第1話
よくあるチュートリアル話です。長ったらしいかもしれませんが数話ほどお付き合いください。
「痛ぇ、何が起きた…?」
俺は周囲を見渡す。場所は変わらない。さっきまで俺がいた大学の空き教室だ。
けれど何かがおかしい。全体的に暗い気がする。それにこの時間なら大学の何処に居てもそれなりに周囲から人の声や物音が聞こえてくるはずなのに何の音もしない。
『素養のある人間の魔王化・スキル配備・運命の不確定化・各種法則の調整完了しました。只今より各魔王様に対してのチュートリアルを開始します。』
頭の中に先程までの幼女ボイスとは全く違う機械的な音声が流れてくる。
『初めに、私は魔王様方へのチュートリアルをするために産み出された存在で以後は「ヘルプ君」とお呼びください。』
ヘルプ君ね…。できれば元に戻る方法とか教えてほしいものなんだけど…、
『では、魔王化についての説明をさせていただきます。魔王化は私の主が素養のある人間から無作為に選択した方々に施されたもので、解除の方法はありません。お諦めください。
また、何故貴方がたが魔王化の素養を持たれていたかに関しては私は知りません。なので、これに関しての質問はされても無駄です。』
…。悪い冗談だと思いたいけど事実なんだろうなぁー
既に人間だったころの名前とか思い出せないし。
『では、魔王化の影響について説明させていただきます。
まず魔王になった方々には必ず与えられる二つのスキルがあります。』
こうなれば出た所勝負だ。とりあえず聞けるだけ話は聞くとしよう。
『一つ目は≪
このスキルは初回発動時は自分を中心に発動し、半径5km内を迷宮化します。2回目以降に発動した場合は自らの作ったダンジョンの構造を変化させることができます。
ダンジョン作成の詳しいイロハについてはチュートリアル終了後に各自で私にお聞きください。
なお、此方で魔王化に伴い初回発動は既にさせていただきました。それに伴い迷宮内にいた人間は全て迷宮外に出され、迷宮と外の間には一年間維持される結界を張らせていただきました。これにより迷宮内外への移動が不可能になっています。』
なるほど、周囲から音がしなかったのはこれが原因か。というか結界ってまるでファンタジーだな。いや既にこの状況そのものがファンタジーか。
『二つ目は≪
このスキルは魔王様方に忠実な魔性。所謂モンスターを生み出すスキルです。現段階では各魔王様の特性に合わせた一種類の魔性しか生み出すことが出来ませんが各種条件を満たすことにより生み出すことが出来る魔性の種類は増えます。
詳しいことはチュートリアル終了後に私にお聞きください。
そして、これら二つのスキルに加えて各魔王様方に一つずつ固有のスキルが与えられています。
なお、まだチュートリアルの途中なので、グダり防止のためいずれのスキルも使えませんのでご注意を、』
あー、うん。やっぱり使おうとした奴いるのね。気持ちは分かるけどさ。
『では続きましてステータスの説明に移らさせていただきます。『ステータス オープン』と仰ってください。』
ステータスがあるのか、これだとファンタジーというよりRPGだな。と、説明に遅れないようにしないとな、
「『ステータス オープン』」
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Name:蝕む黒霧の王
Race:蝕む黒霧の王 Class:魔王
Level:1
HP:1600/1600
MP:1850/1850
SP:1750/1750
Status
筋力 40
器用 55
敏捷 55
感知 45
知力 60
精神 70
幸運 8
Skill
≪迷宮創生≫≪魔性創生≫≪蝕む黒の霧≫
Title
≪蝕む黒霧の王≫
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うーん。基準は分からないけどステータスが高い気がする。あと、幸運が低い気がする。
『まだ、ステータスを開いておられない魔王様もいらっしゃるようですが、時間短縮のため説明を進めさせていただきます。
まずNameはそのまま貴方の名前です。なお、人間の頃の名前は既に失われておりますのでご了承を。Raceは種族です。見てわかるように人間以外のものになっています。それが今の貴方方の正体です。
続けてClassについてですがこれは所謂職業というものです。ただし、魔王の場合は魔王で固定となっており、職業効果で本来の値からHP,MP,SPは十倍、幸運以外のステータスは五倍になっています。また先程上げたスキルも職業効果の一種であり、これら以外にも様々な恩恵と制約が与えられています。
HPやMPについては説明不要ですね。HPが0になったら死ぬ。MPが0になれば気絶する。とても単純な仕様です。SPというのはスタミナの事でして、こちらも0になれば気絶します。それぞれの詳しい仕様は各自で聞いてください。
なお、平均的な一般人はHP,MP,SPが40。他のステータスは10となっています。』
とんでもない補正がかかるんだな。さすがは魔王。
というか、俺の幸運は一般人より下なのか。まあ魔王にされた時点で運がないのには納得もするけど。それにHPとかが一般人の十倍どころじゃない値になっているのは…他のステータスが上がっているせいか?
後、ヘルプ君の口調が段々とおざなりになってきている気が…?いや、主があの幼女ボイスなのを考えれば納得するけど
『Skillは先ほど説明したとおりです。固有スキルに関しては各自で把握してくださいませ。Titleは称号の事です。今までどのような特別なことをやってきたかを表すだけの欄なので特に気にしなくてもよろしいでしょう。
なお、Skillに関しては各項目に触れれば詳細が表示されますのでご安心を。』
なるほどなるほど、ならチュートリアルが終わり次第まずはスキルを確認するべきだな。恐らくは俺にとって…、というか魔王という存在にとっては最後の命綱になるかもしれないものだろうし。
『最後に魔王である貴方方にはこれから一年をかけて自らの迷宮を作っていただくことになるのですが、一年経った後はどうぞご自由にご行動くださいませ。』
ん?どういう事だ?
『世界を滅ぼすも、人間を支配するも、そして我が主の楔から逃れ復讐するも全て貴方達の自由という事です。それでは全ての皆様方。これにてチュートリアルを終了いたします。これからの魔王生をどうぞご自由にご堪能くださいませ。』
HP,MP,SPはステータスから割り出されており、魔王補正の十倍は最後にかかるため数字が大きく跳ね上がっています。
04/08文頭一文字空けの改稿をしました。