第17話
その光景はまさに戦争でした。
人間たちは急遽築いたと思われる陣地に身を隠しつつ横隊を組み、指揮官の命令に従ってライフルを斉射して子鬼たちを陣地に近づけていません。また、時折ですが≪
対して
正直に言うと、私にとって目の前の光景は予想外です。まさかここまで『鬼の砦』側の頭が悪いとは思いませんでしたから。
「ふう。しょうがないですね。まずは一度人間側を崩して乱戦にしましょう。」
私は≪短距離転移≫と≪霧の衣≫を同時発動し人間側の隊長格の後ろに移動して≪首切り≫を使って一閃。そして相手が悲鳴を上げる間もなく絶命したのを確認し、周りの人間が私の姿を認識しきる前に再び≪短距離転移≫を使い人の目が届かない場所に移動。
「これでまずは一人ですね。」
私の行動により戦況に乱れが生じ、その一点の隙間からゴブリンが陣地にまでたどり着きます。ただ、すぐに障壁系スキルを持った人間が前に出て来たために死者は出ていないようです。
「何が起きた!?」
「分かりません!突然現れて突然消えました!」
「テレポート持ちがいるぞ!探知班はすぐに周囲を走査しろ!」
むう。それほど慌てませんね。私が動くためにはもう少し乱戦になった方がいいのですが…、おまけに探知系スキル持ちもいるのですか。しょうがない。
「探知開始します!スキャ…グッ!?」「ガッ!」「アッ!」
ふう。危ない。危ない。探知班5人の後ろに素早く飛んで心臓と頭を一刺しづつするだけですが、さすがにこの人数相手だと際どいですね。ですが、まだ私の存在を大きく知られるわけにはいきません。と、このままだと人間側が崩れますね。子鬼側の数も減らさなければ。
「(≪霧の衣≫≪短距離転移≫発動。続けて≪首切り≫。)」
「ギッ!?」「ギャ!」「あべし!」
子鬼2匹に魔法子鬼1匹始末完了。一匹妙な断末魔を上げた気もしますが気にしないでおきます。む。この気配は不味いですねボス(脳筋王)が来たようです。人間側のリーダーに進言をしておきましょう。
それにしても感知さえ高ければスキル無しでも気づけるとはどれだけ脳筋なのでしょうか。ステータスを見てみたいですね。
私は≪霧の衣≫を解除しつつ、人波に紛れ込むような形で≪短距離転移≫を発動。≪霧の衣≫を解除してしまえば軍の装備を身に着けている私は人間側に紛れ込めます。
そして、隊長と思しき人にこっそりと近づいて耳元に一言。
「魔王が近づいてきています。今の我々では足止めすらできませんので撤退を進言します。」
で、そのまま隊長さんが返答しない内に私はダンジョン外へ移動します。
なぜ移動を?と思わそうですが、少々子鬼たちを狩りすぎてしまいましたから。それに一人逃げれば、残りの人間達も逃げやすいですから。
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「魔王が近づいてきています。今の我々では足止めすらできませんので撤退を進言します。」
「何者だ!?」
突然聞こえてきた声に私が返答した時。すでにその声の主はいなくなっていた。そして感じる強い力の気配。なるほどこれは確かに勝ち目はなさそうだ。となれば、
「全員撤退しろ!殿は私の部隊が務める!! いいか!落ち着いて退け!これ以上の戦死者は出すんじゃないぞ!」
私は≪指揮≫のスキルを使って全軍に有無を言わせない命令を下す。尤も謎の声が言うところの魔王の気配は他の隊員たちも分かっているようで速やかにしかし慌てずに引いていく。
そして、殿として残った私たちの隊が迷宮の外に出ると同時に咆哮を上げつつソイツは現れた。
「なるほど…。確かにあれは魔王だな。」
私はソイツの姿を見て自分の判断が間違っていなかったことを悟った。
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「くそがあああああああああぁぁぁぁぁぁ!!逃げてんじゃねえぞ!このくぁwせdrftgがぁ!」
俺がダンジョンの入口にまでやってきたとき。入口は部下のゴブリンたちの死体が散乱し、人間たちは撤退を済ませる直前だった。おまけに見た所人間共はほとんど仕留められていない。
「ガアアアアアアアァァァァァ!テメェ等覚えていやがれ!この『統べる剛力の鬼王』様がいつか絶対皆殺しにしてやらあああぁぁぁ!!」
俺は手近な床を踏み砕きつつ、周囲のゴブリン共を威圧するとともにそう叫んだ。
人間の強みはやはり協力プレイによる多種多様な攻めでございますね。