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第17回 | 大人のための最新自動車事情

粋でおしゃれ、大人のための欧州コンパクトカー入門

余裕のある大人の男性には、メルセデス・ベンツ、BMW、レクサスなど、高級車ブランドのセダンやクーペを普段使いしている人が多いかもしれない。あるいは、休日には大型SUVにクラブを積んでゴルフに行く人もいることだろう。しかし、大人の男に似合うのは高級車とは限らない。「休日には遊び心のあるクルマに乗りたい」という粋人におすすめしたいのが、欧州ブランドのコンパクトカーである。ファッショナブルでリーズナブル、実用性も走りも十分の欧州コンパクトカーは、高級車のオーナーが休日に乗るセカンドカーとして最適のクルマだ。

独自の進化を遂げてきた欧州コンパクトカー

欧州はサイズによるクルマのクラス分けがはっきりとしていて、「セグメント」という基準が用いられている。コンパクトカーとは、一般的に「Aセグメント」「Bセグメント」に属する車種のことだ。大人4人が乗れて荷物も運ぶことができる、実用性が高く、普段使いに優れた小型車である。

日本でよく知られているモデルでいえば、フォルクスワーゲン「ポロ」、フォード「フィエスタ」、アウディ「A1」、「MINI」などがこれに該当する。日本の自動車メーカーも低価格で燃費性能に優れたコンパクトカーを得意とするが、欧州のそれは、国産コンパクトカーとはまったく異なる事情により成熟してきた。

欧州各国の街には歴史的な建造物が立ち並び、クルマには景観を壊さず、街並みに違和感なく溶けこむデザインが求められる。また、欧州の人々には家族と過ごす時間を大切にする気質があり、休日やバカンスの際の長距離移動に耐えうる走行性能も必要となる。こうしたことから、欧州ではコンパクトカーが独自の進化を遂げ、洗練された軽やかさとともに、「走り」も愉しめるクルマとして人気となっているのである。

価格は200〜300万円と国産コンパクトカーの倍以上だが、高級車を所有する層にはむしろお手頃だ。近年は「Cセグメント」が大型化していることもあり、欧州車勢はこのクラスにクルマ本来の魅力を追求したモデルを次々に投入。さまざまなシーンに合わせてクルマを選ぶことが可能となっている。

普段使いはパンダ、デザインならルーテシア

フィアット「パンダ」は、手頃な価格のイタリアンコンパクトとしてフィアット「500」とともに人気を集めているモデルだ。全長3655mmのボディのなかに、ジウジアーロの傑作のひとつである初代モデルから受け継がれた高い実用性と遊び心を凝縮している。

500と同じ2気筒875ccターボの「ツインエア」は、どこか懐かしさを感じさせるサウンドで、2ペダルMTの「デュアロジック」を駆使した走りは軽快そのもの。出力は57kW(77ps)にすぎないので決して速くはないが、クルマを操っている感覚が強く、交差点を曲がるだけでも「ファン・トゥ・ドライブ」を感じさせてくれる。

随所に四角のモチーフが使われたポップなインテリアも、パンダの魅力のひとつ。装備はじつにシンプルで、オーディオはCDプレーヤーのみ、パワーウインドウは前席にしかつかない。それでも「これで十分でしょ?」と教えてくれるのが、パンダというクルマだ。

ルノー「ルーテシア」は、フランス車らしい優しいスタイリング、クラスを超える乗り心地のよさで支持されてきたルノーのベストセラーだ。4代目となる現行モデルでは、サイズが拡大され、質感も大幅にアップしている。前後フェンダーを膨らませたり、リヤのドアノブをサッシュに組み込んで作れられた流麗なフォルムは、どこか女性的でもある。

パワートレインは1.2Lターボ+6速DCT、あるいは0.9Lターボ+5速MT。走りを求める人には1.6Lターボ+6速DCTを搭載する「R.S.(ルノースポール)」シリーズもあるが、ノーマルモデルでも十分に速く、スポーティだ。

日本ではルノーはマイナーブランドだが、古くから「玄人受け」するクルマだった。高い実用性と良好な乗り心地、フランスらしいデザインの三拍子が揃っているためである。ルーテシアもその点は変わらない。実用車でも自分の個性を主張することができる稀有な存在だ。

つかの間の非日常感を愉しめるプジョー208

少し時間が空いたとき、助手席に妻やガールフレンドを乗せてふらりと近場の海にクルマを走らせ、つかの間の非日常感を愉しむ。気軽に出かける気分にしてくれるのもコンパクトカーの魅力だが、そんなシーンに最適なのがプジョー「208」である。

「207」に比べて少しアダルトなスタイリングとなった208は、2012年の発売以来、世界累計100万台以上を生産してきたベストセラー。プジョーの足回りは「猫足」とも評されるが、スタイリングもどこかネコ科の動物を髣髴とさせる愛嬌のあるもので、女性にも人気が高い。

2014年から採用される1.2Lの「ピュアテック」3気筒ターボエンジンは、「エンジン・オブ・ザ・イヤー2015」の1.0~1.4L部門で最優秀賞にも選ばれた。ライバル「ルーテシア」に「R.S.」があるように、208には「GTi」がラインナップされ、「小気味良い」という表現がピッタリの走りは休日のドライブに最適。ルーテシアとはまた違ったフレンチコンパクトだ(写真は2012年モデル)。

大人の男性にとって、コンパクトカーはそのサイズや価格からセカンドカーという位置づけになるが、近年はメルセデス・ベンツやBMWなどの高級車ブランドも続々と優れた小型車を送り出しており、セカンドカーとするにはもったいないくらいの個性的なモデルがラインナップされている。どれを選ぶかはあなた次第だが、どのモデルでもきっと、休日の愉しいひとときを彩ってくれるだろう。

Text by Syuhei Kaneko

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第129回 | 大人のための最新自動車事情

マッチョな軍人たちへ──愛国仕様のダッジチャージャー

『ワイルド・スピード』の第一作が公開されたのは2001年のことだ。主人公ドムの愛車は、圧倒的パワーをもつ古き良き時代のダッジ『チャージャー』。言わずとしれたマッスルカーである。あれから10余年。アメリカでは今、シリーズにたびたび登場する1960〜70年代の『チャージャー』の価値が上昇し続けている。なにしろ、このSUV全盛の時代にあって、現行の『チャージャー』『チャレンジャー』までもが10年間で70%も販売台数が伸びているのだ。そして、この人気を逃すまいとブランドもさまざまな限定車やオプションを設定。今年4月には、なんとも印象的なストライプのカスタムルックが登場した。

モダンマッスルカーの代表車種2台。ダッジ『チャージャー』と『チャレンジャー』

マッスルカーとは、広義では大排気量のV8エンジンを搭載するハイパフォーマンスのアメリカ車を指す。狭義では1968年から1971年にかけて作られた高性能でハイグレードなアメ車のこと。フルサイズのセダンやクーペ、後輪駆動車が多い。したがって、より正確にいうと、現行車種はマッスルカーではなく、ニューマッスルカーなどと呼ばれる。

そのモダンなマッスルカーのひとつが、ダッジブランドの現行『チャージャー』『チャレンジャー』だ。『チャージャー』は2ドアクーペで、いわば生まれながらのマッスルカー。『チャレンジャー』は4ドアセダンで、フォード『マスタング』と同様にポニーカー(手頃な価格のスポーティカー)として誕生した。いずれも現行型は第三世代で、発表されてから10年以上の時を刻んでいる。にもかかわらず、本国では依然高い人気を誇るモデルだ。

その証拠に、4月のニューヨークオートショー2019において、2台の上位グレードに設定可能な特別パッケージが発表されると、それだけでニュースになったほど。パッケージの名称は「stars & stripes edition(スター・アンド・ストライプス・エディション)」。ミリタリーをテーマとする渋いストライプをまとったカスタムルックのオプションである。

テーマは星条旗。フロントからリアにかけて走る極太のサテンブラック・ストライプ

「stars & stripes edition」は、その名のとおり、「スター・アンド・ストライプス(星条旗)」をテーマにしたカスタムルックだ。最大の特徴は、フロントからリアにかけてボディを覆うようにペイントされたサテンブラックのストライプ。この極太ストライプの正面に向かって右側、つまりドライバーズシート側には、シルバーの縁取りが入っている。

シートはブラックのファブリック(布製)で、ヘッドレスト側面に刺繍されたブロンズのスターが目を引く。このブロンズカラーはシートとステアリングホイールのステッチにも使用されている。そのほか、ボディ側面にさりげなく描かれている星条旗、20インチホイール、前後のスポイラー、装備されるバッジ類は、すべてサテンブラック仕上げだ。

選択できるボディカラーは、「デストロイヤーグレイ」「F8グリーン」をはじめ、「グラナイトクリスタル」「インディゴブルー」「マキシマムスティール」「オクタンレッド」「ピッチブラック」「トリプルニッケル」「ホワイトナックル」の全9色。写真の『チャージャー』はデストロイヤーグレイ、『チャレンジャー』がまとっているのはF8グリーンだ。

軍人や愛国精神をもつマッチョたちのために設定されたカスタムルックのオプション

「統計によると、軍人が購入するアメリカンブランドのなかで、もっとも人気があるのはダッジ」。これはダッジのプレスリリースにある一文だ。とりわけ、彼らがもっとも多く選択しているのが『チャージャー』と『チャレンジャー』だという。つまり、軍人や愛国精神をもつマッチョな男たちのために設定されたのが今回の星条旗ルックというわけだ。

愛国精神はともかく、マッスルカーがマッチョな男に似合うのは『ワイルド・スピード』シリーズを見れば一目瞭然。日本人はよほど筋トレしないとむずかしいかもしれない。

なお、「stars & stripes edition」が設定されるのは『チャージャーR/T』『チャージャー スキャットパック』『チャージャーGT RWD』『チャレンジャーR/T』『チャレンジャーR/T スキャット・パック』『チャレンジャーGT RWD』の6車種。5月から発売される。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fiat Chrysler Automobiles
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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