第29話
今回はグロ注意です。苦手な方はご遠慮ください。
『そういう事ならダンジョン外での殺人も許可するわ。そうそう、そういうクズは生きていることを後悔するぐらいまで痛めつけるのが定石だから。』
「…。」
『後報酬は…そうだな。身寄りのない子供とかいたら貰ってきてよ。こっちで育てるから。』
「眷属化込みで、ですか?」
『そこはスキルとステータス次第。と言っておく。』
『鬼の砦』を出た直後にクロキリとの通信結果がこれです。全くあのクズクロキリは…いつか絶対に生きていることを後悔させてやります…。
「ふん。主とやらとの連絡はついたのか?」
私に声をかけてきたのは迷宮内で私に突っかかって来た男です。確か名前は立壁 ツヨシとか言って、役割は私の監視役兼通信役でしたか。まあ、現地では外で待機しているだけですけど。
ちなみに所有スキルは≪視覚共有≫だそうです。
「ええ、つきました。報酬は身寄りのない子供が居た場合ウチで引き取る。だそうです。」
「つまり良い力を持っているならお前と同じでバケモノの仲間入り。そうじゃないなら生贄ってわけか。」
「最良は人のままシンパとして育てられることかもしれませんね。アイツの事ですからそのルートは考えづらいですが。」
本当に最良なのは報酬とは名ばかりに持ち帰った時点で児童養護施設にでも預けてあげる事でしょうけど。
「さて、ターゲットの居場所やら特徴は既に隊長さんから聞いていますし。早いところ行きますか。」
「予想以上に乗る気だな。どうしてだ?」
「子供たちを救うこと自体は私にとっても喜ばしいことだからですよ。」
「そうかい。」
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そして時刻は夜。場所はターゲットとなるバカの居た研究所。
「予想以上に酷いですね。」
『うっ。吐きそうだ。』
そこに広がっていたのは凄惨としか表しようのない光景。
壁は一面赤く染まり、そこら中に攻撃の残滓が残っています。そして積み上がっている死体の大半は子供のものです。
「息のある子は手当してまとめておきましたので、早いところ救急車と警察を呼んだ方がいいですね。」
『それに関しては心配するな。もううちの部隊が向かってる…。最高の部隊だから到着時に息のあるガキの体は全員助かるだろうよ…。』
ここに転がっている死体の殆どは私が殺したもので、残りは自分の使用したスキルの反動に耐え切れずに体が弾け飛んだものです。
「まさか≪洗脳薬≫等と言うスキルがあるとは思いませんでしたね。」
『ああそうだな…。無理やり限界以上のスペックを引き出し、その状態でガキ同士を殺し合わせてスキルを発現させる。聞いてるだけで胸糞が悪くなってくる話だぜ…。』
「救いなのは術者が死ねば効果も切れる点ですね。尤も体は無事でも心はどうなっているか分かったものではありませんが。」
私の足元にはターゲットの白衣を着た中年男性が生きたまま心臓を抉り出される。という死に方で息絶えています。
本音を言えばもっと惨たらしく殺してやりたかったところですが、そんな余裕はありませんでした。なにせ数度どころか一度スキルを使っただけで息絶えてしまうような子供たちが何人も同時に襲ってくるのですから。
「とにかくこれで依頼は完了ですね。報酬の方はまた後日受け取りに…待ってください。隠し扉を見つけました。」
『みたいだな。気を付けてくれ。』
「分かっています。」
私は見つけた扉から隠し部屋に入ります。そこにいたのは9歳程度の生きた
「なっ!?」
『うっ…マジかよ。』
麻酔も使われていないのかその体はビクビクと痙攣を起こし、僅かにでも目を離せばそのまま逝ってしまいそうなほどに生命力が感じられません。
「これは…不味いですね。このままでは保たないです…。」
『ならいっそ…。』
これ以上苦しまない様に殺してやれ。と…、
「いえ…、やれるだけのことはやらせてもらいます…。アレの力を借りるのはこの上なく屈辱ですが。」
『?』
そう。そんなのは…お断りです。それならば人を辞める方がまだマシです。生きてさえいれば幸せになれる可能性はあるのですから!
「スキル取得≪主は我を道に力を行使す≫。クロキリ。お願いできますか?」
『自分では動けない瀕死状態のおかげで捕獲状態と同じように扱われているみたいだな。いいぞ。ただし、そのガキの面倒はお前が見ること。それとペナルティ期間中はウチに籠っとくのが条件だ。』
「分かりました。」
私はここ一月の間にレベルが6に上がりました。しかし、その際提示された習得可能なスキルには良いものが無いと感じ、次回以降に持ち越ししようとその時は考えていました。
しかし今この場にて習得するスキルの名は≪主は我を道に力を行使す≫。眷属専用のスキルであり、主である魔王のスキルを自分の五感を通して眷属のステータスで行使することが出来るスキルです。
代償は魔王がそのスキルで消費するHP,MP,SPの半分を肩代わりし、さらに肩代わりした分は1週間回復しなくなるというものであり、迂闊に使えるようなものでは勿論ありません。
しかし、このスキルがあれば今の状況を打開できる。ならば習得する他ありません。
「では、≪主は我を道に力を行使す≫。」
『おう。≪魔性創生≫!』
「っつ!」
私の中から大量の魔力が抜けていくと共に、子供の下に魔法陣が描かれ、それに伴って子供は人間から霧人へと作り変わって…いえ、生まれ変わっていきます。そして、体が作り変わると同時にバラバラにされた体も再生していき、傷一つない体になります。
『マジかよ…。これがお前の主の…いや、魔王の力なのか…。』
「ええそうです…。ですが予想以上にキツいですね。すみませんが、私はこの子を連れて去りますので、≪視覚共有≫は解除してください。」
『あ、ああ分かった。』
誰かが横にいるような感覚がなくなったところで私は子供を抱えてその場から去りました。