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第16回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

メルセデス・ベンツGクラスが富裕層に人気の理由

40代以上にとって「ゲレンデ」という愛称で馴染み深い「Gクラス」は、メルセデス・ベンツのなかでも、とりわけ富裕層の間で人気が高いモデルである。東京の都心部、港区や渋谷区ではこのクルマを見かけない日がないほどだ。しかし、もともとGクラスは、富裕層好みのラグジュアリーさとは対極にある軍用車両をルーツとしたマニアックなモデルだった。なぜGクラスはこれほど支持されているのだろうか。

Sクラスのフラッグシップより高いAMGモデル

メルセデス・ベンツには「GL」「GLA」「GLC」といったSUVモデルがあるが、Gクラスはそれらのモデルとは一線を画した本格的なオフローダーだ。NATO軍向けに開発された軍用車両をルーツとし、民生用モデルとして登場したのが1979年。じつに35年以上も昔に生まれた古いクルマなのである。

現行モデルも、基本的なデザインや設計は当時と変わっていない。しかし、時代とともに中身はアップデートされ、走りや装備はほかのメルセデス・ベンツのモデルと同等か、それ以上。AMGモデルには、5.5L・V8ツインターボを搭載する「G63」、さらに「Sクラス」にしかないV12ツインターボを搭載した「G65」も存在する(下の写真)。しかも、驚くべきことに、このG65の価格は3470万円。Sクラスのフラッグシップモデル、3264万円の「S65 AMGロング」よりも高額なのだ。

現在のGクラスの人気ぶりは、銀座や六本木を歩いた際に遭遇する率の高さでもよくわかる。顧客となっているのはおもに富裕層だが、芸能人やモデル、アーティスト、クリエイターなど、名声を得たセレブたちが所有するクルマとしても定着している。また、女性が運転している姿をよく見かけるように、きわめて男性的なスタイリングでありながら、意外なほどに女性人気も高い。

変わらないため中古になっても値落ちしない

35年以上も本格的なモデルチェンジをしていない無骨な4WDが、なぜ富裕層や女性の支持を集めているのか。一番のポイントは、まさにその「変わらない」という部分にある。

「登場以来まったく変わらないGクラスのスクエアなスタイルは、流行に左右されず、『飽き』という概念がありません。デザインなどが頻繁に変われば、どうしてもユーザーは新しいモデルに目が向きます。新しいものが人気になれば当然、古いモデルは売れなくなる。特に女性はそういうところに敏感です」。そう話すのは、Gクラスを専門に取り扱っている東京・江戸川区の中古車販売店「ワンオーナー」の根本耕志さん。

「変わらない」というのは、クルマを資産として考えた場合も大きなポイントとなる。Gクラスは中古になっても値落ちの少ないモデルで、リセールバリューが高いことで知られる。そのため、「万が一」のときに手放せば、かなりの額の現金に替えることが可能だ。法人で所有している場合、減価償却後に売っても売却益が出ることもあるという。こうした点も富裕層に人気が高い理由だろう。

「フェラーリやランボルギーニを所有している人が、普段使いのクルマとしてGクラスを購入するケースもよくあります。Gクラスは一見すると大型車に見えますが、じつは全長4575mm、全幅1860mmと非常にコンパクト。スクエアなボディは見切りがよく、意外と運転しやすいので、富裕層の家庭では奥様が好んでドライブされることも多いのです」

カーライフすべてに「損する点がない」クルマ

また、特筆すべきはGクラスの「維持のしやすさ」だ。たとえば、同じスクエアなボディの4WDにはランドローバー「ディフェンダー」やトヨタ「ランドクルーザー70」があるが、前者は生産終了、後者は海外専用車となり、ともに日本では絶版車となっている。

「絶版車となると、これから乗りたいと考えていても、アフターサービスや故障した際の対応などに不安が残ります。その点、Gクラスは現在も生産されているので、トラブルが起きたときにディーラーで対応が可能。もちろん、中古車ディーラーでも新車同様のアフターサービスが受けられます。Gクラスは多くのボディパーツが汎用品で交換しやすく、損傷した際に部品が手に入りやすい。型落ちのモデルを中古で手に入れても修理が容易なので、非常に維持しやすいのです」

維持がしやすいというのは、「クルマの価値を保ちやすい」ということでもある。こうした「道具」として優れた部分も、Gクラスの人気を支えているわけだ。

過去にはGクラスにも生産中止の話が流れたことがあった。しかし、世界中のファンが反発し、販売も好調だったことから、メルセデス・ベンツが生産中止を撤回。現時点では、少なくとも2022年まで生産が続けられることが決まっている。なぜGクラスが富裕層に人気があるのか? それは、車両本体約1000万円から3000万円台という価格と引き換えで手に入るカーライフすべてに、「損をする点がない」からである。

Text by Tetsuya Abe

取材協力
株式会社ワンオーナー
東京都江戸川区上一色3-9-1
TEL 03-5662-0107
MAIL info@oneowner.co.jp
営業時間:9時〜19時
定休日:無休
あらゆる年代の「Gクラス」を取り扱い、販売、整備、修理、レンタカー業務などを行う。万が一の事故対応や保険の取り扱いなど、アフターサービスにも力を入れ、顧客のGクラスライフの充実を第一に考える。
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第74回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

メルセデスAMG A35サルーン──今度の入門機はセダン

メルセデスAMG『A35 4マチック』は、昨年10月にAMGのボトムレンジに加わったホットハッチだ。その上位には、やはりハッチバックの『A45 4マチック』、そしてセダンやクーペの『C43』がある。しかし、メルセデス・ベンツはAMGのエントリーモデルにもっと多くの選択肢を用意すべきと考えたのだろう。3月に発表されたのは、『A35 4マチック サルーン』という名のニューモデル。そう、スポーツセダンの『A35』である。

セダン仕様の『A35』のライバル車はBMW『M240i』やアウディ『S3サルーン』

『Aクラス セダン』は、昨年9月に歴代の『Aクラス』で初となる4ドアセダンとしてデビューした。『A35 4マチック サルーン』は、ひと言でいうと、その高性能バージョンである。ライバルはBMW『M240i』やアウディ『S3サルーン』といったところだろう。

パワーユニットはハッチバックの『A35 4マチック』と同じ2.0L直列4気筒直噴ガソリンターボエンジン。最高出力306ps、最大トルク400Nm、最高速度250km/h(リミッター作動)のスペックはハッチバックと変わらないが、0-100km/hの加速タイムは4.8秒とハッチバックにわずかに遅れをとる。とはいえ、その差は0.1秒なので、ほとんど同等の動力性能といっていい。トランスミッションは7速DCTの「AMGスピードシフトDCT 7G」。駆動方式は車名にあるとおり、AMGパフォーマンス4マチックによる四輪駆動だ。

むろん、サスペンションやブレーキはAMGがチューンした専用のもの。AMGダイナミックセレクトにより、シーンに合わせて「コンフォート」「スポーツ」「スポーツプラス」「インディビジュアル」「スリッパリー」の5つのドライビングモードが選択できる。「スポーツ」「スポーツプラス」では、奏でるエンジンサウンドもより迫力を増すという。

ハッチバックの『A35 4マチック』と同じように見えて微妙に異なるエクステリア

エクステリアは、フロントマスクだけを見るとハッチバックと共通のものと感じる。ひと目でAMGモデルとわかるフロントグリルのツインルーバー、バンパーのフラップ付きエアインテークなどは同じデザインだ。しかし、よく観察すれば、ハッチバックに採用されている特徴的なバンパー横のカナードがセダンでは取り除かれていることがわかる。

なによりも、ハッチバックとの大きな違いは、セダンボディを得たことによってトランクルームを設けたことだ。リアセクションは、トヨタで言うところの「リフトバック」スタイルで、トランク内には幅950mm、奥行462mm、最大容量420Lのラゲッジスペースを確保した。リアディフューザーはハッチバックに比べるとやや落ち着いたデザインとなり、その左右の下からは、AMGモデルらしく2本のエグゾーストパイプが顔を覗かせる。

コクピットも、写真を見るかぎりハッチバックと共通だ。ブラックを基調とし、そこへボディと同色のラインがアクセントカラーとして添えられる。アルティコの人工革張りシート、AMGスポーツステアリングを装備し、当然ながら、AIを用いたデジタル・パーソナル・アシスタントを備える最新のインフォテインメントシステム「MBUX」も搭載する。

サルーン仕様の『A35』はAMG世界への入口。新たな顧客にアピールできるモデル

『A35 4マチック サルーン』の日本導入時期は未定。なにしろ、今年1月からハッチバックのヨーロッパ販売が始まったばかりなのである。そのヨーロッパでは、今年後半からセダンが販売される予定で、日本国内へはその後に上陸することになるのではないか。

「スポーツサルーンは、メルセデスAMGの原点であり、コンパクトセダンのA35はAMGの世界への入口となり、新たな顧客にアピールできる魅力的なモデルとなることでしょう」とは、メルセデスAMGのトビアス・ムアースCEOのコメントだ。先行するライバルのBMW『M240i』やアウディ『S3サルーン』にどこまで迫れるか、要注目である。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Daimler AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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