【特集】フルーツ農園"副業ビジネス"警察が強制捜査 被害者は全国で1500人にも
2019年05月30日(木)放送
「ネットでクレジットカード決済で商品を購入すれば利益を上乗せして返金する」などとうたい、副業ビジネスを展開していた岡山県で農園を経営する「西山ファーム」で返金が滞り全国各地で被害の訴えが相次いでいましたが、警察がこの会社の強制捜査に乗り出しました。実態解明は進むのでしょうか。
数十億円規模の被害か
警察は5月28日、岡山県で観光農園を運営する「西山ファーム」の岡山支店や東京の関連会社など約十数か所を一斉に家宅捜索した。保証金の名目で違法に金を集めたとして、出資法違反の疑い(預かり金の禁止)が持たれている。
西山ファームは農園のほか果物を使ったカフェを経営する一方で、別の“副業ビジネス”を手がけていた。その仕組みはこうだ。まず、西山ファームが指定する通販サイトでマンゴーなどの果物を購入し、クレジットカードで決済する。すると、払い込んだ額に数パーセントの利益を上乗せして全額返金されるというものだ。また、顧客に果物が届けられることはなく、西山ファーム側は「果物は海外の販売ルートを使って転売している」などと説明していた。このようなビジネスは3、4年ほど前に始まったというが、今年に入ってから「金が支払われない」などのトラブルが大阪や愛知など全国で相次いでいた。
「正直許せない、ありえないことだと思います。(副業を紹介してくれた)知人自体ももともと信用がある方だったし、(西山ファームが)岡山で有名な会社というところもあって、そこは信用して自分はスタートした。まさかそんな会社がそんなことをするのかと思ってもみなかった」(約500万円の被害を訴える男性)
別の副業ビジネスもあわせると、被害は約1500人、数十億円規模とみられている。
一体何が?農園を訪問
モモやイチゴの栽培を手がける西山ファームで一体何が起きたのだろうか?取材班は5月中旬に農園を訪ねた。
「ここの人間は正直誰も、何が起こったのかも(知らない)。ここは日々、イチゴ狩りだったりモモ狩りのお客様の対応をして。もともとここは道の駅みたいに何もドアとかもなくシャッターだけでやっていて、つい1、2年前にこういうおしゃれな雰囲気になってきた」(西山ファーム従業員)
従業員の男性は、数年前に社長の息子が副社長に就任した後、問題の副業ビジネスが始まったと話した。
「ここが何かをしたっていうことではなく、岡山オフィスと名古屋オフィスが主導でやっていた」
Q.今回の事業は副社長が?
「上層部がやっていたこと」
民間の調査会社(東京商工リサーチ)によると、西山ファームは2015年の売上高は約9600万円だったが、2年後の2017年には約38億円と40倍に急増している。取材班は副社長に会うため、岡山市内の事務所へと向かった。
Q.取材している中では副社長がご存知だと聞いている。副社長とつないでいただくことは難しいですか?
「難しいですね」(西山ファーム従業員)
Q.それはなんでですか?
「まず、ここにはいないということと、いつどこにいるのかもわからない」
関係者が語る実態「架空の売り上げを増やしていた」
その後、ようやく口を開いたファームの関係者はこう語った。
「お金をぐるぐる回しているだけだった。実態は空クレジットを切り、架空に売り上げを増やしていた」(西山ファーム関係者)
この関係者によると、西山ファームが指定した通販会社の大半がペーパーカンパニーで、顧客が支払った金はこの実態のない会社を経由してそのままファームに入金された後、再び顧客に払い戻すという行為が繰り返されていたという。
さらに取材を続けると、副業ビジネスに深く関わっていたという人物から匿名を条件に話を聞くことができた。
Q.実態は西山ファームしか会社はないですよね?
「そうです、当たり前ですよ。大前提、大前提。結局、西山ファーム1社がいろんな会社を作って、別会社としてちゃんと(取り引きが)成り立っているよと、そういうふうに見せる。それだけですね。目的はクレジットカードを決済させること」(西山ファーム関係者)
当初、顧客は知人らだけだったが、人づてに参加者を増やしていったという。
「もっと決済額増やせ、もっと人集めろと、どんどん増やしていくつもりでしたね。やっている主犯は副社長。西山ファームの農園の人とかカフェの人とかは全くこんなことやっているとは知らないですね。結局、副社長が決済代行会社の担当者に入れ知恵されて」
男性によると、通販会社はペーパーカンパニーであるためクレジットカード会社の審査が通らない。そこで、間にカード決済の手続きを代行してくれる「決済代行会社」と呼ばれる会社が複数入っているのだが、このうちの1つの担当者が副業ビジネスの仕組み作りに関わっていたというのだ。
副社長を直撃…「健全な副業ビジネスだ」
警察による家宅捜索の前日(5月27日)、取材班はようやく当の副社長に直接会うことができた。
「商品は確実に存在していて詐欺や出資法違反にはあたらず、健全な副業ビジネスだ。不正取引を疑う匿名の通報がカード会社に寄せられ決済代行会社からの入金が止まり、返金が滞ってしまった。副業ビジネスの仕組みは決済代行会社の担当者と一緒に考えた。責任をとって副社長の職はゴールデンウイーク明けに辞任した」(西山ファーム副社長)
一方、この決済代行会社は「正常な取引と認識して決済サービスを提供しておりました。西山ファームの副業ビジネスの構造に関与した事実は一切ございません」と真っ向から否定した。
「愛知県警の捜査員が7時間以上にわたる家宅捜索を終えて出てきました」(記者リポート・5月28日/岡山市内)
捜索が行われた日、西山ファームは「警察の捜査が入ったことについては真摯に受け止め、全面的に捜査に協力する」とコメントを出した。警察は押収した資料を分析し、巨額の資金集めの実態解明を進める方針だ。