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第3回 | スーパーカーを楽しむ大人のドライブ旅行

スーパーカーで欧州を走る「海外ドライブ旅行」

年間海外旅行客が100万人を超えてから40年以上。非日常へと誘ってくれる海外への旅だが、もうひと通り満喫してしまった、という人も多いだろう。ならば、これからはひと味違う海外旅行を経験してみるのはいかがだろうか。たとえば、「海外ドライブ旅行」もそのひとつ。自らハンドルを握って速度無制限で有名なドイツのアウトバーンを疾走したり、美しいアルプスの山々を越えるのは、普通の旅とは違った満足感を得られるはずだ。

日本よりロングドライブに向いているヨーロッパ

「ノルウェーのフィヨルドのような雄大な自然、中世の街並みがそのまま残るヨーロッパの都市。やはり、日本と違う文化圏の景色の中でドライブするのは新鮮だし、気持ちいいですよ」

そう語るのは、海外ドライブの経験も豊富なモータージャーナリストの九島辰也さんだ。

「そもそも海外は日本よりもロングドライブしやすい環境なんです。たとえば、ヨーロッパでは、大陸を車で長期間かけて移動することがそれほど珍しくない。道もロングドライブを想定しているし、高速道路の運転もみんな上手い。交差点も信号式はあまりなく、多くはラウンダバウト。つまり、運転中にストップする場面が少ない。とにかく車を流すように道路が考えられているんです」

日本にはほとんどないラウンダバウトだけに、最初は戸惑うかもしれない。しかし、慣れてしまえば、そのスムーズさは爽快のひと言に尽きるだろう。

海外自動車メーカーが提供する体験型ドライブ旅行

また、多くの車はメーカーの母国事情に合わせてつくられている。たとえばドイツ車のガッシリとした乗り心地は、速度無制限のアウトバーンでも快適に走れることが前提ゆえ。九島さんも、過去にそれを実感した経験があるという。

「以前、フランス車、1960年代のシトロエン・DSをパリで運転したことがあるんです。フランスって、田舎道とか実はけっこう道が悪い。でもシトロエン・DSは、そういった道も走ることを想定しているから、古い車にもかかわらず、すごく乗り心地がよかったんですよ」

各国の車の実力や個性、誕生の背景を、ハンドルを握って実感、理解できるのも海外ドライブの醍醐味なのだ。

このように魅力あふれる海外ドライブの旅。手軽に楽しむのであればレンタカーが最適だが、どうせならば、もっとスペシャルな海外ドライブをしたいところだ。最近は海外メーカーがユーザー向けに体験型自動車旅行を企画しているケースも少なくない。

ポルシェに乗るドライブツアーを提案する「ポルシェトラベルクラブ」などは、その代表にして老舗だろう。また、航空会社や旅行会社も「スーパーカーのハンドルを握る旅」といったふうに銘打ち、有名メーカーの工場見学やサーキット体験なども含めた海外ドライブ旅の企画が増えている。

「車を運転すると、通常の旅行より地元になじみ、とけ込んだ気持ちになれるんです。地元のルールに沿って運転するのって、ローカルっぽいじゃないですか」

普通の旅では味わえない、海外ドライブの旅。一度、体験してみてはいかがだろう?

Text by Kenichiro Tazawa(euphoria FATORY)

Photo by (C)AIBargan、(C)Sho Yamada

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第11回 | スーパーカーを楽しむ大人のドライブ旅行

華の都から巡礼地へ、“美し国”の歴史を辿るドライブ

海外に行く機会の多い大人の男性なら、ミラノと並ぶファッションの中心地であり、世界有数の大都市のパリによく行くことがあるかもしれない。しかし、この華の都からスタートし、自らクルマを運転して「美し国(Douce France)」と呼ばれるフランスの歴史と文化をめぐり、最終的に西海岸のサン・マロ湾上に浮かぶモン・サン・ミッシェルを目指す…。こんな旅をする40代男性は、それほど多くはいないだろう。助手席に座る美しい女性とともに、彼の地の歴史を辿る知的な海外ドライブである。

パリ郊外の森のなかに忽然と現れる優美な館

パリは、セーヌ川近辺の建物を含む多くのエリアが世界遺産に登録されている。たとえば、セーヌ川右岸のマレ地区には、フランス革命や普仏戦争でさまざまな出来事の舞台となったパリ市庁舎があり、一区にはルーブル美術館、フランス革命の際に多くの血が流れたコンコルド広場、さらに、パリ解放後にフランス陸軍が行進し、市民が「シャルル・ド・ゴール万歳」の横断幕を掲げたシャンゼリゼ大通り…。

左岸には、街のランドマークであるエッフェル塔、オルセー美術館、現在は国会議事堂として使われている元ブルボン宮、ノートルダム大聖堂、マリー・アントワネットが最後に収容されたコンシェルジュリーなどがある。このパリから、同様に世界遺産であるモン・サン・ミッシェルを目指すドライブは、「フランスの歴史を辿る旅」ともいえる。

ただ、その道のりは約360kmに及び、国内でいえば東京から仙台までの距離に相当する。平均時速90km以上で一直線に目的地を目指しても4時間はかかる計算だ。また、パリの石畳や、お世辞にも整備されているとはいえないフランスの田舎道なども考慮しなければならない。となると、クルマはルノーやプジョー、シトロエンなど、この土地を走ることを前提にしたフランス車。それも、歴史的な建造物にも違和感なく溶け込み、助手席の女性が快適にドライブを愉しむことのできるラグジュアリーカーを用意したい。

メイン写真と下の写真は、2012年に発表されたシトロエン「DS」シリーズのコンセプトカーで、50kmのEV走行が可能なプラグインハイブリッドモデルの「Numéro 9」だ。背景の城は、パリから北に45分ほど走ると、森のなかに忽然と現れる優美な館、シャンティイ城である。

シャンティイ城は、ルネサンス時代に建造され、16世紀のヴァロア朝、17〜19世紀のブルボン朝と、フランス王国の発展期と絶頂期において王家とともに歩んだ城だ。アメリカ第37代大統領のリチャード・ニクソンは、この城を公式訪問したとき、「ヴェルサイユ城には7回も行ったが、なぜここには一度も連れて来てくれなかったのだ?」と言ったという。今回紹介するドライブルートには入っていないが、歴史を辿るならこの城も訪れておきたい場所だろう。

ヴェルサイユ宮殿からフランス一の巡礼地へ

まず向かうのは、パリの南西22kmに位置し、フランス王国絶頂期の1682年から1789年まで王宮があったヴェルサイユ市。もちろん、その中心となっていたのは、フランス王ルイ14世が絶対王政のシンボルとして当時の最高の職人を招いて完成させたヴェルサイユ宮殿だ。

この“史上最大かつ最高の城”は、17世紀のフランス芸術の完成度を物語る史跡であり、豪華絢爛な装飾はフランス古典主義の代表ともいわれる。フランス革命後も室内はほぼ無傷で残り、マリー・アントワネットとルイ16世が式を挙げた「王室礼拝堂」、城の中央に広がる華麗な「鏡の回廊」など、ブルボン王朝の優雅な宮廷生活に触れることができる。また、「噴水庭園」をはじめとする宮殿の庭園も、フランス式庭園の最高傑作だ。40〜50代にとって、ヴェルサイユ宮殿は池田理代子の名作『ベルサイユのばら』の舞台としても馴染みが深い。

(C)Делфина
(C)Myrabella
(C)Michal Osmenda

ヴェルサイユ宮殿から北西に約64km、セーヌ川とエプト川が合流するヴェルノンから東に5km行けば、20世紀初頭に印象派の画家たちがコミューンを形成したジヴェルニーがある。クロード・モネが人生の多くの時間を過ごした場所だが、ぜひ見てほしいのがモネ自ら設計した庭園。ここの池は、しだれ柳が水面に垂れ、蓮の花が浮かぶ神秘的な光景で知られ、モネの名画「睡蓮」のモデルとなった。

さらに、ジヴェルニーから西へ約300km走ると、海岸線から1kmほど沖にある要塞のような小島が見えてくる。ここがドライブのゴールとなるモン・サン・ミッシェルだ。

フランスでもっとも有名なこの巡礼地は、もともと先住民であるケルト人の聖地というべき岩山だった。そこに708年のある夜、アヴランシュの司教だったオベールの夢に大天使ミカエルが現れ、修道院を建てるように告げられたことが、モン・サン・ミッシェルの始まりである。

その後、増改築を重ね、13世紀末に現在のような姿になるが、百年戦争では要塞の役目を果たし、フランス革命によって修道院が廃止されると一度は監獄となり、1865年に再び修道院として復元された。ここは、フランスの歴史が集約された場所なのだ。

(C)Édouard Hue

高級リゾート地の海岸線を走ったり、世界各国の辺境を駆け抜けるアドベンチャードライブも刺激的だが、女性とともに歴史的な建造物に触れ、“美し国”の歴史と文化に思いを馳せる…。これもきっと、大人の男ならではの知的で贅沢な海外ドライブとなるのではないだろうか。

Text by Taisuke Seki(euphoria FACTORY)

Photo by (C)PEUGEOT CITROËN(Numéro 9)

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