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第5回 | 大人ライダー向けのバイク

唯一無二の豪華ツアラー、ホンダ・ゴールドウイング

日本のバイクシーンにツーリング文化が根付いて久しいが、同時にバイクそのもののメインストリームも、かつてのネイキッドやスーパースポーツ系ではなく長距離の快適性を高めた”ツアラー”にシフトした。なかでも、現在のバイクの中で唯一の1800cc水平対向6気筒エンジンを搭載したホンダ「ゴールドウイング」は、まさにスペシャルな1台というべき豪華ツアラーとして知られる。

バックギア、エアバック…クルマ並の豪華装備

ツアラーとは、長距離をいかに快適に移動できるかをテーマに改良が重ねられてきたバイクのことだ。ヨーロッパやアメリカ大陸などを横断できるように、ツアラーには余裕のある大排気量エンジンをはじめ、荷物の積載性の高さなどが求められる。上体が起き上がった楽なライディングポジション、カウリングなどによる防風性能、乗車時の身体への負担が軽減されていることも特徴だ。そのためか、ツアラーにはまったく独自の進化を遂げるモデルが存在する。

そうしたモデルのひとつであり、国内外のメーカーが発売するさまざまなツアラーの頂点に立つのが「ゴールドウイング」である。当初はアメリカ大陸を横断するための北米向けモデルとして発売されたが、その類まれな走行性能や快適性が評判を呼び、人気に火がついた。

1975年に登場した初代「GL1000」から始まり、アメリカのカスタム文化の影響も受けて、モデルが進化するごとに快適さや安全性、ラグジュアリー性がアップ。バイクであるにもかかわらず、バックギアやナビ、エアバッグを装備するなど、パッケージはどんどんクルマに近づいていった。リヤの3箇所のトランク容量は合計142リットル(現行型)にも及び、1人分の旅の装備ならほぼ間違いなく詰め込むことができる。もしかすると、小型のオープンスポーツカーよりもゴールドウイングのほうが積載性は高いかもしれない。

(C)PROandy carter

バイクに興味のなかった女性も納得の快適性

「こんなに快適で楽しいバイクは他にない」。ゴールドウイングに乗ったことのあるライダーたちは、誰もが口を揃えてそう話す。水平対向エンジンは、現在のバイク用エンジンのなかで一番シルキーな回転特性といえる。そのなめらかな加速感や巡航時の振動の少なさは病みつきになってしまうほどだ。5速MTとの相性も抜群で、ワインディングから峠にいたるまで、すべてのシチュエーションを難なくカバーするオールラウンド性も持ち合わせる。

大型フロントスクリーンやカウリングなどによる高い防風性能、上質な座り心地のシート、クルーズコントロールなどにより、高速道路の走行は快適そのもの。オーディオシステムにはラジオはもちろん、携帯音楽プレイヤーもつなぐことができるため、お気に入りの音楽を高音質で楽しむことができる。そして、計器のようなメーターパネル越しに見える、右へ左へと傾く景色は、まるで飛行機のコクピットの感覚。退屈な高速道路の巡航が、ゴールドウイングの場合これ以上ない上質な時間へと変貌する(エンジンの写真はゴールドウイングF6B)。

その快適さは後席にも同じことがいえる。シートヒーターや背もたれなども相まって、後席の座り心地はバイクにおけるファーストクラス。高速道路を走行するゴールドウイングユーザーに2人乗りが多いのは、そのためである。バイクに興味のなかった女性も、ゴールドウイングの後席に乗れば、そのすごさに納得してしまうのである。

大柄な車体だけに高速道路がメインと思われがちだが、じつはそうではないのがこのバイクの真骨頂だ。長年熟成されてきたトルクフルなエンジンや、改良が重ねられてきたフレームにより、ワインディング走行もお手の物。ハンドリング特性は極めて素直で、車体の大きさなどをまったく考えることなく、“普通のバイク”としてワインディングロードを楽しく駆け抜けることができるのだ。

オーナーの数だけ「楽しみ方」が存在する

ゴールドウイングはカスタムも楽しい。国内にも専門のカスタムショップがあるほどで、クロームメッキパーツをちりばめてゴージャスさを強調したり、LEDライトなどを車体にめぐらせたりなど、さながら“デコトラ”のようなライトカスタムも楽しむことができる。

サイドカーやトライクに改造してくれるショップも存在し、また、海外ではトレーラーを連結して長距離旅行を楽しむ姿も見かける。ゴールドウイングには、オーナーの数だけ「楽しみ方」が存在しているといえるだろう。

しかも、近年はホンダからも「メーカーカスタム」と呼べるようなバリエーションモデルが追加された。アメリカのカスタムのひとつである「バガースタイル」に触発され、リヤのトランクを廃し、フロントカウルもショート化してロー&ロングスタイルを強調した「ゴールドウイング F6B」(メイン写真と下の写真)、さらにケース類やカウルを潔く取り払い、マッスル感を強調した「ゴールドウイング F6C」などが登場し、ゴールドウイング・シリーズとして新たな展開を見せている。

(C)Brian Snelson

しかも、近年はホンダからも「メーカーカスタム」と呼べるようなバリエーションモデルが追加された。アメリカのカスタムのひとつである「バガースタイル」に触発され、リヤのトランクを廃し、フロントカウルもショート化してロー&ロングスタイルを強調した「ゴールドウイング F6B」、さらにケース類やカウルを潔く取り払い、マッスル感を強調した「ゴールドウイング F6C」などが登場し、ゴールドウイング・シリーズとして新たな展開を見せている。

ゴールドウイングは2014年に生産40周年を迎えたが、数多のバイクがニューモデルを発表してはいつの間にか消えていくなかで、200万円を超えるパッケージでこれほど息の長いモデルはそうはない。ファンの支持と技術者の絶え間ない改良が、その歴史と相まって孤高の存在感とプレミアム感を生んでいるのだ。まさに和製バイクの”旗艦”。実物を前にすると、自然にそんな言葉が出てくる。ゴールドウイングは、走りと快適性、ステータス、そしてヘリテージを併せ持つ唯一無二のバイクなのだ。

(C)CWhatPhotos

Text by Tetsuya Abe

Photo by (C)Mbdortmund(main)

※写真は海外仕様車を撮影したもので、現行型国内仕様とカラーなどが異なる。
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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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