穏やかなるかなカルネ村 作:ドロップ&キック
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良くも悪くも(^^
「まず俺の名は、モモンガって言います」
名を語ってなかったことを思い出し、立ち上がって姿勢をただしリグリットに伝えるモモンガ。
「それと……」
チラリとツアーを見る。
彼が頷くのを確認してから、
「この世界にちょっと前に漂着したばかりのユグドラシルのプレイヤーです。加えて、」
徐にモモンガは完全人化を齎す”
「……こりゃ
リグリットの眼前に現れたのは豪奢なローブを身に纏い、体の中心に赤い宝玉を輝かせる白磁のスケルトン・ボディの……
「えっと、その……こういう
営業職で身に着けたビジネスマナーに則った一礼をするモモンガであった。
名刺があれば完璧だったのにと思いながら。
「
実はリグリット……十三英雄の生き残りである彼女はモモンガと言う名前にお骨様ボディという組み合わせに、もしかしたら”
だが、彼女は演技派であり同時に見た目どおり老獪でもある。その内心はようとして知れない。
「ええ。”
「カカッ。こりゃ凄いのぉ~! いくら
それにしても驚くべきはこの老婆の豪胆さだ。
世間では『生者を憎む』とされるアンデッド、それも自分を一撃で殺せるかもしれない特上のそれを目の前にして、物怖じしないどころか呵呵大笑しているのだから。
「ああ、えっと……俺は生きてる人を憎むとか変な属性はありませんからね?」
「わかっておるわかっておる。ボンの顔を見てればわかる」
「えっ? そうなんですか? 表情筋とかはないはずなんですが……骸骨ですし」
ナイスお骨様ジョークをかますモモンガ……いや単に
「こう見えてもネクロマンサーの端くれじゃからのう。長い間アンデッドを相手にしてれば、顔を見ただけで判ることも相応にあるわい」
どうやら相手は一枚も二枚も上手なようだ。
「そ、そういうもんなんですか?」
「そういうもんじゃよ。ボンも長生きすればわかるぞい」
☆☆☆
「モモンガ、悪いけどちょっとリグリットと打ち合わせたいんだ……少し席をはずしてくれるかい?」
「打ち合わせ?」
元営業職サラリーマンの哀しいサガか、つい反応してしまいそうになるモモンガだったが、
「君の今後の方針についてさ。そうだな……」
ツアーはいくつか自分が管理してる八欲王の遺産、その中でもレア度は高くて危険度の低いものを抽出して取り出し、
「部屋の端っこでこれらの鑑定でもしてくれるかい? 気に入ったものがあればあげるよ」
アイテムを手に取るとネクロマンサーでなくともわかるほど、赤い瞳の光をキラキラと輝かせるモモンガ。
流石はツアーである。この短時間でモモンガのキャラを読み取り、その扱い方を心得始めていた。これが噂の竜の超感覚というやつだろうか?
ついでに喜び勇んで「ひゃっほぉ~~~っ♪ レアアイテム、ゲットだぜ!」部屋の隅っこに駆けて行くその姿を見るツアーは、「オモチャを与えて喜ぶ子供を微笑ましげに見る母親の目をしていた」と後にリグリットは語る。
そして心の中で『これからはオカンドラゴンと呼んでやろう』とも。
「単刀直入に聞くがの……ヌシは何を考えておる?」
「色々とさ」
「フン……なら、質問を変えよう。あの骨のボンはカルマ値、性格とかとは無関係に個が持つ資質は明らかに悪側じゃ。もしかしたら極悪かもしれんな」
まるで少なからず
「それが? だけど、その性格はとても好ましく善良で、その魂は赤子のように無垢その物じゃないか?」
モモンガの資質を聞いたところで気にする様子もないツアーの返しに、リグリットは溜息と共に苦笑する。
「『プレイヤー絶対殺すマン』のヌシがそこまで
「二重三重の意味で人聞きの悪い。私はそんな物騒な存在じゃないよ? じゃなければ君たちと旅なんかしないさ。それと唆されてもいないし、誑されてもいない。ただ、感じたままを言葉にしてるだけだよ」
「ヌシにそこまで言わせるか……末恐ろしいボンじゃな。まあ、それはいいじゃろ」
リグリットは一度言葉を整え、
「もう一度聞くぞ? ツアー、ヌシはボンをどうしたい?」
「彼を傷つけたり排除したりするのは論外。善良なものを力尽くで対処するのはポリシーに反する」
「じゃが、世界に仇なす存在となるならば、そうは言ってられんじゃろ?」
「そうだね。害をなすなら相応の手は打たなければならない……だからこうして手を打とうとしてるんじゃないか」
「というと?」
ツアーはどこかドヤ顔で、
「害をなす可能性があるなら無害にすればいい。リグリット、私はモモンガを育ててみたいのさ」
読んでいただきありがとうございました。
何故かモモンガ様の謎の可愛さアピール・キャンペーン継続中?(笑
それにしても、ツアーとリグリットの会話って、書いてて妙に楽しい~♪(某フレンズ風)ですね~。
実はこの回のツアーの発言で、この世界におけるモモンガ様のあり方ってある程度決まってたりして(^^