Sクラスのフラッグシップより高いAMGモデル
メルセデス・ベンツには「GL」「GLA」「GLC」といったSUVモデルがあるが、Gクラスはそれらのモデルとは一線を画した本格的なオフローダーだ。NATO軍向けに開発された軍用車両をルーツとし、民生用モデルとして登場したのが1979年。じつに35年以上も昔に生まれた古いクルマなのである。
現行モデルも、基本的なデザインや設計は当時と変わっていない。しかし、時代とともに中身はアップデートされ、走りや装備はほかのメルセデス・ベンツのモデルと同等か、それ以上。AMGモデルには、5.5L・V8ツインターボを搭載する「G63」、さらに「Sクラス」にしかないV12ツインターボを搭載した「G65」も存在する(下の写真)。しかも、驚くべきことに、このG65の価格は3470万円。Sクラスのフラッグシップモデル、3264万円の「S65 AMGロング」よりも高額なのだ。
現在のGクラスの人気ぶりは、銀座や六本木を歩いた際に遭遇する率の高さでもよくわかる。顧客となっているのはおもに富裕層だが、芸能人やモデル、アーティスト、クリエイターなど、名声を得たセレブたちが所有するクルマとしても定着している。また、女性が運転している姿をよく見かけるように、きわめて男性的なスタイリングでありながら、意外なほどに女性人気も高い。
変わらないため中古になっても値落ちしない
35年以上も本格的なモデルチェンジをしていない無骨な4WDが、なぜ富裕層や女性の支持を集めているのか。一番のポイントは、まさにその「変わらない」という部分にある。
「登場以来まったく変わらないGクラスのスクエアなスタイルは、流行に左右されず、『飽き』という概念がありません。デザインなどが頻繁に変われば、どうしてもユーザーは新しいモデルに目が向きます。新しいものが人気になれば当然、古いモデルは売れなくなる。特に女性はそういうところに敏感です」。そう話すのは、Gクラスを専門に取り扱っている東京・江戸川区の中古車販売店「ワンオーナー」の根本耕志さん。
「変わらない」というのは、クルマを資産として考えた場合も大きなポイントとなる。Gクラスは中古になっても値落ちの少ないモデルで、リセールバリューが高いことで知られる。そのため、「万が一」のときに手放せば、かなりの額の現金に替えることが可能だ。法人で所有している場合、減価償却後に売っても売却益が出ることもあるという。こうした点も富裕層に人気が高い理由だろう。
「フェラーリやランボルギーニを所有している人が、普段使いのクルマとしてGクラスを購入するケースもよくあります。Gクラスは一見すると大型車に見えますが、じつは全長4575mm、全幅1860mmと非常にコンパクト。スクエアなボディは見切りがよく、意外と運転しやすいので、富裕層の家庭では奥様が好んでドライブされることも多いのです」
カーライフすべてに「損する点がない」クルマ
また、特筆すべきはGクラスの「維持のしやすさ」だ。たとえば、同じスクエアなボディの4WDにはランドローバー「ディフェンダー」やトヨタ「ランドクルーザー70」があるが、前者は生産終了、後者は海外専用車となり、ともに日本では絶版車となっている。
「絶版車となると、これから乗りたいと考えていても、アフターサービスや故障した際の対応などに不安が残ります。その点、Gクラスは現在も生産されているので、トラブルが起きたときにディーラーで対応が可能。もちろん、中古車ディーラーでも新車同様のアフターサービスが受けられます。Gクラスは多くのボディパーツが汎用品で交換しやすく、損傷した際に部品が手に入りやすい。型落ちのモデルを中古で手に入れても修理が容易なので、非常に維持しやすいのです」
維持がしやすいというのは、「クルマの価値を保ちやすい」ということでもある。こうした「道具」として優れた部分も、Gクラスの人気を支えているわけだ。
過去にはGクラスにも生産中止の話が流れたことがあった。しかし、世界中のファンが反発し、販売も好調だったことから、メルセデス・ベンツが生産中止を撤回。現時点では、少なくとも2022年まで生産が続けられることが決まっている。なぜGクラスが富裕層に人気があるのか? それは、車両本体約1000万円から3000万円台という価格と引き換えで手に入るカーライフすべてに、「損をする点がない」からである。
Text by Tetsuya Abe
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あらゆる年代の「Gクラス」を取り扱い、販売、整備、修理、レンタカー業務などを行う。万が一の事故対応や保険の取り扱いなど、アフターサービスにも力を入れ、顧客のGクラスライフの充実を第一に考える。