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第1回 | シトロエンの最新車デザイン・性能情報をお届け

発表から60周年「シトロエンDS」の色褪せない魅力

“フランス車”という響きにどのようなイメージを持たれるだろうか。多くの人は“個性的なデザイン”であったり、“独創的なメカニズム”というふうに、他の自動車メーカーとは一風変わったイメージを抱いているのではないか。まさに、そのイメージにピッタリといっても差支えないほど個性的なデザインかつ、独創的なメカニズムを持つ車がシトロエン・DSである。1955年のデビューから今年で60周年となるが、いまだにDSは色褪せない魅力を放ち続ける。

20年に渡って生産が続けられた“宇宙船”

DSは1955年に行われたサロン・ド・ロト(現在のパリモーターショー)で初披露された。2CVをデザインしたことでも知られるフラミニオ・ベルトーニの手によって作り上げられた流線型のデザインは、埋め込まれたヘッドライト、ラジエータグリルを廃したフロントマスク、窓枠のないサッシュレスドアの採用など、同世代のクルマのどれとも似ていない。そのあまりに個性的なデザインは“宇宙船”と評されるほどであった。

また、ボディは最低限の強度骨格を構築し外板を装着する手法がとられていたので、フロアパンのみで十分な強度を持ち合わせていた。そのため、ルーフをカットオフしたコンバーチブルや、ルーフのリアを伸ばしたワゴン、さらにはリムジンまで作られ、大統領専用車としても愛用された。特に第18代フランス大統領のシャルル・ド・ゴールはDSを気に入り、あらゆる公式行事に利用したといわれる。

デザインのみならず、メカニズムにも革新性は表れていた。DSは従来の金属バネを使用したサスペンションではなく、ガスとオイルによって衝撃を吸収する「ハイドロニューマティック・サスペンション」を採用。これにより、荷重の変化や路面の変化に左右されず車高を一定に保つ方向に作用するため、乗り心地も“宇宙船”の名に恥じないものとなっていた。さらにサスペンションに使われたオイルは、ブレーキシステムやパワーステアリングのオイルも兼ねており、乗り味も操作感も従来の物とは違った仕上がりとなっていたのである。この独創的なDSはデビューから20年にも渡って生産が続けられたことからも、どれだけ先進的なクルマであったかがわかるだろう。

優雅なスタイリングと乗り味からは想像がつかないかもしれないが、実はDSはラリーフィールドでも活躍を見せている。エンジンパワーこそ目を見張るものはなかったが、前輪駆動の安定性と悪路をしなやかにクリアするハイドロニューマティック・サスペンションによって安定した走りを見せ、1966年のモンテカルロラリーでは総合優勝を果たしているのだ。

永遠の価値を求めて「DS」ブランドが独立

そんなDSを取り巻く環境にこのところ変化が訪れている。まず、1975年のDS生産終了から34年後の2009年、この年に行われたジュネーブモーターショーで1台のコンセプトカーが発表された。その名は「DSインサイド」。もちろん、このDSは往年の名車の名前が由来であることは明白で、同年末にシトロエン・DS3の名前で販売が開始された。その後、DSの名前はシトロエンの高級車シリーズの名前となり、DS4、DS5が相次いで投入されたのだった。

そして2014年6月1日、フランスの乗用車産業に高級車セグメントを本格的に復活させることを目標に、新たに「DS」ブランドがシトロエンから独立して設立された。その命題は、初代DSの“イノベーション”と“粋”を永遠の価値として形にすることである。初代DS生誕から60周年の今、どんな新たなDSが生まれてくるのか目が離せない。

Text by Koichi Kobuna

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第15回 | シトロエンの最新車デザイン・性能情報をお届け

この新型SUVは空飛ぶ絨毯だ──シトロエンC5エアクロス

『2CV』、そして『DS』、近年では『C3』『C4カクタス』。フランスのシトロエンは、独創的なクルマを作ることで知られるブランドである。それはいま世界的に流行するSUVにおいても変わらない。シリーズの名称は「エアクロス」。ヨーロッパでは『C3エアクロス』『C4エアクロス』が人気を集める(日本へは未導入)。この二台の上位車種となるのが、昨年末にヨーロッパで発売された最新SUVの『C5エアクロス』だ。

激戦区のCセグメントに参入。シトロエンの最新コンパクトSUV『C5エアクロス』

『C5エアクロス』は、2015年に上海モータショーで発表された『エアクロス コンセプト』の市販バージョンだ。コンセプトモデルが上海でお披露目されたことでわかるように、もともと「エアクロス」は中国やロシア、南米に向けて開発されたシリーズ。しかし、ヨーロッパで販売されると予想以上の人気モデルとなり、なかでも現行『C3エアクロス』は2017年10月の発売から4カ月で5万台のセールスを記録したほどである。

その兄貴分となる『C5エアクロス』は、世界的な激戦区のCセグメントに属する5シートのコンパクトSUV。デイライトとヘッドライトを上下で切り分けた独特のフロントフェイスに、『C4カクタス』から続くエアバンプ(残念ながらこちらはダミー)と、シトロエンの最新デザイン言語を採用。ルーフレールや樹脂製のサイドクラッディングなど、よりSUVらしいディティールも取り入れている。世の多くのSUVが力強さを主張するかのような意匠を持つなかで、全体的に丸みを帯びた威圧感のなさがシトロエンらしい。

プラットフォームは、プジョー『3008』『5008』などと共有するPSA(プジョー・シトロエン)の「EMP2(Efficient Modular Platform 2)」。ボディサイズは全長4500mm×全幅1840mm×全高1670mmと、全幅こそやや広いが、日本の道路事情にも適したサイズといえる大きさだ。SUVらしく最低地上高は230mmを確保している。

新開発サスペンションにより、まるで「空飛ぶ絨毯」のような快適な乗り心地を実現

プラットフォームを同じにする『3008』などのプジョー車とは異なり、『C5エアクロス』はコンフォート性能を徹底的に追求している点に大きな特徴がある。

シトロエンといえば油圧式のハイドロサスペンションを思い浮かべるが、『C5エアクロス』はその乗り心地を受け継ぐ新開発の「Progressive Hydraulic Cushions=プログレッシブ・ハイドロリック・クッション」を採用。KYBSE(カヤバ・サウス・ヨーロッパ)と共同開発したサスペンションで、『C4カクタス』もマイナーチェンジで導入している。

このサスペンションは、電子制御を用いずともダンパーの減衰力(強さ)をバリアブルに変化させることが可能。たとえば柔らかさがほしいとき、あるいは手応えを感じたいとき、車両のスピードによってダンパーが逐一コンフォート(快適さ、安心感)に反応してくれるのだ。これにより、まるで「空飛ぶ絨毯」のようなライド感を実現するという。

パワーユニットは、ガソリンが1.2L 3気筒の「ピュアテック130」と「ピュアテック180」の2種類で、ディーゼルの「BLUE HDi」も「130」と「180」がラインナップされる。トランスミッションは8速ATの「EAT8」。コースティング機能を備え、少燃費にも貢献する。本国では6MTも用意されているが、日本への導入は微妙なところだろう。

家族や仲間が快適に移動できる室内空間。先進の安全装備がドライビングをサポート

インテリアもコンフォートに重きが置かれている。極上の乗り心地にひと役買っているのは「Advanced Comfortシート」だ。前席にはマルチポイントマッサージシステムが搭載され、タッチパッドコントローラーによる操作で各部をマッサージ可能。シトロエン伝統のシート面の厚さと絶妙な柔らかさも受け継ぎ、乗員全員が快適に移動できる。

ドライバーズシートに座ると、目の前には12.3インチTFTパネル液晶と8インチタッチスクリーンが広がり、コントラストの効いた見やすい表示で情報を伝えてくれる。『C3』に標準搭載され、日本でも話題となったドライブレコーダー「コネクティッドカム」やスマホ用ワイヤレス充電システムなど、「今ほしい」機能も標準装備した。

インテリア全体は、広報写真をみるとブラウンレザーを多用しており、大人に似合う雰囲気だ。この点も、やはり『C3』や『C3エアクロス』より兄貴的存在となっている。

安全運転支援システムでは、アダプティブクルーズコントロール、アクティブセーフティブレーキ、アクティブレーンキーピングアシスト、道路標識認識機能を搭載。高速道路ではインテリジェントビームヘッドライトによってハイとローの切り替えも自動で行う。

ライバルはBMW『X1』やアウディ『Q3』。『C5エアクロス』の価格は約340万円から

ボディカラーは7色展開で、ルーフがブラックのツートーン仕様も選べる。さらにサイドのエアバンプとフロントバンパーのインテークもカラーインサートとして設定され、カラーパッケージは大きく3種類が用意された。組み合わせは30にも上る豊富さだ。

すでにヨーロッパでは昨年末から販売が開始され、価格はエントリーグレードの1.2L 3気筒「ピュアテック130」がおよそ340万円。日本への導入も予定されている。

特徴的なエクステリアに「空飛ぶ絨毯」と称される乗り心地、そして十二分な安全運転支援システムと、『C5エアクロス』はどこを切り取っても魅力溢れるCセグメントSUVだ。ルノー『カジャー』、BMW『X1』、アウディ『Q3』、フォルクスワーゲン『ティグアン』あたりが直接的なライバルとなりそうだが、価格的にも狙い目といっていいだろう。

Text by Taichi Akasaka
Photo by (C) Peugeot Citroën
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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New Citroën C5 Aircross オフィシャル動画
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