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蝕む黒の霧 作者:栗木下

1:魔王降誕

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第19話

クロキリのターン!裏で実は色々としているのです。

「やったねクロキリちゃん!出番が回ってきたよ!」

『オイバカヤメロー』『それいじょーはいけない』『ガッ!』


 俺自身訳の分からないコントを行ったところで作業開始である。

 まずはリョウとイチコを外に出す。で、この際リョウは表口から命からがら逃げてきましたという風にするため、泥で体を汚し、イチコの使っていた道具を形見として持たせたうえで出す。続けてイチコは死んだ事にするので夜になってからこっそりと表に出す。


 で、イチコの獲得した経験値の分配を再設定を行うのだが、この際本来ならば

俺:イチコ=1:1 → 俺:イチコ:リョウ=2:1:1 にするのだが、折角なので

俺:イチコ=1:1 → 俺:イチコ:リョウ:乱し水蠆=5:2:2:1 にしておく。

 ん?約束はどうしたのかって?逆に聞こう。君たちは何時から俺が約束を守ると勘違いしていた?こちとら魔王ですよ。魔王。約束破りぐらい平気でやりますわい。それにこの程度ならまず気付かれないから。


 次は出立直前にリョウに頼まれていた自宅地下とウチの接続だね。こちらはDPを消費してダンジョンとして扱える区域を広げた上で、第2階層の中心である迷路の上に仕掛けたダクトから繋がる形で作成。迷路ではなくダクトから繋がる形にした理由は迷宮内に入り込んだ人間に発見されないため。リョウとオレの関係性は基本的に秘匿されるべきものだからねぇ。

 ただまあ、リョウの家と繋がる部分は小部屋にしておいて『封技の鉄枷Ⅰ』を一組置いておくけどね。何でかって?ふふふ。言わなくても分るでしょう?ふふふ。



ブーーーーーーーーーー!



 と、どうやら侵入者らしい。ここまででリョウが外に出てから5時間ほど。恐らくはリョウが生きて帰ってきてある程度中の情報を得られたがための行動だろう。もしかしたら、他にも攫われた人が居るかもしれないと予想したとか、スキルを使いこなせるようになったという慢心とかも混ざっているかもしれないがね。

 とりあえず、ダンジョン内の全魔性に侵入から一時間は姿を見せずに近くに来たら周囲を巡回してプレッシャーを与え続けるように指示。で、一時間経過したら容赦なくやれと命じておく。これで沼の中を進んでいた場合は確殺コースだろう。木の上を進んでいた時は…まあ、普通にやらせればいいか。一応保険として霧蚊(ミストモスキート)を第2階層から第1階層に何匹か移しておくけど。


霧蚊ミストモスキート

体長50cm程の虫系蚊型魔性。

耳障りな羽音を響かせながら周囲を飛び回り、獲物が隙を見せた瞬間に接近しすれ違いざまに針状の口を刺して血(HP)を吸収する。血を吸収した後は血から水分だけを分離して周囲に噴霧することによって獲物からの反撃を抑止する。

召喚コスト:一体につきHP,SP各100


 ただ、羽音が五月蠅いんだよなぁ…あいつ等。



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 ああ、やっぱりダメだったよ。あいつ等は沼の中を進んだからな。

 というか、あいつ等はリョウから情報をちゃんと得たのか?情報があれば沼地を進むのは絶対にアウトだという事ぐらい分りそうだし、結局また3組18名逝ったぞ。いや、こっちとしては美味しいけど。

 とりあえずいつも通りの後処理です。



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 イチコが外に出てから5日経過。連絡が来た。ちなみにこの間新たな侵入者は出ていないので、相変わらずの人攫いで経験値を稼いでいる。何か策でも練っているのか?


「ふーん。そっちはそんな事になっているのか。と言うか予想以上に『鬼の砦』の魔王はヒドいな。」

 報告を聞いてまず最初に思ったのがそれだ。うん。いくらなんでも脳筋過ぎる。


『魔王なら最低でもステータスが30を超えているはずですから、あれは知力と頭の良さはイコールではないといういい例だと思います。』

「まあ、知力ってのは要するに魔法系スキルをより効率よく使えるかを表すもので、そういった判断や作戦の立案なんかにはそこまで関わっているものじゃないらしいから、別におかしくないと言えばおかしくないか。というか魔王で30って元々は6ってことだからなw」

 イチコの言葉に思わず少し笑う。正直、ここまで言われる魔王がどんなものなのか一度見てみたいぐらいだ。


『そんなこと分かってます。それぐらいの脳筋っぷりだったという事です。』

「まあいいや。こっちはこっちで色々やっているし。そっちもそっちでもう暫くやってくれ。あっ、最初に言った約束事は忘れるなよ?霧人の事が今明らかになるのは拙い。」

 俺は乱し水蠆の成長具合と現在のリョウの状況を思い浮かべつつ返答する。


『(チッ)分かっていますよ。』

 おい、舌打ち聞こえてんぞ。


「まっ、イチコよ。後2,3週間したら魔王のトドメさえ持っていかれなければ何をしても構わなくなるから期待してな。」

『?』

「その頃にはそこの魔王もダンジョンも用済みってことだよ。魔王が死んだあとダンジョンがどうなるかわからないからそれを確認する意図もあるしな。ああそれと、ダンジョンが潰れたら一度戻ってこい。リョウも交えて報告会をするからな。じゃ、無茶はするんじゃねえぞ。」

 そして、頭の中で戦力増強と経験値稼ぎの試算を出した俺はそう結論付け、通信を切る。しかしこの眷属通信は楽でいいな。



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 さらに二日後。ぶっちゃけ暇である。ちなみにウチの周辺住民には夜間外出禁止令が出たらしい。理由はまあ言わずもがなだな。ウチのせいです。

 と、ここでリョウとの通信をまだしていなかったことに気づいたのでしてみる。


『あら?何で、人間と手を取り合おうと考えている魔王がいないのかしら…?』

 開幕がそれかい。いや、通信に気づいてないなこれは。じゃあ、とっとと声掛けるか。


「そりゃあ、魔王補正で命乞いが出来ないようになっているからな。迂闊に交渉の席に出るとフルボッコなんだよ。」

『!?』

 おお、驚いてる。驚いてる。ちなみに魔王補正の話は本当だ。


「暇だからテストを兼ねて通信をかけてみたぜー。感度は良好みたいだな。じゃ、切るわ。」

 というわけで驚いた様子が見れたので通信を切る。



たっらたっら↑たっら↓たっ↑たー!



「ん?まるでポ○モンの進化BGMのようなものが…これはもしや!」

 通信を切ったところで突如流れ始めたBGMに俺は急いで≪魔性創生≫の画面を開く。そこには…

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