オンラインゲームに熱中し、日常に深刻な支障をきたす「ゲーム障害」。世界保健機関(WHO)が新たな依存症に認定した。世界各国で研究を進め、治療や予防法の確立につなげるべきだ。
「十五時間も連続でゲームをし、学校に行っていない」。五月上旬、国立病院機構久里浜医療センター(神奈川県)で行われた親の会で、深刻な実態を聞いた。ゲーム障害の当事者は、多くが十代の男の子だ。
自室にこもり、昼夜の生活が逆転する。家族との会話や食事、勉強などに無関心になる。そして、ゲームを取り上げられそうになると暴言や暴力に訴える。
「将来どうなるの」。十数人の両親が涙ながらに訴えた。
ゲーム障害は近年、スマートフォンなどの普及に伴って世界中で問題化している。国内の患者数を示す統計はないが、ネットに関する二〇一七年調査で「依存」とされた中高生が推計九十三万人に達し、一部がゲーム障害と考えられるという。
五月下旬のWHO総会で、世界的な病気のリストである「国際疾病分類」に加えられた。アルコール依存などと同様、精神疾患の一つに位置付けられたことを意味する。これを機に国や医療界は治療や研究を充実させ、予防や家族のケアを推進するべきだ。
十六歳未満の子どもの真夜中のゲーム接続を一律に遮断する韓国の例もあるが、わが国では一~三月、実態調査にようやく乗り出したところだ。医療機関が足りず、相談態勢も整っていない。教育現場や産業界を巻き込んだ包括的な対策を望みたい。
久里浜医療センターが家庭での注意点を紹介している。(1)子ども専用でなく、親名義の端末を貸し出す(2)購入前に使用時間などのルールを決め、書面に残す(3)破ったら使用禁止といったペナルティーを科す-などだ。
一方、回復に向けては大人の依存症と同様、根底にある「生きづらさ」の解消が不可欠との指摘もある。いびつな家庭環境、苦手分野への親の過剰な期待、学校でのいじめ…。ゲームには、子どもたちが心の苦痛を忘れ、達成感や仲間との絆を感じられる効用があるのも事実なのだ。
何より必要なのは、安心して相談できる現実世界の相手だという。「孤立の病」とも言われる依存症。ゲームの深みにはまる前に、周囲の大人が「SOS」に気付いてあげなければいけない。
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