映画『トランスフォーマー』シリーズへの登場で人々の心をつかんだシボレー『カマロ』
日本国内では最近、フォードやシボレーといったアメリカの自動車メーカーが生産したクルマ、いわゆるアメ車が走っている姿を見かけることが非常に少なくなった。
マッチョなアメ車ファンにとって寂しい限りではあるが、ハリウッド映画ではスクリーン狭し、とすこぶる元気なアメ車が走り回っている。2007年に第一作が公開された『トランスフォーマー』シリーズは、主人公の少年・サムが購入した中古の『カマロ』が、地球に飛来したオートボット(金属生命体のロボット戦士)だったという設定。まさに『カマロ』が主役といえる映画だ。サムは『カマロ』への憧れをこう語っている。「50年経って…コレに乗らなかったことを後悔したくないだろ?」。この台詞は多くのアメリカ人の心をつかんだようで、『トランスフォーマー』の公開後、『カマロ』の人気が急上昇したという。
グレードには「LT RS」「コンバーチブル」、上級グレードの「SS」などがあり、2017年にはハイパフォーマンスモデルの「ZL1」が登場。とりわけ今年1月下旬に2019年モデルとなる「ZL1 1LE」が発表されると、全米のアメ車ファンが思わず立ち上がったそうだ。なぜなら、この『カマロ ZL1 1LE』、どえらいパフォーマンスをもった代物だったからだ。
『カマロ ZL1 1LE』はパドルシフト付き10速ATをもつサーキット対応の高性能車
『カマロ ZL1 1LE』は、サーキット走行にも対応したトップパフォーマンスを秘める高性能グレードだ。パワーユニットに6.2LのV型8気筒スーパーチャージャー「LT4」型エンジンを搭載し、その最大出力は650hp、最大トルクは89.9kgmを発揮する。
2019年モデルの最大の特徴は、新開発のパドルシフト付き10速ATを設定していることだ。10速ATは『カマロ ZL1 1LE』専用のチューニングによって変速スピードが高められており、ポルシェのデュアルクラッチトランスミッション「PDK(ポルシェ・ドッペル・クップルング)」よりも早いシフトアップを実現するという。3.5秒で60マイル(約97km/h)に達し、サーキットでのラップタイムは6速MT仕様モデルを上回る。
「独自のトラックモードキャリブレーションと10速AT により、アクセルのオン/オフ時には常に完璧なギアを選択している。あなたはレーシングカーのレーサーではないかもしれませんが、このクルマならば、レーシングドライバーの一人のようにシフトすることができるのです」とは、2019年モデルの開発を担当したチーフエンジニアの言葉だ。
アメ車好きの心に刺さる『カマロ ZL1 1LE』の虚飾を排したストイックなデザイン
外観では、太陽光が反射しづらいブラックのボンネットやカーボンファイバー製のリアウィングが目につくが、これはサーキット走行もできるトップパフォーマンスモデルに不可欠な装備だ。ほかにも専用デザインのエアディフレクターなどを備えており、その虚飾を排したストイックな面構えは、アメ車好きの心に刺さりまくるに違いない。
タイヤはグッドイヤーの「イーグルF1スーパーカー」を履き、サイズはフロントが285/30ZR20、リアが305/30ZR20。大径ホイールの隙間から見えるのは、「1LE」のロゴが刻まれたブレンボ製の赤いブレーキキャリパーだ。サスペンションは、路面の状況や速度に応じて瞬間的にサスペンションの減退を変化させ、最適な足回りにしてくれるマグネティックライド。これにも『カマロ ZL1 1LE』専用チューニングが施されている。
室内にはサーキットだけではなく普段遣いにおける快適性や機能性も考慮された。デュアルゾーン式オートエアコン、ヒーター&ベンチレーション付きフロントシート、ステアリングヒーターなどを装備し、オーディオはBOSEプレミアムオーディオシステムだ。
標準の「ZL1クーペ」より約22Kgも軽量化。『トランスフォーマー』最新作も必見!
軽量化についても忘れてはならない項目だ。より薄くしたリアガラスと固定式のリアシート、また軽量になったホイールとダンパーにより、車両重量は標準仕様の「ZL1クーペ」に比べて50ポンド(約22Kg)の軽量化がはかられた。この軽さはサーキットでラップタイムを削るときなどに大きなアドバンテージになることだろう。
余談だが、『トランスフォーマー』最新作は人気キャラを主人公にした初の前日譚で、そのオートボットが『カマロ』ではなく別の黄色いクルマにトランスフォーム(変形)するシーンから始まるという。このクルマ(アメ車?)も人気となるに違いない。
Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C) General Motors
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)