第11話
やっと女の子が出ます。
さて、人攫いからダンジョン内でキルする。ということをこれから始めるわけなのだが、これを行う上で最も気を付けるべきなのは作業をしているところを見つからないことである。
理由?最低でも1レベル上昇するぐらい稼いだ後に見つからないと詰むんだよ。ほぼ間違いなく。
「というわけで、最初のターゲットは消えても不審じゃない不良さんとか一人暮らしのお爺さんお婆さんにするぞ。分かったか?お前たち。」
『『『りょうかーい!』』』『『『やったるでー!』』』『『『あいさー!』』』『イエッサー!』
俺の問いに答えるのは大量のフォッグ達とフォッグの上位種であるスモークだ。その総勢31匹(フォッグ30+スモーク1)。
ただ、ダンジョン外ではモンスターは弱体化するので、31匹いても一度に運べるのは一人だけだと思ったほうがいいだろう。
ちなみにスモークは俺のレベルが2に上がったおかげで呼び出せるようになったモンスターで説明はこんな感じ
・スモーク
身長1m程の悪戯好きな精霊系人型魔性。フォッグの上位種。
煙のような魔力で肉体が構成されており、ステータスが上昇した分だけ悪戯も悪質なものになっている。
召喚コスト:1体につきMP100、HP,SP各10
「それじゃあ、頑張ってこいよー」
『『『ハーイ!』』』
さて、これは第一段階。第二段階のための準備も始めておくか。
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最近、学校の中で妙な気配を感じることがある。正体は分からないがとにかく嫌な感じだ。
ああ、失礼。私の名前は
ん?リョウお嬢様が誰かだと?
リョウお嬢様は本名、那須リョウと言い、お年は私の一つ上で高校2年生。あの日手に入れられたスキルは手をかざした相手の傷を癒せる≪
心優しくお美しいお嬢様はスキルを手に入れられてからは毎日校内で出た怪我人を治し回っていらっしゃり、その心遣いには誰もが涙しているのだ。
もっとも中には治療してもらった事で何かを勘違いしたバカや、手に入れたスキルで暴れまわる阿呆などもいるが、そういう人間は余さず私の手によって病院送りである。
ああ、もちろん私がやったなどという証拠は残していない。お嬢様を悲しませるわけにはいかないからな。
「ねえ、イチコ聞いてるの?」
「えっ、あっ、はい。聞いていますともリョウお嬢様。」
「ならいいけど。それにしても本当にここ最近霧がよく出ているわねー。」
「確かにそうですね…。それに老人や子供の行方不明話も霧に伴って増えたような気がしますね。」
「悲しい話よね。早く見つかるといいわー。」
「そうですね。」
私たちの街でここ一週間で話題になっているのは主に三つだ。
一つ目は先ほどお嬢様が話題に挙げられていた霧で、本来ならこんなに連続して現れるものではない。
二つ目は相次ぐ行方不明事件で、すでに10人ほど人が居なくなっている。被害者は一人身の人間や深夜に外出しているような人間だ。
そして三つ目は私たちが今いる高校のすぐ近くに現れた迷宮X-J2。
未だに一人の生存者も出さず、モンスターが外に出てくることもないこの迷宮に対して国は大層手を焼いている。
国会議員であるリョウお嬢様のお父上も「首都に出現したX-J1よりもはるかにこの迷宮は厄介だ。」と仰っている。本来ならば今すぐにでもこの地から引き払いたいのかもしれないが、面子や他の迷宮の問題などもあってそれも出来ないようだ。
そして、私個人としては今話題になっている話のうち一つ目と二つ目もX-J2が原因ではないかと睨んでいる。
「イチコー?何してるの?早く行かないと遅れるわよー。」
「はい。お嬢様。ただいま参ります。」
まあ、なんにせよ。お嬢様に危害が加えられない内に魔王などという恥ずかしい名前を名乗るような輩にはこの世から退場してもらいたいものだ。
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「いい人材見ーつけた。」
俺はフォッグの目を通して送られてきた二人の少女の後姿を見つつ呟いた。
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