートやトリムは、マテオグラッシ製のレザーで包まれており、まるで博物館に展示されているヴィンテージカーそのもの。ちなみに、この内装はすべてカスタムメイドとなっていて、オーナーの好みに合わせていかようにも仕立ててくれる。

アルファロメオ製エンジンで1960年代を演出

エッフェッフェ・ベルリネッタに「現代」を感じさせるものがあるとすれば、それは唯一、シャシーが最新のCADによって設計されたことだろう。

とはいえ、チューブ(鋼管)をつなぎ合わせたフレームは手作業で製作され、フロントにダブルウィッシュボーン、リアにリジットアクスルを採用した足回りとともに、1960年代のイタリアンスポーツカーの乗り味を忠実に再現している。

フロントミッドに搭載されるエンジンは、1971年に設計されたアルファロメオの2.0Lツインカム。ウェーバーのキャブレターが組み合わされ、最高出力は180hp/6500rpm、トランスミッションは5速マニュアルだ。1960年代のイタリアンスポーツカーの雰囲気を演出するうえで、アルファロメオのエンジンを搭載したのは非常にいい選択だったと思える。外観だけではなく、メカニズムも当時のクルマとほとんど変わらないのである。

自分好みの「走り」にオーダーメイドも可能

1960年代のイタリアには、アルファロメオ「ジュリエッタSZ」や「ジュリアTZ1」、フィアット「アバルト750GTザガート」など、宝石のように美しいデザインのスポーツカーが数多く存在した。これらのモデルは、現在も愛好家の手によって大切に受け継がれ、各国で行われるクラシックカーイベントやコンクール・デレガンスでその姿を見せてくれることがある。

しかし、こうした貴重なヴィンテージカーはもはや「文化財」に近く、所有し続けるためには経済的にも心理的にも大きな負担がかかる。エッフェッフェ・ベルリネッタの3500万円というお値段は本物のヴィンテージカーを買えてしまうほど高価だが、そこにはサーキットでのテスト走行費用や、オーナーの好みに合わせてシャシーセッティングをファインチューニングする費用も含まれているという。

走りや内装を自分好みにオーダーメイドすることができるうえ、本物のヴィンテージカーのオーナーのように、「古いクルマだから」とドライブに行くのを我慢する必要もないのである。新興ブランドが叶えたエッフェッフェ・ベルリネッタという夢は、「文化財」に近かった憧れのヴィンテージカーを、より身近な存在にした「新しい形のヴィンテージカー」といえるのかもしれない。

Text by Muneyoshi Kitani

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第129回 | 大人のための最新自動車事情

マッチョな軍人たちへ──愛国仕様のダッジチャージャー

『ワイルド・スピード』の第一作が公開されたのは2001年のことだ。主人公ドムの愛車は、圧倒的パワーをもつ古き良き時代のダッジ『チャージャー』。言わずとしれたマッスルカーである。あれから10余年。アメリカでは今、シリーズにたびたび登場する1960〜70年代の『チャージャー』の価値が上昇し続けている。なにしろ、このSUV全盛の時代にあって、現行の『チャージャー』『チャレンジャー』までもが10年間で70%も販売台数が伸びているのだ。そして、この人気を逃すまいとブランドもさまざまな限定車やオプションを設定。今年4月には、なんとも印象的なストライプのカスタムルックが登場した。

モダンマッスルカーの代表車種2台。ダッジ『チャージャー』と『チャレンジャー』

マッスルカーとは、広義では大排気量のV8エンジンを搭載するハイパフォーマンスのアメリカ車を指す。狭義では1968年から1971年にかけて作られた高性能でハイグレードなアメ車のこと。フルサイズのセダンやクーペ、後輪駆動車が多い。したがって、より正確にいうと、現行車種はマッスルカーではなく、ニューマッスルカーなどと呼ばれる。

そのモダンなマッスルカーのひとつが、ダッジブランドの現行『チャージャー』『チャレンジャー』だ。『チャージャー』は2ドアクーペで、いわば生まれながらのマッスルカー。『チャレンジャー』は4ドアセダンで、フォード『マスタング』と同様にポニーカー(手頃な価格のスポーティカー)として誕生した。いずれも現行型は第三世代で、発表されてから10年以上の時を刻んでいる。にもかかわらず、本国では依然高い人気を誇るモデルだ。

その証拠に、4月のニューヨークオートショー2019において、2台の上位グレードに設定可能な特別パッケージが発表されると、それだけでニュースになったほど。パッケージの名称は「stars & stripes edition(スター・アンド・ストライプス・エディション)」。ミリタリーをテーマとする渋いストライプをまとったカスタムルックのオプションである。

テーマは星条旗。フロントからリアにかけて走る極太のサテンブラック・ストライプ

「stars & stripes edition」は、その名のとおり、「スター・アンド・ストライプス(星条旗)」をテーマにしたカスタムルックだ。最大の特徴は、フロントからリアにかけてボディを覆うようにペイントされたサテンブラックのストライプ。この極太ストライプの正面に向かって右側、つまりドライバーズシート側には、シルバーの縁取りが入っている。

シートはブラックのファブリック(布製)で、ヘッドレスト側面に刺繍されたブロンズのスターが目を引く。このブロンズカラーはシートとステアリングホイールのステッチにも使用されている。そのほか、ボディ側面にさりげなく描かれている星条旗、20インチホイール、前後のスポイラー、装備されるバッジ類は、すべてサテンブラック仕上げだ。

選択できるボディカラーは、「デストロイヤーグレイ」「F8グリーン」をはじめ、「グラナイトクリスタル」「インディゴブルー」「マキシマムスティール」「オクタンレッド」「ピッチブラック」「トリプルニッケル」「ホワイトナックル」の全9色。写真の『チャージャー』はデストロイヤーグレイ、『チャレンジャー』がまとっているのはF8グリーンだ。

軍人や愛国精神をもつマッチョたちのために設定されたカスタムルックのオプション

「統計によると、軍人が購入するアメリカンブランドのなかで、もっとも人気があるのはダッジ」。これはダッジのプレスリリースにある一文だ。とりわけ、彼らがもっとも多く選択しているのが『チャージャー』と『チャレンジャー』だという。つまり、軍人や愛国精神をもつマッチョな男たちのために設定されたのが今回の星条旗ルックというわけだ。

愛国精神はともかく、マッスルカーがマッチョな男に似合うのは『ワイルド・スピード』シリーズを見れば一目瞭然。日本人はよほど筋トレしないとむずかしいかもしれない。

なお、「stars & stripes edition」が設定されるのは『チャージャーR/T』『チャージャー スキャットパック』『チャージャーGT RWD』『チャレンジャーR/T』『チャレンジャーR/T スキャット・パック』『チャレンジャーGT RWD』の6車種。5月から発売される。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fiat Chrysler Automobiles
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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