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第2回 | GMの最新車デザイン・性能情報をお届け

ザ・ラスト“アメ車”カマロのマッシヴスペックに昂ぶる

GMがシボレーブランドで販売生産しているアメリカンスポーツモデル「カマロ」。パワフルなエンジンをマッシヴなボディにリジッドマウントでぎゅっと押し込んだ“ザ・アメ車”である。その個性は、マスタングと並んで世界中の人々を魅了する長寿シリーズとなっている。そんな単純明快、まるでアメコミヒーローのようなカマロの魅力をお届けする。

アメリカンスピリットの具現化“V8 OHV”の咆哮

以前、デトロイトモーターショーで知り合ったカマロファンがこう言っていた。「クルマには2種類ある。V8エンジンか、それ以外か」。カマロのアイデンティティは、なんといってもOHVのV8モデルにある。シリンダーヘッドにチェーン機構を持たないOHVエンジンの、各シリンダーの爆発タイミングの独特なズレ。そして、ロッカーアームを押し上げるビート音がバルブから排気とともにマフラーに共鳴して響く「ドロドロドロ…」という重低音。それらの強烈な個性は、高回転でパワーを絞り出して走るのではなく、「トルクで引っ張る」感覚で、どのギヤからでもアクセルを踏んだだけアスファルトを削り取るような加速を味わうことができる。

そのスタイルも特徴的だ。いかにもアーリーアメリカンスタイルな1・2世代(下の写真)、スポーツカーライクな3・4世代、初代の流れを汲みつつもワイルドマッチョ路線の5・6世代と、外観の個性はさまざまだが、どれも趣味性と実用性を兼ね備えたキャラクターで、所有する満足度は十分。一度オーナーになってしまうと、何台もカマロを乗り継ぐ「カマロリスト」になる人が多いというのも頷ける。

(C)Nick Ares

スタイルや操縦性の変化・熟成が進む新世代カマロ

カマロの語源“カマラード”は、フランス語で「親しい仲間」や「友達・相棒」を意味する。現在最新のモデルは6代目だが、世界的なダウンサイジングの趨勢にならい、2.0リッター直4 ターボエンジンをラインナップ追加。またキャデラック「CTS」「ATS」と兄弟車となり、プラットフォームモデルになった印象がある。とはいえ、まだまだ数が少なく、新車、中古車に限らず5代目を目にすることのほうが圧倒的に多い。

世代を重ねるに従ってボディはコンパクトになってはいるものの、実際にカマロを目にすると、やはり国産車とは少し違ったグラマラスなボディと、写真ではなかなか伝えにくいセクシーなラインに魅了されてしまう。カマロの主力戦略機種ともいうべき「SS RS」、「LT RS」もその例に漏れることなく、4代目(下の写真)、5代目(メイン写真)ともに、1.9メートルを超える全幅の迫力はいかにもアメリカンという趣だ。

限りなく直線道路の多いアメリカ大陸で1日1000kmをクルージングするのに、高回転は必要ない。アメリカ本土においては、そうした理由から低速トルクが稼げるロングストローク型が有利で、イージーで整備性に優れたOHVエンジンがチョイスされる場合が多い。必然的にそのソフトな乗り心地もカーブの多い日本国内で乗るには不利になる面も多かった。しかし、実際に新世代のカマロを運転してみると、印象はガラリと変わるだろう。

さすがにOHVエンジンが奏でるやや「下品」とも思えるやんちゃな排気音(もちろんコルベットのV8のような凶暴さはないが)、彫りの深いインテリアなど、いろいろとステレオタイプなアメリカンの部分もあるが、その操縦性は「アメ車」というより「よくできた欧州車」のイメージ。少し前までのアメ車によく見られたフワフワ感はまったくなく、ソリッドな乗り心地だ。とはいえ、欧州車のスポーツモデルほど硬すぎず、適度にマイルドで、ドライビングの一体感をより感じることができるので、高速道路の巡行も快適そのもの。アメ車のシンボルともいうべきカマロは、確実に変化・熟成されていることを実感できる。

カマロ初の“リアルレーシングマシン”「Z/28」

そんなカマロシリーズの頂点に立つのが「Z/28」だ。日産スカイラインでいえば「GT-R」に相当するハイスペックモデルである。現在手に入る最新の「Z/28」は1世代前(5代目)のものだが、タフなブレーキやサスペンション、ドライサンプ式オイル機構などを装備し、究極のメーカーチューニングが施されている。

カマロといえばサーキットよりもドラッグレースカーのイメージが強いが、2012年型の「ZL1」あたりから本気でサーキットのトレーシングマシンを煮詰めはじめたようだ。そのスペックは6.2リッターV8スーパーチャージャー付エンジンで最高出力580hp、最大トルク76.8kgm、最高速度は約300km/hと凄まじかったが、サーキットでの唯一かつ大きな欠点が重さだった。

「Z/28」は「ZL1」の欠点を改良した、現時点でのシボレーの模範回答でもある。重量のかさむ過給機付きエンジンを捨て、自然吸気の7リッターV8エンジン(LS7)を選択。最高出力は505hp、最大トルクは66.5kgmと「ZL1」には一歩譲るものの、各部がより軽量かつ機能的にまとまり、コントロール性、耐久性も大幅にアップした。「ZL1」に比べて135kgもの軽量化を実現した「Z/28」は、「スポーツモデル」ではなく、カマロ初の「リアルレーシングマシン」と呼べる仕上がりになっている。

時代の流れとはいえ、多くの外国車がハイテク・コンパクトの日本車化して行くなかで、そのマッシヴなスタイルやパワフルな走りで今なお熱狂的なファンに支持されてきたカマロ。そんなカマロの主力機種も、やがては小排気量車に移って行くのかもしれない。もしかすると、いまが「アメリカンヒーロー」に触れられる最後のチャンスかもしれないのだ。こうしたファンの気持ちは、カマロが主役ともいえる映画『トランスフォーマー』シリーズのサムの台詞がすべてを物語っている。「50年経って…コレに乗らなかったことを後悔したくないだろ?」

(C)Alex Goy

Text by Rippa Creo

Photo by (C)order_242(main) (C) General Motors

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第3回 | GMの最新車デザイン・性能情報をお届け

シボレー カマロZL1 1LE──サムも驚くパフォーマンス

1967年に誕生したシボレー『カマロ』は、フォード『マスタング』と並ぶアメリカンスポーツクーペの象徴的存在である。マッシブなボディにパワフルなエンジン、そしてOHVのV8エンジンならではの「ドロドロドロ…」という独特のエキゾーストサウンドは、多くのアメ車ファンを引きつけてきた。この『カマロ』のトップパフォーマンスグレードとなるのが「ZL1 1LE」だ。1月下旬、2019年モデルの『カマロZL1 1LE』が発表された。

映画『トランスフォーマー』シリーズへの登場で人々の心をつかんだシボレー『カマロ』

日本国内では最近、フォードやシボレーといったアメリカの自動車メーカーが生産したクルマ、いわゆるアメ車が走っている姿を見かけることが非常に少なくなった。

マッチョなアメ車ファンにとって寂しい限りではあるが、ハリウッド映画ではスクリーン狭し、とすこぶる元気なアメ車が走り回っている。2007年に第一作が公開された『トランスフォーマー』シリーズは、主人公の少年・サムが購入した中古の『カマロ』が、地球に飛来したオートボット(金属生命体のロボット戦士)だったという設定。まさに『カマロ』が主役といえる映画だ。サムは『カマロ』への憧れをこう語っている。「50年経って…コレに乗らなかったことを後悔したくないだろ?」。この台詞は多くのアメリカ人の心をつかんだようで、『トランスフォーマー』の公開後、『カマロ』の人気が急上昇したという。

グレードには「LT RS」「コンバーチブル」、上級グレードの「SS」などがあり、2017年にはハイパフォーマンスモデルの「ZL1」が登場。とりわけ今年1月下旬に2019年モデルとなる「ZL1 1LE」が発表されると、全米のアメ車ファンが思わず立ち上がったそうだ。なぜなら、この『カマロ ZL1 1LE』、どえらいパフォーマンスをもった代物だったからだ。

『カマロ ZL1 1LE』はパドルシフト付き10速ATをもつサーキット対応の高性能車

『カマロ ZL1 1LE』は、サーキット走行にも対応したトップパフォーマンスを秘める高性能グレードだ。パワーユニットに6.2LのV型8気筒スーパーチャージャー「LT4」型エンジンを搭載し、その最大出力は650hp、最大トルクは89.9kgmを発揮する。

2019年モデルの最大の特徴は、新開発のパドルシフト付き10速ATを設定していることだ。10速ATは『カマロ ZL1 1LE』専用のチューニングによって変速スピードが高められており、ポルシェのデュアルクラッチトランスミッション「PDK(ポルシェ・ドッペル・クップルング)」よりも早いシフトアップを実現するという。3.5秒で60マイル(約97km/h)に達し、サーキットでのラップタイムは6速MT仕様モデルを上回る。

「独自のトラックモードキャリブレーションと10速AT により、アクセルのオン/オフ時には常に完璧なギアを選択している。あなたはレーシングカーのレーサーではないかもしれませんが、このクルマならば、レーシングドライバーの一人のようにシフトすることができるのです」とは、2019年モデルの開発を担当したチーフエンジニアの言葉だ。

アメ車好きの心に刺さる『カマロ ZL1 1LE』の虚飾を排したストイックなデザイン

外観では、太陽光が反射しづらいブラックのボンネットやカーボンファイバー製のリアウィングが目につくが、これはサーキット走行もできるトップパフォーマンスモデルに不可欠な装備だ。ほかにも専用デザインのエアディフレクターなどを備えており、その虚飾を排したストイックな面構えは、アメ車好きの心に刺さりまくるに違いない。

タイヤはグッドイヤーの「イーグルF1スーパーカー」を履き、サイズはフロントが285/30ZR20、リアが305/30ZR20。大径ホイールの隙間から見えるのは、「1LE」のロゴが刻まれたブレンボ製の赤いブレーキキャリパーだ。サスペンションは、路面の状況や速度に応じて瞬間的にサスペンションの減退を変化させ、最適な足回りにしてくれるマグネティックライド。これにも『カマロ ZL1 1LE』専用チューニングが施されている。

室内にはサーキットだけではなく普段遣いにおける快適性や機能性も考慮された。デュアルゾーン式オートエアコン、ヒーター&ベンチレーション付きフロントシート、ステアリングヒーターなどを装備し、オーディオはBOSEプレミアムオーディオシステムだ。

標準の「ZL1クーペ」より約22Kgも軽量化。『トランスフォーマー』最新作も必見!

軽量化についても忘れてはならない項目だ。より薄くしたリアガラスと固定式のリアシート、また軽量になったホイールとダンパーにより、車両重量は標準仕様の「ZL1クーペ」に比べて50ポンド(約22Kg)の軽量化がはかられた。この軽さはサーキットでラップタイムを削るときなどに大きなアドバンテージになることだろう。

余談だが、『トランスフォーマー』最新作は人気キャラを主人公にした初の前日譚で、そのオートボットが『カマロ』ではなく別の黄色いクルマにトランスフォーム(変形)するシーンから始まるという。このクルマ(アメ車?)も人気となるに違いない。

Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C) General Motors
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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