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第6回 | ポルシェの最新車デザイン・性能情報をお届け

人気再燃、90年代“ポルシェ911”が愛され続ける理由

1963年のフランクフルトモーターショーでプロトタイプが登場して以来、半世紀以上の時を経てもなおクルマを愛する者たちの憧れの的であり続けるスポーツカー、それがポルシェ・911ではないだろうか。それまでのポルシェ・356の後継車として開発された911は、リアにこの車両のために開発された空冷の水平対向6気筒SOHCエンジンを搭載して登場。このスタイルは97年9月にフルモデルチェンジされるまで堅持され、いつしか911のアイコンともいえるものに昇華していった。近年、この“空冷ポルシェ”の人気が再燃して価格が高騰、クルマ好きの間で注目を集めている。

普段乗りにも使えるスーパーモデルのポルシェ・911

ありきたりの表現ではあるが、ポルシェは高級スポーツカーである。現行モデルではベーシックなモデルですら1000万円超であり、上を見れば3000万円に迫るモデルまで存在しているのはご存じのことだろう。しかし、その気になれば普段の足としても十分に使用に耐えうる“乗用車”にもなり得るところが、他のスポーツカーとの大きな違いだ。サーキットやワインディングだけではなく、閑静な住宅街やショッピングモールの駐車場でも溶け込むことができる。その気になれば、ポルシェ1台で日常生活をこなすことでさえ十分可能なのだ。

なお、初代911の開発コードは「901」であり、当初の予定ではポルシェ・901の名前で登場する予定であったが、プジョーが真ん中にゼロが入った3桁の数字をすべて商標登録していたために断念したというのは有名な話である。

熱い支持で価格が高騰中の「964型」と「993型」

そんなポルシェのなかでも、近年特に評価を上げてきているのが、1989年に登場した3代目の「964型」(メイン写真と上の写真)と、93年に登場した4代目の「993型」(下の写真)である。冒頭にも紹介したように、5代目の「996型」からは今までのアイコンであった空冷エンジンから水冷エンジンに変更されている。当然、信頼性や性能はアップしているのだが、昔ながらの音やフィーリングを求めるファンから熱い支持を受け、高値安定というよりも高騰が続いているのが現状だ。

たしかに速さでは水冷以降のモデルに分があるかもしれない。しかし、バタバタと特徴的な水冷サウンドや電子制御に頼らないダイレクトな操作感など、空冷ポルシェは速さ以外の魅力が何物にも代えがたく、唯一無二のものなのだ。そんな魅力に取りつかれたオーナーが手放そうとしないことも、価格高騰の理由のひとつかもしれない。

Text by Koichi Kobuna

Photo by (C)Alexandre Prévot(main) (C)Abehn(993)

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第50回 | ポルシェの最新車デザイン・性能情報をお届け

甦ったスーパーポルシェ──伝説のカレラGTを完全修復

ポルシェファンなら、『カレラGT』の名を知らぬ者はいないに違いない。あらゆるポルシェのなかでも、その圧倒的なスペック、パフォーマンス、デザインにおいて、明らかに抜きん出ている“スーパーポルシェ”である。1270台が限定生産され、現存する走行可能な車両はわずかに数台。そのうちの一台が、ポルシェのヒストリックカー部門「ポルシェ・クラシック」によるフルレストア&カスタマイズプログラムを完了して公開された。

スーパースポーツの歴史に残る“スーパーポルシェ”。登場当時の車両価格は5000万円

『カレラGT』は、もともとル・マン24時間耐久レースに参戦するために開発された2シーターのスーパースポーツだ。2003年のジュネーブモーターショーで発表され、2006年までにポルシェのライプツィヒ工場で 1270 台 が限定生産された。ドイツ本国での価格は39万ユーロ(当時の為替レートで邦貨換算すると約5070万円)。その後に登場したハイブリッドスーパーカーの『918』は、『カレラGT』の後継モデルにあたる。

デザインはポルシェの伝説のレーシングカーの特徴を色濃く受け継ぎ、『911』よりもアグレッシブ。パワーユニットは、ミッドシップの極めて低い位置にドライ・サンプ潤滑の5733 cc V型10気筒が搭載される。8000rpmで出力450kW(612ps)を発生し、最高速度は330km/hオーバー。そのパワーを6速MTにより路面に伝達する。レース由来のスーパーカーらしく、ボディパネルにカーボンファイバーを採用し、車両重量はわずか1380kgだ。足回りも、プッシュロッドタイプのダブルウイッシュボーンサスペンションにPCCB(ポルシェ・セラミック・コンポジット・ブレーキ)と、レーシングカー仕様である。

まさにスーパースポーツの歴史に名を残す名車だが、幸運にもそのうちの一台を所有するアメリカのコレクターが「ポルシェ・クラシック」にフルレストアを依頼。そして先日、ポルシェからこの車両のレストアプログラムが完了したとの発表がなされたのだ。

ポルシェ・クラシックが350時間を費やしすべてのカーボンパーツを手作業で研磨

ポルシェ・クラシックは、ポルシェ本社からクルマで30分ほど走ったところに広大な専用施設をもつヒストリックカー部門だ。ポルシェの旧車に関する豊富なノウハウとデータがあり、レストアや修理、メンテナンスのほか、クラシックパーツの開発、再生産、販売も行っている。専用施設1階には5万種類以上のスペアパーツが保管されているという。

ポルシェ自身による『カレラGT』のレストアはオーナーの希望によるもの。依頼を受けたポルシェ・クラシックは全パーツを徹底的にチェックし、エンジン、ミッション、シャシーコンポーネントを完全にオーバーホールし、必要に応じて交換や修理も行った。

とりわけ苦労したのがカーボンパーツの修復である。古いカーボンパーツのコーティングは黄色く変色し、退色する傾向がある。そこで、モノコックを含むすべてのカーボンパーツを手作業で研磨。「再コーティングするのに350時間を費やしました」と話すのはポルシェ・クラシックのファクトリーレストアマネージャーのウーベ・マクルスキー氏だ。

ボディカラーはオークグリーンメタリック。この深いグリーンは、ポルシェでは1970年代に登場したものだが、新車当時に設定されていなかった。足元に装着するのは5本スポークのマグネシウム製ホイールだ。社外品ホイールとして世界的に有名な「BBS」のモータースポーツホイールからインスピレーションを受けたもので、スポークにゴールド、リムに貴金属の銀を用いて仕上げられた。銀の層を重ねることにより、クロームのように見せているという。さらに、酸化防止のためにクリアラッカーの保護コーティングを施した。

このほか、ブレーキキャリパー、エンジンルーム、インテークハウジング、インテリアにもゴールドが使用されている。ステアリングホイールの12時の位置には、オークグリーンを両側に、ゴールドを中央にあしらったストライプがアクセントとして添えられた。

ブランドの価値を高める旧車。ポルシェの全モデルが現在もロードを走り続けている

レストアプログラムを完了した『カレラGT』は、ポルシェカーズ・ノースアメリカの招待を受ける形でオーナーを含む100名のゲストに向けてお披露目された。会場はアトランタに新設された「ポルシェ・エクスペリエンスセンター」。オフィスだけではなく、ワークショップやミュージアム、テストコースまで備えるポルシェの北米の拠点である。

スポーツカーブランドは近年、自社のヘリテージに多くのリソースを注いでいる。それはブランドに物語や歴史が必要とされていることもあるが、ヒストリックカーの存在によってブランドの魅力がより高まるからだ。とくにポルシェの場合、全モデルの70%以上が現在もロードを走り続けているという。愛車に長く乗り続けたいオーナーにとって、ポルシェ・クラシックのようなヒストリックカー部門はありがたい存在となることだろう。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Porsche AG.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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