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【政治】「不登校って言わないで」 アイドルグループが新呼称募集
社会派アイドルグループ「制服向上委員会」が、「不登校」に替わる用語を募っている。不登校との言葉で浮かぶ負のイメージから、学校に行かなくなったり、行けなくなったりした子どもたちを守りたいとの思いからだ。 (北條香子) きっかけは、不登校のメンバーがフリースクールに通えるよう、グループで手助けしたことだった。 会長を務める橋本美香さん(39)は「私なんてどうせ不登校だから」とふてくされたように話すメンバーの姿が気になった。一時、学校に通わなかった経験のあるグループのプロデューサーが「それだけで不良と見なされるのが嫌だった」と話していたのも聞いた。 「不登校という言葉では悪いことをしたかのようなレッテルを貼られ、余計に学校に行きづらくなってしまう」。そう考えた橋本さんは、学校に行かない選択も前向きに捉えられるような呼び方に替える運動に取り組み始めた。 新用語案を四月から、グループ事務所宛ての手紙やメールで受け付けている。集まった案を、識者を交えて検討し、十月に東京都小平市でのイベントで発表する予定だ。新用語によせて曲もつくり、不登校と呼ばれて傷ついた子どもたちと一緒に歌う構想もあたためている。 応募先は制服向上委員会のホームページを参照。クラウドファンディングで、イベント開催費用など二百五十万円も集めている。 新しい用語は慎重に選ぶべきだとの意見もある。 「不登校に、なりたくてなる子はいない。」との著書がある金沢こども医療福祉センター・金沢療育園の上野良樹施設長(小児科医)は「例えば『在宅就学』とした場合は『行けない』ではなく『行かない』印象で、子どもの実情にはそぐわない」と指摘する。「替えるとしても、学校に行けないことに、子どもが苦しんでいる意味合いを含んだ言葉であるべきだ」と話す。 ◆小・中学生最多14万4000人 17年度文部科学省の学校基本調査では、年間30日以上欠席している児童生徒を「不登校」とする。最新の2017年度の調査では、不登校の小中学生は全国で約14万4000人で、過去最多となった。 不登校問題は1990年代初めから注目を集めた。当初は学校嫌いが原因との見方が強く「登校拒否」と呼ばれた。その後、友人関係や進路への不安など、さまざまな事情が背景となっていることへの理解が進み、教育界を中心に呼称が徐々に「不登校」に切り替わった。文科省もそれにならい、98年から「不登校」を使っている。
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