よりスポーティーでシャープとなったスタイル
一見して変化が見られたのが、フロントマスクである。今回から、日産ブランドの共通デザインであるVモーションを取り入れた。デザイングリルにはマットクローム仕上げを施し、最新のメッシュパターンを採用している。また、開口部を拡大させることで冷却性能を向上させながら、空気抵抗は低減、従来の空力性能を維持した。
エンジンフードはグリルから流れるキャラクターラインが特徴的。機能面では剛性を向上することで超高速域での変形を抑制している。フロントスポイラーはレースカー直系の血統を感じさせる新形状。こちらは高いレベルのダウンフォースを維持している。
サイドは流線型のフォルムはそのままに、空気の流れを改善させるため、サイドシル前部を張り出させた。そして、リヤでは定番アイコンであるリング型テールランプは健在だ。加えて、新形状サイドアウトレットなど空気の流れを改善させるためのデザインを採用している。
エクステリアは、空気抵抗、ダウンフォース、冷却性能という3つの性能を高次元でバランスさせた。その結果として、外観はよりスポーティーでシャープな雰囲気を醸し出す。まさに、機能に基づいたスタイルといって良いだろう。
565馬力とそれを支える足回りが生み出す類い稀なる動力性能
インテリアにも大きな変更が加えられた。 インストルメントパネルには職人による精巧なステッチを施した高品質レザーを使用。コックピットには、安定感を演出する水平方向の流れを採用しつつ、メーターからセンターコンソールまでドライバーを包み込むようにレイアウトすることで、運転に集中できる空間を演出している。
パドルシフトは、ステアリングホイール固定タイプに変更。ドライバーが手を離さなくてもシフトチェンジができる角度がより広くなった。また、操作力やストローク量だけでなく、シフトチェンジ時のクリック感も最適化し、操作感がより向上している。
そして、『GT-R』といえば、常に注目されるのが高い動力性能だ。パワートレインは3.8L24バルブV6ツインターボエンジン。最大出力は565hp/6800rpm。最大トルクは467lb-ft/3300-5800rpm。ここに、改良型6速デュアルクラッチトランスミッションを組み合わせ、中速〜高速域においてスムーズな加速を実現している。
565英馬力というとてつもないパワーでありながら、コーナリング性能も進化。ボディ剛性をさらに高め、よりしなやかで正確に動くサスペンションを採用することで、タイヤの接地性を高め、高速走行時の安定性を向上させている。
この動力性能の高さの一端を示すエピソードがある。アラブ首長国連邦のフジャイラ国際空港で開催された特別イベントで、特別なチューニングが施された『GT-R』が、ドリフトの世界最高速度となる時速304.96km/hを達成し、ギネス世界記録を更新したという。
聴覚にも訴えかけるドライビングプレジャー
『GT-R』の特筆すべき点は、スーパースポーツでありながら、快適な乗り心地を提供していることだ。その一端が、室内の静粛性に見てとれる。吸音材・遮音構造の徹底的な見直しにより室内でのロードノイズや風切音を大幅に低減。全ての速度域で非常に高い静かさを実現している。
もちろん、ただ静かなだけではない。新設計の電子制御バルブ付チタン合金製マフラーは、不快な音を低減しながらクリアで心地よいエキゾーストサウンドを実現。室内ではドライバーがエンジンサウンドを心地よく感じるよう音質をコントロールする、「アクティブ・サウンド・コントロール」を採用している。自らのアクセルコントロールに呼応して聴覚に訴えかけるエキゾーストノートは、ドライビングプレジャーをより高めてくれることだろう。
開発責任者を務める田村宏志氏は「新しい『GT-R』は、いつでも、どこでも、最高のドライビングエクスペリエンスを与えてくれる、究極の性能を追求したスーパースポーツカー」と語る。そこにあえて付け加えるなら、「誰にでも」だろうか。
2017年モデルの『GT-R』には発売以来の最大規模の変更となったが、それは、「進化」ではなく「深化」と表現された。より深く走りを追求した『GT-R』。今から発売が楽しみな1台だ。
Text by Tsukasa Sasabayashi