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【社会】

慰安婦問題に迫るドキュメンタリー 映画「主戦場」めぐりバトル

映画「主戦場」の内容に抗議する藤岡信勝氏(左)ら=30日、東京都内で

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 旧日本軍の慰安婦問題に迫るドキュメンタリー映画「主戦場」をめぐり、場外バトルが過熱している。四月に封切られるや、ネットを中心に賛否が噴出。出演した保守系論客らは三十日、都内で会見を開き「だまされた」と抗議した。日系米国人で来日中の監督側は六月三日に反論の会見を開くという。 (小倉貞俊)

 「主戦場」は、日系米国人のミキ・デザキ監督(36)が、上智大大学院に在学中の二〇一六年から、慰安婦問題について発言している日米韓の論客ら約三十人にインタビューした作品。「慰安婦は二十万人いたか」「性奴隷だったのか」などの論点で、対立する主張を交互に紹介しながら問題に迫る構成だ。

 元慰安婦の支援団体や研究者だけではなく、慰安婦問題に否定的な立場からも「新しい歴史教科書をつくる会」の藤岡信勝副会長や米国の弁護士ケント・ギルバート氏、ジャーナリスト櫻井よしこ氏、杉田水脈衆院議員らが出演し、持論を展開している。現在、都内をはじめ全国で上映されている。

 三十日に会見したのは、藤岡氏ら三人。藤岡氏らは「大学院生だというデザキ氏から、学術研究と言われたので協力した。だまされた」と批判。「編集が中立ではなく、発言が切り取られている。公平に発言の機会が与えられていない」「グロテスクなプロパガンダ映画」などとし、保守系出演者七人の連名で映画の上映差し止めを求める抗議声明を出した。法的手段も検討しているという。

 作品中では複数の保守系出演者から差別的な発言が続出する。会見ではこの点もただされたが、発言内容の訂正などはなかった。

 同日、デザキ監督は公式サイトで「彼らの発言は、彼らの自由意思。一般公開も考えている、との合意書を交わしている」とコメント。配給会社によると、大学院に卒業制作として提出し、院を修了した。

 慰安婦問題の激戦地となりつつある作品について映画監督の森達也氏は「慰安婦問題を取り上げる映画は多いが、主張が対立する人たちが同じ作品中で語る例はほとんどなく意義がある。ドキュメンタリーは作家性もあり、完全な中立にはなり得ない。対象者が主張したいことと、監督が聞きたいことが食い違うのは当然だ」と話した。

 

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