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蝕む黒の霧 作者:栗木下

1:魔王降誕

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第12話

今回は無理やりが嫌な方は回れ右をお勧めする回です。

「……ィ……イチコ……イチコ!」


「あっ、ぐっ…ここは…?」

 私は自分を呼ぶ声に鈍い痛みを放っている後頭部をさすりながらゆっくりと目を開け、ジャラリという音とともに体を起こした。

 ん?ジャラリ?


「良かった。起きたのねイチコ。」

「っつ!リョウお嬢様!」

 目を覚ました私の前にはリョウお嬢様が居た。しかし、その両手両足には鉄枷のようなものが着けられ、鉄枷からは壁に向かって鎖が伸び、一辺5mほどの立方体上の空間が広がるこの場から逃げ出せないようになっていた。

 そして、私も同じだった。


「こ、これは一体…。」

「分らないわ。突然貴方が倒れた後、私も目隠しに猿轡をされた状態で両手両足を抑えられてここまで連れてこられたから。」

 突然倒れた…?そうだ、思い出した。あの時私はリョウお嬢様に声を掛けられて近づいて行ったら…誰かから突然数十発殴られたんだ!

 くそっ、やられた。下手人はどいつだ?どんなスキルを持っている!?いや、それよりもまずはリョウお嬢様を脱出させなければ…!


「リョウお嬢様。少々のご辛抱を!≪短距離転移≫発動!」

 私は鉄枷の呪縛から逃れるためにスキルを使い目の前に転移した…はずだった。なのに私の位置は全く変わっていなかった。これは一体!?


「無駄だよ。」

 そして、スキルが失敗に終わると同時にどこからともなく男の声が聞こえてきた。



■■■■■



  俺の目の前には二人の少女が居る。どちらも美少女と言って差し支えない外見で、

お嬢様と呼ばれている方は色素が薄くて灰色になった髪の毛に白い肌、目もどちらかといえば赤っぽい。もう一人の護衛の方は黒髪黒目な典型的日本人だ背は平均より若干低めか。ん?胸のサイズ?それなりと丘かな…。俺にはそこを気にする性癖はないけど。

 と、どうやら黒髪の方が逃げ出そうとスキルを使ったようだ。だが発動しない。発動しない理由はあの鉄枷にある。


・封技の鉄枷Ⅰ

着用したレベル10以下の人間・魔性のスキル使用を不可能にすると同時に着用者のステータスが閲覧できるようになる枷。

着用者は捕獲状態として扱われる。

創生コスト:4つ一組でHP,MP,SP各1000


 いやー、作ったかいがあったわぁ…。コストがくそ重いけど転移スキルも無効化できるしその価値はあったね。と、声の一つでも掛けるか。


「無駄だよ。」

 二人とも俺の位置が分からなくてあたりを見回す。ああ、そういえば霧状態のまんまだったか。なら形だけは人間になっておくか。


「ここだよ。人間たち。」

「貴様は…何者だ。」

「俺か?俺の名前はクロキリ。このダンジョン『白霧と黒沼の森』の主だ。」

「つまりは魔王さんですか。」

「まっ、そんなところだ。」

 二人とも俺の方を睨みつけてくる。おお怖い怖い。てか、多分だけど信じてねえな。まあ黒一色なだけで外見は普通の洋服を着た大学生だもんなぁ。後でもうちょっと人間形態用に威厳のありそうな服でも考えておくか。

 と、いかんいかん。


「私たちをどうするつもりですか?」

「すぐに開放してくれれば苦しまずに殺してあげますよ。」

「ははは、悪いけど物理的攻撃が利く体はしてねえよ。そして君たちを攫った理由だが俺の眷族になってもらうためだ。」

「…?」「!?」

 眷族。それは≪魔性創生≫で作り出せる魔性の中でもかなり特殊な魔性で、捕獲した人間を素体に改造を施し、主となる魔王の特性の一部を植え付ける形で生まれる。

 具体的な種族は主となる魔王ごとに違うが、眷族に対しては基本的に以下のような特徴がある。


・スキルは人間のころから持っていたものはそのまま受け継ぐ。

・幸運以外のステータスは人間のころの2倍

・HP,MP,SPを本来の値から3倍

・主の特性を表すスキルを習得

・ダンジョン外での弱体化が純粋な魔性よりも緩い(てか人間だったころのステータスに戻るだけ)。

・ランクアップし続けるとその内魔王になる。


 といったものだ。うん。素晴らしい。ちなみに魔王になると俺の眷族ではなくなり、支配からも独立することになるので油断したら自分の元眷族に殺されるなんてこともあるかもしれない。

 まあ、あるとしてもはるか未来の話だがね。


「まっ、俺の安全。お前らの安全のためにもとっとと眷族化はしちまうか。≪魔性創生≫発動!」

 俺のスキル発動宣言と同時に大量のHP,MP,SPが抜け、魔法陣が二人の足元に現れ、光が満ち溢れる。


「キャアアアアァァァァ…!」「お嬢様あああああぁぁぁぁ…!」


 そして、光が収まった後にはうっすらと霧のようなものを纏った二人の少女が倒れていた。

うん。中々にエロいな。

 まあまずはステータス確認っと


---------------


Name:那須 リョウ 

Class:学生 Race:霧人 

Level:1 

HP:186/186 

MP:234/234 

SP:210/210 


Status

筋力 16 

器用 18 

敏捷 18 

感知 16 

知力 26 

精神 26 

幸運 10


Skill

≪治癒≫≪霧の衣≫


Title

≪黒霧の王の眷族≫


--------------


Name:久野 イチコ 

Class:学生 Race:霧人 

Level:1 

HP:258/258 

MP:204/204 

SP:222/222 


Status

筋力 20 

器用 28 

敏捷 28 

感知 28 

知力 14 

精神 16 

幸運 9


Skill

≪短距離転移≫≪霧の衣≫


Title

≪黒霧の王の眷族≫


-------------


…。


 二人とも強いなぁ…。眷族補正舐めてたわ。

えーと、霧人というのは俺の眷族種族みたいだな。特徴は霧のような魔力を纏い、周囲を加湿していること。で、≪黒霧の王の眷族≫は俺の眷族であることの証明。

 ≪霧の衣≫は眷族化に伴ってついたスキルで霧人の特徴を強化・操作するためのスキルで纏っている霧を消して人間のフリをしやすくしたり、霧を濃くして回避能力や火属性耐性を上げたりできるようだ。


「ぐっ…。」

「あうー。」

 ふむ。もう目覚めたか。さて折角なのだし、


「さて、自分たちの状況を理解してもらおうか。」

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