挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
蝕む黒の霧 作者:栗木下

1:魔王降誕

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
6/157

第5話

ダンジョン解放です。

 その日、世界中の人々が驚嘆し歓喜し恐怖した。


 驚嘆は1年前に突如として世界各所に出現した如何なる方法、それこそ某国が血気に逸り放った核ミサイルをもってしても傷一つつけることが出来なかった球体。通称“結界”がその形を大きく揺るがせたために起きた。


 驚嘆に続いた歓喜は結界の揺らぎが大きくなり、徐々にその形を崩し消え去っていくために起きた。


 そして恐怖は形を崩していく結界の中から現れたものによって起きた。


 なぜなら結界の中から現れたのは“醜悪な鬼たちが蔓延る砦”であったり、“天を衝くほどの勢いで燃え盛る山”や“頂上が霞んで見えないほど高い塔”、“氷の薔薇で作られたドーム”、“瘴気としか称しようのない煙を吐き出す大穴”などであったからだ。

そして、結界の中から現れたダンジョンの一つに“異常なほど濃い霧に包まれた森”があった。



--------------


「いやー、ついにダンジョン解放かぁ…。一年って長かったなぁ…。」


 俺は人間形態で薄靄狼をモフモフしながら感慨深げに≪迷宮創生≫の俯瞰画面を見る。

 というか、本当に一年間とか長すぎだから!(自分としては)効率よくダンジョンを作っていったら半年ぐらいでやる事なくなって後の半年はひたすら自分の能力を鍛えるか、薄靄狼とキャッキャウフフするぐらいしかやる事がなかったよ!


 というわけで一年かけて作り上げた今のうちのダンジョンスペックはこんな感じ



--------------


ダンジョン名:白霧と黒沼の森

支配者:クロキリ(蝕む黒霧の王)

所属モンスター:フォッグ、薄靄狼、沼飛魚、乱し水蠆、etc.

概要:ダンジョン全域に濃い霧(3m程先までしか見えない)と沼地(平均水深50cm 最少10cm 最大2m)それに建物と植物の混合体である壁道樹(破壊不可オブジェクト、足場や壁として使える。ちなみに白霧と黒沼の森では外壁もこれを使用)が設置されているダンジョン。

沼地の一部は水深以外の部分でグレードアップされている場合も存在する。


ダンジョン入口にエアロックが設置され、同時突入可能な人間の数を6人までに制限しており、後続の人間が突入するためには以下のいずれかの条件を満たす必要がある。

・前に突入した人間が全滅する。

・前に突入した人間が入口から1km以上離れると同時に突入から一時間以上経過している。

また、突入した人間が脱出するためには以下の条件をいずれか満たす必要がある。

・支配者の撃破

・入口から1㎞以上離れる事に加え突入から一時間以上経過している。


累計突入者数:0

累計撃破数:0

評価:不明(突入者がまだ存在しないため)


--------------


 うん。初めてにしてはいい感じじゃないか?ダンジョン全体でモンスターと罠の特性が一致しているしこれなら早々抜かれることは無いと思うんだ。例え抜かれても人間たちがスキルの事に気付かない内は負けることはほぼないと思うけど。

そうそう、突入者制限に関しては入口のエアロックにも記載してあるよ。でないとなかなか人が入れない理由が分からなくてグダるからね。


 ちなみにダンジョン内には宝箱なんかも一応置いてあるよ。中身は薄靄狼の毛皮(布団になるものが欲しくて皮だけ召喚とかできるかなー?と試したら出来た。高級羽毛布団みたいにモフモフできる。)とかだけど。


 まあ、そんなことはさておいてこれからの長い人生…いや、魔王生を送る上でいくつかの目標を決めてみた。魔王補正で不老化しているっぽいから目標は大切だよね。

1、死にたくなるまでは死なない

2、謎の幼女ボイス(俺を魔王化した奴ね)に仕返しする

3、ダンジョンから離れられるようになる


 1については言わずもがな。折角の不老なんだから生きられるだけ生きたいじゃない。ちなみに魔王補正のせいで人間に命乞いをしても100%失敗します。敵対者に「お前は絶対に殺してやらー!」と思わせる隠しスキルが魔王という職業には含まれているんだってさ。

 2はまあ、ね。一応人生を終わらせてくれた相手だからねえ?それ相応の仕返しはしたいのですよ。

 3は魔王補正の中でも特に面倒なやつで、魔王は自分の管理するダンジョンの外に出れないそうだ。(手下の魔性はステータスが大幅にダウンするが出ることは可能)うん。外に出れないっていうのはやっぱりツラい。けれど条件を満たせば外に出れるようにもなるそうだから頑張りがいもあるというものだ。


 とまあ、目標はとりあえずこんな感じ。いずれにしても大量の人間とかをやって自分のレベル上げが必須なのは間違いない。目標の数に関してはその内増えるかもしれないとも思うけど。自分のレベルをカンストするまで上げるとか、周辺地域を自分の支配下に置くとかさ。

 ちなみに人殺しとかを躊躇う気なんて全く無いです。一年もあればそれぐらいの覚悟の一つや二つは付けられますよ。



閑話休題



「さーて、ダンジョン解放に伴って外にいる人間もスキルに目覚めたわけだけど、最初に突入してくるのはどんな奴かな…っと?」


 俺は開放に伴って追加された≪迷宮創生≫の機能であるダンジョン外部周辺を見る機能を使って1年ぶりの結界外の様子を確認する。


「ふむふむ。やっぱり最初に…というか何かしらの事態が起きない限りは軍が出てくるよな。そりゃあ」


 スクリーンに映し出されたのは結界から数百m程離れたところに立てられた大量のフェンスとトーチカ?だったかな確か。ばかりで、かつて存在していたはずの住居は殆ど無い。

 そして、今現在ダンジョン周辺には多くの軍人が集まってこちらを警戒している。


「まあ当然の光景で対応だよなぁ。ただまあできれば後先考えずに突入してくれると嬉しかったなぁ。うん。こうなったら向こうがやる気を出してくれるまではとりあえず待機だな。1日待っても来る気が無いようなら適当なモンスターを外に出して人間を何人か無理やり中に引き込めばいいだろ。」


 というわけで薄靄狼を霧形態になって全身でモフモフしつつ待つことにした。


「あー、癒されるわ…。」

04/08文頭一文字空けの改稿をしました。


06/10 一部改稿

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。