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第7回 | 大人のための最新自動車事情

獰猛かつ優雅「コブラ」のオーナーになるという夢

40〜50代の車好きなら、いつかは「コブラ」に乗ってみたいと思ったことがあるのではないだろうか。エレガントで扇情的なボディ、獰猛とさえ表現できる大パワー、サイドマフラーから轟くエグゾーストノートサウンド。“コブラワールド”には、他のクルマではけっして得ることができない独特の魅力がある。コブラに取り憑かれた人にとって、この車のオーナーになるのは諦めることのできない夢なのだ。

現存する「オリジナルコブラ」の価格は数億円

コブラは1960年代初め、世界一速いスポーツカーを送り出すために、伝説的なレーシングドライバーであるキャロル・シェルビー氏のアイディアをもとに英国製のしなやかなシャシーと米国の大パワーエンジンを組み合わせることで生まれた車だ。1963年から70年ごろにかけて、4.7リッターエンジンを積む「289コブラ」が600台、7リッターエンジンの「427コブラ」が347台生産された。

だが、圧倒的な性能を誇りながら、諸事情によって生産が中止。世に送り出された「オリジナルコブラ」は、この1000台に満たない数にすぎない。その希少性から、いまオリジナルコブラは数千万円から数億円という高値で取引されている。また、仮に手に入れることができても、車齢50年にもなるヴィンテージカーを維持していくのは至難の業である。

だからといってコブラを所有するのが不可能というわけではない。この強烈な存在感を放つ車を求める声は多く、コブラの消滅後も世界中で「リプロダクション・コブラ」と呼ばれる数々のレプリカが生産されてきた。なかでも、キャロル・シェルビー氏が60年代当時のオリジナルを忠実に再現したモデルは「コンティニューション・コブラ(正規継続生産車)」と呼ばれる。本家シェルビーアメリカン公認のコンティニューション・コブラは現在も生産され続けており、正規輸入代理店の「シェルビーアジア」を通じて日本でも手に入れることができる。

写真は「シェルビーアジアAP(アジア・パシフィック)モデル」という日本向けにアレンジされたコブラだ。オリジナルのフォルムや乗り味はそのままに、現代の交通事情に合わせ、気候に左右されることなくドライブできるように、長くコブラに携わってきたシェルビーアジア代表、田邉正剛氏のプロデュースにより生まれたモデルである。

60年代当時のスタイルを忠実に再現したAPモデル

標準仕様のエンジンは、フォードモータースポーツ製V8、5.0リッター、340馬力。5速マニュアルが組み合わされ、1180kgのボディを軽々と走らせる。コクピットは、スミスのメーターやルーカスのスイッチ類、シフトレバー、サイドブレーキ、シートにいたるまでオリジナルモデルと同じスタイルを踏襲。新車といはいえ、その雰囲気は60年代当時そのままだ。もちろん、現代の車では味わえない爆発的な加速、獰猛な走りも当時と変わらない。さらに“モアパワー”を求めるなら、オプションで最大8.6リッター(750馬力!)までエンジンを拡大することができる。

この「シェルビーアジアAPモデル」のスターティング価格は、868万円。オリジナルコブラを再現しているとはいえ、製造クオリティは現代のテクノロジーによるもの。維持するための出費や苦労は最小限で済むだろう。

コブラを所有するのは、けっして非現実的な話ではないのだ。シェルビーアジアAPモデルのホームページには、コブラのオーナーになるという夢を抱く者に「あの頃から抱き続けてきた男の夢を、今、実現させてみませんか?」とのメッセージが綴られている。1963年の登場から半世紀以上が経過したいまも、コブラは男の夢であり続けている。

Text by Muneyoshi Kitani(Teneur)

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第129回 | 大人のための最新自動車事情

マッチョな軍人たちへ──愛国仕様のダッジチャージャー

『ワイルド・スピード』の第一作が公開されたのは2001年のことだ。主人公ドムの愛車は、圧倒的パワーをもつ古き良き時代のダッジ『チャージャー』。言わずとしれたマッスルカーである。あれから10余年。アメリカでは今、シリーズにたびたび登場する1960〜70年代の『チャージャー』の価値が上昇し続けている。なにしろ、このSUV全盛の時代にあって、現行の『チャージャー』『チャレンジャー』までもが10年間で70%も販売台数が伸びているのだ。そして、この人気を逃すまいとブランドもさまざまな限定車やオプションを設定。今年4月には、なんとも印象的なストライプのカスタムルックが登場した。

モダンマッスルカーの代表車種2台。ダッジ『チャージャー』と『チャレンジャー』

マッスルカーとは、広義では大排気量のV8エンジンを搭載するハイパフォーマンスのアメリカ車を指す。狭義では1968年から1971年にかけて作られた高性能でハイグレードなアメ車のこと。フルサイズのセダンやクーペ、後輪駆動車が多い。したがって、より正確にいうと、現行車種はマッスルカーではなく、ニューマッスルカーなどと呼ばれる。

そのモダンなマッスルカーのひとつが、ダッジブランドの現行『チャージャー』『チャレンジャー』だ。『チャージャー』は2ドアクーペで、いわば生まれながらのマッスルカー。『チャレンジャー』は4ドアセダンで、フォード『マスタング』と同様にポニーカー(手頃な価格のスポーティカー)として誕生した。いずれも現行型は第三世代で、発表されてから10年以上の時を刻んでいる。にもかかわらず、本国では依然高い人気を誇るモデルだ。

その証拠に、4月のニューヨークオートショー2019において、2台の上位グレードに設定可能な特別パッケージが発表されると、それだけでニュースになったほど。パッケージの名称は「stars & stripes edition(スター・アンド・ストライプス・エディション)」。ミリタリーをテーマとする渋いストライプをまとったカスタムルックのオプションである。

テーマは星条旗。フロントからリアにかけて走る極太のサテンブラック・ストライプ

「stars & stripes edition」は、その名のとおり、「スター・アンド・ストライプス(星条旗)」をテーマにしたカスタムルックだ。最大の特徴は、フロントからリアにかけてボディを覆うようにペイントされたサテンブラックのストライプ。この極太ストライプの正面に向かって右側、つまりドライバーズシート側には、シルバーの縁取りが入っている。

シートはブラックのファブリック(布製)で、ヘッドレスト側面に刺繍されたブロンズのスターが目を引く。このブロンズカラーはシートとステアリングホイールのステッチにも使用されている。そのほか、ボディ側面にさりげなく描かれている星条旗、20インチホイール、前後のスポイラー、装備されるバッジ類は、すべてサテンブラック仕上げだ。

選択できるボディカラーは、「デストロイヤーグレイ」「F8グリーン」をはじめ、「グラナイトクリスタル」「インディゴブルー」「マキシマムスティール」「オクタンレッド」「ピッチブラック」「トリプルニッケル」「ホワイトナックル」の全9色。写真の『チャージャー』はデストロイヤーグレイ、『チャレンジャー』がまとっているのはF8グリーンだ。

軍人や愛国精神をもつマッチョたちのために設定されたカスタムルックのオプション

「統計によると、軍人が購入するアメリカンブランドのなかで、もっとも人気があるのはダッジ」。これはダッジのプレスリリースにある一文だ。とりわけ、彼らがもっとも多く選択しているのが『チャージャー』と『チャレンジャー』だという。つまり、軍人や愛国精神をもつマッチョな男たちのために設定されたのが今回の星条旗ルックというわけだ。

愛国精神はともかく、マッスルカーがマッチョな男に似合うのは『ワイルド・スピード』シリーズを見れば一目瞭然。日本人はよほど筋トレしないとむずかしいかもしれない。

なお、「stars & stripes edition」が設定されるのは『チャージャーR/T』『チャージャー スキャットパック』『チャージャーGT RWD』『チャレンジャーR/T』『チャレンジャーR/T スキャット・パック』『チャレンジャーGT RWD』の6車種。5月から発売される。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fiat Chrysler Automobiles
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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