穏やかなるかなカルネ村 作:ドロップ&キック
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色々と”
ガゼフ達の一行がカルネ村を去るのを見送った後、ダークウォリアーは広場に控えているエンリたちに待機するように伝え、イビルアイを連れ立って家へと戻った。
待つことしばし……
「待たせて悪かったな」
再び姿を現したのは白磁の体に豪奢なローブを纏い、この世のあらゆる財宝すら凌ぎそうな黄金の杖を携えた姿……
村人の信仰と信奉と敬愛を一身に集める紛う事無き”
降臨したその姿に、一同はあまりに自然に無音で跪いた。
神には礼拝が必要なのを、カルネ村の住人は良く理解していたのだ。
「畏まらずとも良い」
見た目の恐ろしさと相反する優しげで穏やかな声に村人は頭を上げる。
そしてアンデッド創造で何体かのスケルトンを呼び出した。
受肉した姿ではなく本来のあるべき姿……オーバーロードで創造するのは、やはり作ったアンデッドに高性能化のボーナスがつくからだろう。
加えて死霊魔法に限らず、魔法行使をメインとする場合はコチラの方がしっくりくる。
「少し友人に会いに行ってくるよ」
「もしかしなくても”
そう聞いたのは共に来ていた仮面を外し、愛らしい素顔に白と黒のシックな色合いだが、妙に少女趣味なフリフリミニスカ+ニーソ姿の……というより、どうも『ご注文はうさぎですか?』に登場するシャロこと桐間紗路が愛用している、ハーブティー専門喫茶店”フルール・ド・ラパン”の制服っぽいそれに身を包んだイビルアイ改めキーノである。
どうでもいいが、魔法でウサ耳(ロップイヤー)を生やせばより完璧になるだろう。何が完璧かは知らないが。
細部のデザインが異なるので、おそらくは未だにアイテム限定でアクセスできるナザリックにストックされていたメイド服なのではないだろうか?
げに恐るべしは、在りし日のアインズ・ウール・ゴウンである。それとも1/3のメイドをデザインしたホワイトブリム氏の執念だろうか?
本当に蛇足だが……キーノが好んで着る私服は、やたら可愛いものが多い。ついでに二次元作品に出てくるような制服系も多い。
無論、彼女の趣味でもあるのだろうが……本質的にはかつて国堕としならぬ”骨堕とし(主に性的な意味で)”の際に用いられた
仮面の魔法詠唱者”イビルアイ”モードの時はともかく、旅の時代も人目がないとき(仮面をつける必要がないとき)は戦闘服(?)に身を包み、手変え品変えモモンガに迫ったようだ。
もちろん、下着も可愛い系で統一され、パジャマにいたっては黒猫の着ぐるみ、通称”くろぬこぐるみ”だ。
下着もパジャマも夜はすぐに脱がされてしまうのだが。
ちなみにエンリは神官服メインであまり持っていない私服も清楚系、ただし下着は反動からか
「ああ。ツアーならきっと、”
「違いないな。法国への釘刺しにでも使うかな?」
お骨様は《ゲート/転移門》を開き、懐かしき……とは言えない頻度で会ってはいるが、この世界で一番古い友人の元へ向かうのだった。
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それは人の手で創るには不可能なほど巨大で、荘厳な空間……いや神殿だった。
そしてこの空間に相応しき存在が横たわっていた。
アーグランド評議国永久評議員、八欲王の災厄を封じ込めた遺産の管理者……現存する最強の竜王にして、”
その名を”ツァインドルクス=ヴァイシオン”、通称”ツアー”。
この古代の息吹が残る静謐な空間にふと”
本来、多重の結界があるこの部屋に直接転移できることはない。
だが、数少ない例外が存在する。
それはツアーが認めた者……とても覚えのある魔力反応に、ツアーは思わず巨大な顔を綻ばせた。
「やあ、久しいって程じゃないけど来てくれて嬉しいよ。我が友よ」
「ああ。俺もだよ、我が友よ」
出現した骸骨……モモンガは、とてもとても優しい声だった。
ツアーとモモンガ、その出会いは今からおよそ100年前まで遡る。
そう、いわゆる”100年の揺り返し”に繋がる物語……
それは普通の人間の一生分よりなお長く続く、骨と竜の友情の物語だった。
読んでいただきありがとうございます。
繋ぎ……吸血姫が骨と繋がるのに色々やらかした話とか、過去と現在を繋げる話とかでした(^^
そして、いよいよ物理的にも大物のツアーが出てきました。いや、ようやく出せましたよ~。
何度か出てきた「モモンガがこの世界の住人として生きる」決断をする、もっとも影響を与えた”古い友人”の片割れがこの竜ですから。
という訳で次回から少しだけ過去篇が入ります。