穏やかなるかなカルネ村 作:ドロップ&キック
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「エンリ、ゼロ、デイバーノック」
「「「ハッ!」」」
名を呼ばれた三人は、改めて頭をたれる。
「いけるな?」
シンプルな、そしてそれだけに信頼を置いた言葉に、
「「「もちろんですっ!!」」」
三人は嬉しかったのだ。
実力を疑われてるわけじゃない。
エンリは、満面の笑みを浮かべていた。
いの一番に呼んでもらえる、信頼してもらえる……それがたまらなく嬉しかった。
ゼロは、
だが、グッと一際固く握られた拳が口よりも雄弁に彼の喜びと覚悟を表していた。
デイバーノックは、既に皮膚はなく骨だけとなった顔なので表情はわからない。
しかし、かつて眼球のあった場所に爛々と輝く紅光は一層鮮やかな色を燈し、彼の熱意を体現してるようであった。
生身であろうと骸骨であろうと、この三人の思いは究極的には一つだ。
そう、ただ救済されるのも甘やかされるのも励まされるのも教えを請うのも導かれるのも、他も全部全部やってもらった。
ただ与えられるだけでは満足できないのだ。
きっと彼は、『お前たちからも俺はたくさんのものを貰ってるし、十分すぎるほど返されてるさ』というだろう。
それが嘘偽りのない言葉だということも……そんなものは百も承知だ!
だけど仕方ないのだ。どうしようもないのだ。
その衝動は止まらない、止められない。だって自分たちは願ってしまった、望んでしまったのだから。
縋るのでも追いかけるのでもなく、
”あの偉大なる御方の横に並んでみたい”
と……
「ネムとハムスケには私から《伝言/メッセージ》を入れておいた。あの二人のことだ、介入するタイミングを見誤ることはないだろう」
強くなればなるほど、見えてくればくるほど、どれだけ遠くにあるのか理解してしまう大きな背中……
メッセージの魔法一つとってもそうだ。
キーノはともかく、未だに自分たちは上手く使いこなすことができない。
「しかし、たった三人で陽光聖典を相手取るのか……? その三人が猛者だというのはわかるが」
「更に二人、いや正確には一人と一匹が加わる。それでも足りないというのなら……」
ダークウォリアーはガゼフに振り向き、
「私が後詰めだ。戦士長殿、これなら問題ないだろう?」
☆☆☆
「心配しないで欲しいな。この四人と一匹は、英雄の領域とやらに片足を突っ込んでる以上だ。私が名誉にかけて保証しよう」
それを聞いていた三人の反応は……まあ、言うまでもないだろう。
ダークウォリアーとイビルアイ、いやモモンガとキーノという規格外の二人を除けば、レベル30前後かそれ以上にあるのは、上記の四人と一匹に加えて現在村にいないブレイン・アングラウスとグ……人呼んで”カルネ村七星剣”だ。
勿論、このネーミングはモモンガである。
実は名づけられた本人達も何気に気に入ってる名は、伊達でも酔狂でも名前倒れでもない。
近年、十分な実力があると判断された者達から順次、毎年の”
無論、最年少のネムも例外ではない。
基本、主戦力のモモンガかキーノが引率で、7人中2~3人がチームを組んで転移魔法で竜王国に渡り、入れ替わり立ち代り対処に当たる。
また、本当に敵が大規模だった場合は全員で対処する場合もあるが……それでも最低でも総数万単位になるビーストマンの遠征に対しては絶対的な少数といえる。
しかし、その絶望的な数の差に対しても、いやそもそも普通の人間の10倍の難度を誇るビーストマンに対しても彼らは彼女らは臆することなく、こうして生き残っている。
それを支えたのは、いや土台になってるのは実力だが、精神的な支柱はモモンガやキーノに対する信頼であり、信仰であり、崇拝であり、憧憬であり……それらの想いが同じ戦場で戦うたびに強くなり混ぜ合わさり、語弊を恐れず言うなら生まれた精神的混合物”
そのような修羅場を越えてきた”カルネ村七星剣”にとり、この程度の人数差がなんだというのだろう?
天使使いの法国精兵? それがどうした。こちらを食料と看做してないだけマシだ。
二足歩行の獣が群れを成して腹を満たすために人を喰らう……そのような原初の恐怖が想起される地獄絵図に比べれば、想定される敵など優しい物だ。
「では、諸君……」
元来、身内には過保護気味な筈のダークウォリアー、いやモモンガは胸を張り告げる。
「遠慮はいらぬ。存分に暴れてくるがいい」
読んでいただきありがとうございました。
ようやく総称が出せたカルネ村の強者、5人と一匹と一体。
そしてやっぱりネーミングがモモンガ様だった件について(^^
モモンガ:「他にも候補はあったが、一番シンプルなものにしてみた」
どうやら長い名前はキーノ嬢にダメ出しされた模様。
それにしても……そりゃビーストマンの間引きに参加してれば、原作よりも強くなるのも当然か?