穏やかなるかなカルネ村   作:ドロップ&キック
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ニグンさん登場前に、少しだけ過去話を。
今のモモンガ&ダークウォリアーの関係性なんかを少し開放。





第18話:”幕間・ビーストハントの舞台裏、あるいはダークウォリアー誕生秘話”

 

 

 

いきなりではあるが……ここで少し昔話をしよう。

モモンガとキーノが何故、カルネ村に定住する10年以上前からダークウォリアーとイビルアイという別の存在に扮してまで竜王国に出向いていたのか?

 

コネ作りや旅の資金繰りとかも色々とあったが、真の目的は”レベリング(レベル上げ)”の為だ。

ここで当然の疑問だが、ユグドラシル的に言えばLv100……カンストまで大分余地があったキーノはともかく、元カンストプレーヤーだったモモンガに果たしてレベリングの余地があったのか?ということだ。

 

その答え、いや原因はモモンガがこの世界に漂着してから得た能力、”完全なる人化”の()()()だ。

これはそもそも、とある”トンデモアイテム”に端を発するのだが……だが、これを語るにはしばし時が必要だろう。

なぜなら、これにはモモンガがこの世界で出来た”最初の友人達”、鈴木悟の名を捨て「この世界で、この世界の住人として生きる意味」を教えてくれた友人との物語があるのだから。

 

だが、この”完全なる人化”によりモモンガの身に起きたことは今でも説明できよう。

人化により、確かにモモンガは幻術で見た目を誤魔化すのではなく、ちゃんと受肉し人間となれた。

食う飲む寝る、そして女を(その気があるなら男も)抱ける……もしかしたら、子供すらも作れるかもしれない。何しろ排泄以外は未使用で消え去った”()()”が生えてきたのだから。

 

だが、お骨様として生きるときに無くしてしまった物があるように、受肉し人化することで無くしてしまった物があった。

それが”種族LV”だ。

 

モモンガの100Lvビルドの内訳は、種族Lvが40で職業Lvが60だった。

つまり人間になるため40Lvを丸々失い、レベル的には出会った頃のキーノと大差なくなってしまっていた。

 

これにはモモンガは非常に焦ったらしいが……ふと悪いことばかりではないと思い直した。

種族Lvが失うと同時に種族特性も失われたが、「もしかしてまた別の自分にリビルドできるチャンスかもしれない」と一念発起。

たっち・みーを筆頭にかつて憧れたアインズ・ウール・ゴウンの前衛職の猛者達を目指すことに決めたのだ。

 

最初の友人達が繋いだ縁で、モモンガはかつての冒険は過去となったキーノと巡り合い、そして文字通り「自分を、いや()()()()()()()()する旅」に出た。

 

実はビーストマンがまつわるエピソードは、所詮その一篇に過ぎない。

即位前のランポッサとの出会いもその一つだし、また同時に友人から頼まれた「ユグドラシル由来の物品の調査と探索」も同時にこなした。芳しくはなかったが、結果が全くなかったわけじゃない。

 

そして、かつての憧れに手を伸ばすため、モモンガはある縛りを自分に課した。

それは”魔法職としての自分を封印”すること。実はモモンガ、種族が変わったにも関わらず総合Lvに対応はしてしまうが、アンデッドしか使えないはずの魔法も普通に使えていたのだ。

だが、自分を鍛えなおすことのためにそれをあえて封印、魔法の使用を最低限にすることがダークウォリアーの誕生へと連結された。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

その旅路は、決して愛する妻(キーノ)の胸のように平坦な物ではなかった。

モモンガは、自分になかった強さを貪欲に求めた。時には『能力を下げる代わりに獲得経験値をあげる首輪(チョーカー)』まで装着して、だ。

人間種しか取れないものも含めた多くの前衛職Lvを取り、また武技の数々さえも覚えた。

多くの場所を巡り、多くのものと出会い、多くの強者と戦い……そして多くの別れを経験した。

 

そして人化したモモンガは、人が誰でもそうであるように歳を重ねた。

本来、それは人の身では長すぎる旅路だったが、幸いモモンガを受肉させたトンデモアイテムは指輪の形をしており、それを外すことでまた本来のスケルトン・ボディに戻ることができ、種族Lvも回復した。

指輪を外したら経過した肉体の老化がリセットされ、”アンデッドの時間”が戻ってくることを知ったとき、キーノは狂喜した。

もう自分は一人では生きられないのがわかっていたから。

暖かさに慣れすぎ、200年以上前に心臓と一緒に止まったはずの胸のときめきに身を任せるのは、心地よすぎたのだから。

 

人間とオーバーロード、言い換えれば生と死の狭間を揺り動く稀有な生き様は、様々な変化をモモンガ自身に齎せた。

終末の世界で純粋な人間と生きていた時間より遥かに長い時をこの世界で生きた……この世界で人として生きた経験と記憶の蓄積が、骨になったからと言って無くなる訳はない。

生と死を繰り返した内面は円熟し、そして人外としても新たな変化……いや()()が起きたようだ。

 

 

 

だが、生憎と今はそれを語る時ではない。

ただ言えるのは虚構の世界(ユグドラシル)から消えぬまま零れ落ち、この世界(リアル)に漂着したときのモモンガと今のモモンガは同じではないと。

変化のない、死者であるがゆえに不死のアンデッドの身が本質であろうとも、モモンガは生きているのだから。

生きているということは、否応なく変化し続けるということだ。

終生の伴侶となるだろうキーノとの長い旅路を終え、カルネ村と言う安住の地に落ち着いた今でもきっと、彼は愛すべき人々の中で日々変化を続けているのだろう。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

ダークウォリアー(モモンガ)

種族Lvを人化で喪失したため、この世界にいて新たに入手した職業(クラス)Lv

ウォリアー:Lv10

ストライカー:Lv5

エアライダー:Lv3

マーセナリー:Lv2

ソードマスター:Lv5

ソーサルナイト:Lv5

クラフトマン:Lv5

聖騎士(パラディン):Lv4

従来の職業Lvと合わせ総合Lv99。実はオーバーロード時(Lv100)と比べ1Lvだけ弱体化している。逆に言えばまだわずかに”伸びしろ”がある。

 

備考

種族Lvとのコンバート扱いで、お骨様(オーバーロード)状態の時は上記の39Lv分の職業レベルはオミットされる(だが習得した武技はそのまま使える)。

本来、格闘家が持ちやすいストライカーを獲得したのは無手でも多く倒したからと思われる。

エアライダーは空中戦の経験から、マーセナリーは傭兵家業(竜王国で冒険者登録する前は傭兵として行動することがままあった)をこなしていたからだろうと推察。ソーサルナイトは”魔法騎士”の意。

クラフトマンは、旅の途中で実験がてら色々アイテムをいじってたからだろうか?

闘技場へや武術大会に出てはいないためデュエリストやチャンピオン、また軍の指揮は取ってないためコマンダーやジェネラルはとれていない。

聖騎士は……憧れと、命を奪うと同時にそれだけ多くの命を自らの剣で救ってきた証。

 

『ですよね? たっちさん』

 

また、本人の性格にあまり影響は出てない気もするが、カルマ値も中立~善になってる可能性アリ。

ダークウォリアーなんて暗黒騎士っぽい名を名乗ってるのに、行動から聖騎士が取れてしまっているのが、このシリーズのモモンガ様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。

予想を的中させた方が多かったのに驚きましたが、ビーストマンの間引の真の理由は、

『人化で無くなってしまう種族Lvを穴埋めするためのレベリングのため』

でした(^^
モモンガ様に集中して書きましたが、ずっとそれに付き合ってたキーノ嬢も同じくレベルアップを果たしてるため、原作よりずっと強かったりします。

いや、ホントこの二人の旅は色々あったみたいですよ? 血腥い思い出も、甘酸っぱい思い出も。



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