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第10回 | ランボルギーニの最新車デザイン・性能情報をお届け

甦るハマの黒ヒョウ、ランボルギーニ・カウンタック

「ランボルギーニ・カウンタック」。この名前を聞くだけで胸を熱くする40〜50代の男性は多いのではないか。1975年から1979年に『週刊少年ジャンプ』で連載された「サーキットの狼」では、“ハマの黒ヒョウ”が駆る漆黒のカウンタックが人気となり、1981年公開の映画『キャノンボール』のオープニングでパトカーとカーチェイスを繰り広げたのも、レーシングスーツを纏ったセクシー美女コンビが操る黒のカウンタックだった。以降、『キャノンボール』シリーズのオープニングでは、カウンタックとパトカーのカーチェイスシーンが定番となった。1970年代半ばから80年代にかけて、当時の少年たちを熱狂させたスーパーカーブームの主役は、まさにこのクルマだったのである。1990年の生産終了から四半世紀が経過した現在も、カウンタックの人気は衰えず、世界中に愛好家が存在する。

現在も1億円以上で売買される初期型LP400

ミッドシップカーの元祖といえるランボルギーニ「ミウラ」の後継モデルとしてカウンタックが発表されたのは、1971年のジュネーブモーターショーでのことだった。モノコックボディにエンジンを横置きしていたミウラに対し、カウンタックはスペースフレーム構造を採用、V12エンジンは縦置きに見直された。このシャシーに組み合わされるボディは、ベルトーネに所属していたマルチェロ・ガンディーニが手がけたもの。いまもランボルギーニの特徴となっている跳ね上げ式のドアが、異様とも映るボディに華を添えた。

この「LP500」はまだプロトタイプで、オーバーヒートや剛性不足をはじめとした数々の問題、ランボルギーニの経営危機もあり、その後の開発は難航した。量産モデルの「LP400」が正式発表されたのは、3年後の1974年。「サーキットの狼」の連載が始まる前年だった。

LP400は、全長4140mm×全幅1890mm×全高1070という低く幅広いプロポーションを持ち、カタログ上の車重はたったの1065kg。ここに375HPを発生する3929ccのV12エンジンが搭載されていたのだから想像を絶する。実際の車重は発表値よりはるかに重かったといわれるが、それでも暴力的なパフォーマンスを持っていたことには変わりはない。LP400の生産台数はわずか150台で、その希少性から、現在は愛好家の間で億単位の価格で取引されている。下の写真は、2014年に英オークション会社のボナムズによって約1億2000万円で売却されたLP400だ。

(C)Bonhams
(C)Bonhams
(C)Bonhams

テスタロッサに勝つために改良された5000QV

カウンタックは1990年の生産終了までの間に、何度かの改良を受けている。1978年には「LP400S」にアップデート。カナダの石油王、ウォルター・ウルフ氏のオーダーで作られた「ウルフ・カウンタック」と呼ばれる特注仕様に準じたモディファイが施され、ワイドフェンダーやエアロパーツが装着された。

1982年には排気量を4754ccに拡大した「LP500S」となり、1984年にライバルのフェラーリから「テスタロッサ」がデビューすると、455HPを発生する5167ccエンジン、ホイールベースを2500mmに拡大した「5000QV(クアトロバルボーレ)」へとアップデートされた(メイン写真と下の写真)。

度重なる排気量拡大やワイドボディ化などによって車重は1490kgに達したが、一般的にもっとも「カウンタックらしい」として認知されているのは、迫力あるエアロパーツに身を包んだこの世代のモデルだろう。

(C)djandyw.com

単なるクルマではない“特別なスーパーカー”

カウンタック最後のモデルとなったのは、ランボルギーニ創立25周年を記念して作られた1987年の「25thアニバーサリー」である。

フロントバンパーが一新され、ルーバーつきのサイドスポイラーを装着、さらにエンジンフード周りの形状も変更されるなど、25thアニバーサリーのエクステリアは従来のカウンタックと雰囲気が大きく変わった。パワーシートやパワーウインドウが装備され、車重は1680kgへとさらに増加したが、快適性は大幅に向上。1989年公開の『キャノンボール3 新しき挑戦者たち』のオープニングに登場した赤のカウンタックは、このモデルだった。

25thアニバーサリーのデザインを手がけたのは、当時ランボルギーニに在籍し、のちにパガーニ・アウトモビリを設立したオラチオ・パガーニである。25thアニバーサリーは、657台とカウンタック史上もっとも多くの台数が生産されたのち、1990年に後継モデルのランボルギーニ「ディアブロ」に“キング・オブ・スーパーカー”の座を譲り渡した。

(C)Leo_Ritz
(C)Vertualissimo

なぜカウンタックはこれほど長きにわたって生産され、伝説のスーパーカーとなったのか。その裏側には、幾度となく訪れたランボルギーニの経営難がある。

とくに、1973年の第4次中東戦争で引き起こされた石油ショックは、スーパーカーメーカーにとって大きな一撃となり、販売台数が減少、生産モデルの合理化を迫られた。1978年には倒産に追い込まれ、イタリア政府の管理下に置かれるなど、ランボルギーニの命運も尽きたと考えられていた。しかし、そのたびに救い主が現れ、復活を遂げてきたのである。

その不死鳥のようなしぶとさは、何度もレース中に大破しながら、そのたびに愛車カウンタックとともに甦り、「サーキットの狼」の主人公・風吹裕矢を驚かせたハマの黒ヒョウにも通じる。

カウンタックが長く作られてきたのは、こうした環境によるところが大きい。1990年の生産終了は、1987年にランボルギーニの経営権がクライスラーへと移ったためと考えられるが、ランボルギーニ社内では当時、さらなる改良版の「L150」のプロトタイプが製作されていたという。カウンタックが現在も愛好家の間で高い人気を誇っているのは、時代に翻弄されながらも、常に最高峰であり続けたからでもあるだろう。カウンタックは単なるクルマではなく、それ以上の何かを持った特別な存在なのである。

Text by Muneyoshi Kitani

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第37回 | ランボルギーニの最新車デザイン・性能情報をお届け

最強オープン──アヴェンタドールSVJロードスター

『イオタ』の名は、ある世代の男たちにとって特別な響きをもつ。言わずとしれたランボルギーニの幻のスーパーカーである。この『イオタ』に由来する車名を与えられ、900台が昨年限定発売された『アヴェンタドールSVJ』は、“史上最強のアヴェンタドール”として大きな話題となり、瞬く間に完売となった。その興奮が収まらぬなか、さらなる魅力を加えた一台が登場した。オープントップモデルの『アヴェンタドールSVJロードスター』だ。至高のV12サウンドをオープンエアで愉しむ。こんな贅沢がほかにあるだろうか。

伝説の「J」再び。最速記録をもつ『アヴェンタドールSJV』のオープンバージョン

スーパーカー世代の男性は、「SVJ」という三文字に胸を踊らせるに違いない。1969年に先行開発の名目でたった一台だけが作られ、のちに事故で失われた伝説の実験車両「J」。その純正レプリカにつけられた名前だからだ。レプリカは『イオタ(Jota)』、あるいは『ミウラSVJ』と呼ばれている。「SVJ」は「スーパーヴェローチェ イオタ」の略だ。

ベースとなったのはランボルギーニ初のミッドシップスポーツカー『ミウラ』。生産台数については諸説あるが、6台、または8台ともいわれる。まさに幻のスーパーカー。だからこそ、『アヴェンタドール』シリーズの頂点に立つ存在として「SVJ」の名をもつモデルが登場したとき、ランボルギーニファンやスーパーカーファンが沸き立ったのである。

『アヴェンタドールSJV』が搭載するのは、最高出力770ps/8500rpm、最大トルク73.4kg-m/6750rpmを発生する6.5L V型12気筒エンジン。出力とトルクは、標準モデルよりもそれぞれ30hpと30Nm高められている。その圧倒的なパフォーマンスは、ニュルブルクリンク北コース“ノルドシュライフェ”での量産車最速タイム(当時)で証明済みだ。

従来の最速タイムは、昨年9月にポルシェ『911 GT2 RS』が記録した6分47秒3。『アヴェンタドールSJV』は、それを2秒以上も短縮する6分44秒97という驚異的なタイムを記録した。この最速クーペのオープンバージョンとなるのが、3月のジュネーブモーターショー2019でお披露目された『アヴェンタドールSJVロードスター』だ。

0-100km/h加速は驚異の2.9秒。ランボルギーニ史上“最速・最強”のロードスター

オープントップには『アヴェンタドールSロードスター』と同様の脱着式ルーフを採用した。ルーフは左右2分割式のカーボンファイバー製で、これを手動によって取り外す。クルマを降りなければならないが、オープン化の作業は非常に簡単で、ルーフも軽量。取り外したルーフはフロントのボンネット内にきれいに収納できるように設計されている。

電動で開閉するリヤウインドウを新たに採用したのもトピックだろう。ルーフを着けたクローズドの状態でも、ここを開ければV12サウンドをより愉しむことができるのだ。

脱着式ルーフにあわせてリヤのエンジンパネルの形状もフラットなものへと変更された。ただし、パネルにデザインされたランボルギーニファンにおなじみのY字は健在だ。そのほかのエクステリアはクーペを継承。大型エアインテーク、ワイドなサイドスカート、ヘキサゴン型スポイラー、リヤでは高い位置に設置された大型リアウィングが目を引く。

オープン化によって車重はクーペより50kgほど重くなっているが、それでも1575kg程度に収まっている。全長4943mm×全幅2098mm×全高1136mmものボディサイズをもち、12気筒エンジンを搭載するスーパーカーであることを考えると望外に軽量だ。それにより生み出されたパワーウエイトレシオはわずか2.05kg/hp。0-100km/h加速は驚異の2.9秒、0-200km/h加速は8.8秒でこなし、最高速度は350km/h超をマークする。

可変型エアロダイナミクスの搭載により、トップスピードを落とさず空力性能を強化

特筆すべきは「ALA2.0(アエロディナミカ・ランボルギーニ・アッティーヴァ2.0)」と呼ばれるテクノロジーの装備だろう。『アヴェンタドールSJVロードスター』が搭載するのは、クーペと同じ最高出力770ps の V12エンジン。この強力なパワーユニットを軽量ボディに積めば、車体を制御できず、フロントから浮き上がって一回転しかねない。

そこで、トップスピードを落とすことなくダウンフォースを強化する、ランボルギーニの特許技術である「ALA」が必要となるのだ。「ALA」は、簡単にいうと能動的に空力の負荷を軽減してくれる可変型エアロダイナミクスのこと。速度ではなく、車両状態に連動するという特徴をもつ。フロントスプリッタとエンジンフードのアクティブフラップをモーター制御することにより、フロントとリヤの空気の流れをコントロールしてくれる。

この「ALA」と、搭載されたすべての電子装置をリアルタイムで管理し、加減速やローリング、ピッチング、ヨーイングといった車両の挙動を常に把握する「ランボルギーニ・ピアッタフォルマ・イネルツィアーレ」(LPI)が連動し、あらゆる走行条件下で最高の空力設定を整えてくれる。さらに、曲がる方向に応じて「ALA」の設定をスポイラーの左右いずれかに切り替え、どちらかに多く気流を発生させる「エアロ・ベクタリング」も備える。

駆動方式は四輪駆動で、フロントアクスルとリアアクスルとの間トルク配分は道路条件、グリップ、ドライビングモードに応じて、リアルタイムに変化する。また、後輪操舵システム「ランボルギーニ・リアホイール・ステアリング」や磁性流体プッシュロッド式のアクティブサスペンションを採用し、高次元のドライビングダイナミクスを実現した。

走行モードは、標準の「STRADA(ストラーダ)」、スポーティな走りの「SPORT(スポーツ)」、サーキット走行向けの「CORSA(コルサ)」、そしてこの3種類をベースに自分好みにカスタマイズすることができる「EGO(エゴ)」の4種類から選択可能だ。

『アヴェンタドールSVJロードスター』は800台限定生産。価格は6171万4586円

インテリアは航空機に着想を得たデザインとなっており、ドアやメータークラスター、コンソールなどにカーボンファイバーを採用。シートやダッシュボード上部、コンソールボックスにはレザーやアルカンターラを使用している。また、コクピットの随所にもY字デザインがあしらわれ、「SVJ ロードスター」のインテリアプレートも装備する。

限定生産台数はクーペよりも100台少ない800台。日本での価格は、クーペからおよそ600万円高となる6171万4586円(税込み)と発表されている。しかし、これはあくまでも参考価格だ。ランボルギーニは、顧客の要望に応じてボディカラーやインテリアに事実上無限の選択肢を用意しており、それらによって価格も大きく変動する。

ランボルギーニのフラッグシップモデル『アヴェンタドールSVJ』のずば抜けたパフォーマンスはそのままに、オープン化をはたした『アヴェンタドールSVJロードスター』。シリーズ最速・最強の称号をもつオープンモデルの上陸がいまから楽しみでならない。

Text by Muneyoshi Kitani
Photo by (C) Automobili Lamborghini S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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Lamborghini Press Conference – ジュネーブモーターショー2019
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