穏やかなるかなカルネ村 作:ドロップ&キック
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なんせ、考えていた今回のサブタイ/作中表現にあまりにビンゴだったもので(^^
内容もほぼまんまサブタイ通りです。
「リグリット、私はモモンガを育ててみたいのさ」
そう言い切る”
「オヌシは一体何を言っておるんじゃ?」
「そんな変な事を言ってるかい?」
「変か変じゃないかで言えば明らかに変じゃし、どちらかといえば妄言の類だと言いたいとこじゃが……」
だがリグリットはニカッと笑い、
「悪くはないのう」
「リグリット、君は実にいいタイミングで来てくれたよ」
そうツアーは笑うが、
「この竜、何やら悪い顔をしてるように見えるのは、ワシの気のせいかのう?」
「君は悪戯好きで困った人物ではあるが……」
「聞けよ。この巨大トカゲ」
「だが、私よりも人間世界に造詣が深い。だろ?」
リグリットは腕を組み、
「……何をさせたいのかはっきり言え」
「モモンガに人間の世界で生きてゆく
☆☆☆
「なぬ? ヌシ、ボンを評議国で育てるんじゃないのかえ?」
「体は骨でできている。だが、その心は人間……」
どこかで聞いたような言葉をのたまう竜に、
「たわけ。普通の人間じゃって一部は骨でできておるわ」
すかさずツッコむ老婆。実にいいコンビである。
「まあまあ。とにかく、評議国でモモンガを私の庇護下にずっと置くのは、彼にとって飼い殺しに等しいだろう」
苦笑していたツアーは不意に真顔になり、
「人は竜よりずっと社会性動物だ。人が自分を研磨し満足するのは、人の社会でしか……人と人の中でしかありえない」
「言いたいことはわかるがのう」
「それに、足りないんだよ……」
「足りない? 何がじゃ?」
ツアーは少し言葉を選ぶように、
「彼がこの世界の住人として生きていく覚悟とその意味、”
「ツアー、ヌシが親になる日が来るのかはワシにはわからん。わからんが、」
老婆はニヤニヤ笑い、
「存外に子煩悩、それもかなりの”教育ママ”になりそうじゃな?」
「せめて教育パパと言ってほしいとこだね?」
「今更何をぬかすか。この
心理的クリティカルヒットを喰らったツアーは思わず反論しそうになる自分を自制する。友人とじゃれあうのは後だ後と自分に言い聞かせながら。
「ところでリグリット、引き受けてくれる気はあるのかい?」
「面倒そうじゃが、同時に面白そうでもある。引き受けてやるのも吝かでもないぞ?」
「じゃあ是非とも頼みたい」
「いいじゃろう。じゃが一つだけ聞いておきたい」
「なんだい?」
「ヌシがボンに”
リグリットはモモンガがはめていた指輪がどういうものかは、当然知っていた。
それがどのような機能を持つかも、それが元々は八欲王の持ち物でツアーが管理してることも、何よりツアーが気安く……まして会ったばかりのプレイヤーに思惑なく貸し出すような竜ではないことを。
「当然じゃないか。会話の中でさりげなく聞いたけど、モモンガの種族Lvは40で総合Lv100……いわゆるカンストプレイヤーだ。種族Lvが40ということは現在のLv60、難度に直せば180。つまり、」
ツアーは言葉を切り、
「現状、別に
「難度180というと”インベルンの嬢ちゃん”と大差ない、か……考えたもんじゃな。今のボンなら、万が一にも暴走してもどうにでもなるか?」
「そんな物騒なことは考えてないさ。ただ、自分が『完成してしまっている』と思い込んでいそうなモモンガにも、まだ先が……変われる要素があると知って欲しいだけだよ」
そ知らぬ顔のツアーに、
「悪い竜じゃな~。将来的に人の姿でカンストしようとすれば、かなり長い時が必要。少なくともユグドラシルよりはずっとレベリングがしにくいのがこの世界じゃ。ボンが人のままカンストする頃には、どっぷりこの世界に浸っていような」
「そこまで都合よく考えてないさ。何しろ指輪を外せば、すぐにLv100のオーバーロードの出来上がりだし」
「あのボンがそんな器用な性格してないことを理解した上で渡したんじゃろうに」
「さあ、どうだろうね」
”
読んでいただきありがとうございました。
確かにこのシリーズにおけるツアーのオカン度は激高です(^^
というかファーストコンタクトが好印象だったせいか、色々とそれなりに他意はありそうですが、基本モモンガにダダ甘ですね~。