穏やかなるかなカルネ村 作:ドロップ&キック
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色々とクセはありそうですが。
そして……無駄に急上昇するモモンガ様のヒロイン度(えっ?
獅子の毛皮のマントに包まり、体を丸めツアーの腕の中で安らかな寝息を立ててるモモンガは、正しくヒロインの姿だった……
ま、まあ、そのような描写もどうかと思うが、事実なのだから仕方がない。
ついでにツアーも転寝しているのだが……ふと、気配を感じた。
彼の持つ超感覚をすり抜け、
「……もしかしなくても”リグリット”かい?」
うっすらと目を開けたツアーが呼びかけると、視線の先にあった何もないはずの空間がかすかに揺らぎ、
なんというか……全盛期の宮崎アニメに登場しそうな、見かけの老いを全否定するような元気溌剌という雰囲気を発散する三編みお下げがトレードマークの老人だ。
「久方ぶりじゃな。ツアー」
「人間の時間感覚だとそうなるのかな?」
「まあの。それにしても……」
その背筋がピンと伸びた
「しばらく見ん間に男色に走ったかの? それも良しじゃな。昔の仲間があの世とやらで喜んで薄い本を執筆しとることじゃろうて」
どうやら
「ひどい風評被害だな」
というか、骨と竜の間に果たしてBLは成立するのだろうか? それよりどちらかと言えば異種k……いや、よそう。
「オヌシ、その状況ではいかなる言い訳は効かぬと思え。せめてワシの納得する説明をしてみせよ」
「それは本人に聞いた方がいいだろう」
とツアーは力加減を間違え強打しないように気をつけながら、指先でモモンガの頭を撫ぜる。
「モモンガ、そろそろ起きてくれないか? 来客だ」
☆☆☆
「魔法使いのお婆さん……?」
どこか小動物っぽいしぐさで目をこすりながら瞳を開けたモモンガの第一声がそれだった。
「ほっほっほっ。こりゃええ。当たらずとも遠からずと言ったところかのう?」
そうリグリットは愉快そうに笑い、
「
「リグリット、実の名より長くなってるんだが?」
実に適切なツッコミを入れるツアーである。
そして、
「モモンガ、彼女はリグリット・ベルスー・カウラウ。これでも100年前に共に旅をした十三英雄の一人だよ」
「……へっ?」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「十三英雄のお話はツアーから。お会いできて光栄です。カウラウさん」
「リグリットでええよ、ボン。それと畏まった言葉も不要じゃ」
「そうそう。畏まった言い方をするほど立派な人間じゃないよ、リグリットは。悪戯好きだし」
「ほほ~う。ヌシがそれを言うか? 100年前、ワシらを散々
「それは100年前に何度も謝ったじゃないか。いい加減、勘弁してくれ」
うんざりした口調のツアーにモモンガは小首をかしげ、
「ツアー、100年前に何かやったのか?」
ふふんとリグリットは鼻で笑い、隅っこにおいてある白銀の豪奢なフルプレート・アーマーを見やり、
「100年前、そこの巨大トカゲは中身空っぽの甲冑を遠隔で操り、まんまと我らの中に潜り込んだのよ」
100年前の十三英雄の冒険譚の中のツアーの抽出話をリグリットから聞いたモモンガは、
「ツアー……それは流石にリグリットさん達に怒られるって」
「じゃろ?」
「仕方ないじゃないか。竜のこの身じゃ漂着したプレイヤーに同行できるわけないだろ?」
「そりゃそうだけど……」
「カカカッ。コヤツ、でかい図体の割に肝っ玉は小さくての。流れ着いたプレイヤーが悪さするんじゃないかと気が気でならんのさ」
笑い飛ばすリグリットだったが、ツアーは露骨にジロリと睨み、
「当たり前だろ? 八欲王のような事があれば、今度こそ世界は是正しきれないくらいに歪みきって、おそらくは終わる」
「さてと……」
リグリットは話を一旦切ると、モモンガをまっすぐに見つめた。
「プレイヤーの話を普通に受け止める……想像はつくが、ボンは一体何者じゃ?」
読んでいただきありがとうございました。
もういきなり登場のリグリットお婆ちゃんです(^^
でもこの人、原作での出番は少ないもののメッチャ有能な人なんですよね~。
十三英雄の生き残りってだけでも凄いのに、蒼薔薇に
唐突に異世界生活する羽目になったモモンガ様の強い味方になりそうっす♪