穏やかなるかなカルネ村   作:ドロップ&キック
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調子に乗ってはじめての一日3回更新。我ながら何をやってんだか(笑
今回も新キャラ登場っす。サブタイと一見関係ないですが……

中身が怪物や人外じゃなくてもいいじゃないか。美少女だものの byみつ○風




第13話:”追撃部隊”

 

 

 

その日、ガゼフ・ストロノーフは焦っていた。

帝国兵と思われる集団に、辺境の開拓村が次々と襲撃され、その討伐命令が自分に下ったのだ。

 

とはいえ、同時に胡散臭さも感じていた。

帝国兵の行動の不可解さ……盗賊化した元帝国兵ならともかく、正規の帝国兵ならこの時期に王国、それも大して戦略的価値もない村を襲撃するなどメリットがなさ過ぎる。

加えて、

 

(『たかが帝国の雑兵ごときに”王国五宝物”は過ぎたもの』か……)

 

帝国兵が越境し王国の村々が襲われているのは言うまでもなく一大事、早急に事態の収束を図るべきなのに、貴族達はそれを阻害するように横槍を入れてきたのだ。

だが、同時に打開策もあった。

 

(ラナー姫には感謝の言葉もないな)

 

そう、出立する前日。ふらりと「クライムの顔を見に来ました」という()()でラナー王女がお忍びで屋敷に訪ねてきたのだ。

クライムとは、ラナーが示した改革の一つ”孤児救済策”を打ち出すきっかけとなった街で拾った子供で、今は剣士見習いとしてガゼフに住み込みで鍛えるよう依頼していた。

蛇足ながら残酷な現実を一つ書いておこう……クライムは、絶望と言う言葉しか知らない生活から救ってもらった恩義と強い憧れをラナーに感じているが、ラナーにとってクライムは「きっかけの子供であっても、救済した多くの子の一人」という意識が強い。

 

さて、そんなラナーが何しに来たのかと言えば……

 

『ちょっとした餞別ですよ。これで少しは戦いが楽になるはずです♪』

 

そう手渡されたのは……見かけこそそこいらの古物商が二束三文で売ってそうな古ぼけた、ありきたりの武器や防具だったが……

 

『なっ!?』

 

ガゼフは思わず絶句した。

歴戦の戦士であり、平民でありながら王国戦士長まで上り詰めた彼は、手に取るなりそれが巧妙な偽装だと気がついたのだ。

希少素材で作られ、丁寧に魔化や魔法付与が施されたそれらの装備は、見かけに反してガゼフの経験からしても紛れもなくとんでもない逸品だった。

 

『”貴方に恩が売れる(こんなこと)もあろうかと”、用意しておいてよかったですわ♪』

 

『? そのフレーズはなんです?』

 

()()曰く、異国の”様式美”だそうです。わたくしも実際に使う機会があるとは思いませんでしたが』

 

クスクスと笑うラナーはあくまで愛らしく、

 

『あっ、それと……』

 

彼女はウインクしながら、

 

『出所は詮索しないでくださいね? ラナーとの約束です♪』

 

悪戯っぽく微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

ガゼフは部下と共に馬を駆り、ひた走った。

辺境の村々は悉く襲撃され、惨い有様を呈していた。

仕方なくガゼフは多いとは言えない部下を生き残った村人の護衛に裂くしかなかった。

戦力の分散は愚作だとわかっていても、他に策はなかった。

文字通りに半減した部下を引き連れ、また駆け出すが……

 

(たしかこの先にある村は……)

 

「カルネ村、か……」

 

王国でも、一定の知識水準以上の者には名の知られた村だった。

曰く、

 

・ラナー王女の個人直轄領

・数々の特産品があり、人口からは考えられない富(税収)を生み出す村

・まるで砦のような鉄の扉をつけたレンガ造りの門があり、村をぐるりと丸太塀が囲んでいる。

・村民のかなりの数が冒険者

・六大神、中でも死の神を信仰してると言う噂

 

とまあこれを聞くだけでも特徴のありすぎる村だったが、ガゼフが頭を悩ませるのはそこではなかった。

 

『あっ、そうですわ』

 

それは帰り際にラナーが残した言葉、

 

『もしもカルネ村を訪れることがありましたら、”く・れ・ぐ・れ・も”粗相のないようにお願いいたしますわね?』

 

と念押しされたのだ。

詳しくは聞かなかったし、聞ける雰囲気ではなかった……というか、笑顔で凄むと言う器用な顔芸を披露したラナーに気圧されてしまった。

邪悪でもなく歪んでもないが、なんかおっかなかった。

未だにラナーに憧れるクライムがいなくてよかったとガゼフは心底思う。

あれは”百年の恋も冷める”なんて生易しいものではなく……

 

(小便を漏らし、立ったまま気絶しかねんな……)

 

歴戦の自分でも背中に寒気が走ったあの気迫、質こそ違うがかつて御前試合で対峙した天才剣士をガゼフは思い出した。

 

 

 

兎にも角にもガゼフとその戦士団は進路をカルネ村に向ける。

もう周辺には襲撃されてない村はないのだから。

 

当然、ガゼフは気づいていない。

自分たちは既にネムとハムスケに発見され、カルネ村に伝令が飛んでいることを。

 

果たして彼らは、カルネ村にとって”歓迎されるべき客”なのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでくださりありがとうございました。

クライム君哀れ(イキナリ
大人気のガゼフさん初登場!……ですが、ラナーが全てを持っていった気がするのは何故だろう?

それにしても……ラナー様、もしかして戦士長を取り込もうとしてたりして(えっ?



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