相伝「新しい時代へ」
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福井発住民“かん口令”成長見守る おおいに珍客 クロヅル越冬
おおい町芝崎の水田で、昨年十一月から今年三月にかけて、国内ではなかなか見られないクロヅルの幼鳥一羽が越冬した。県自然環境課によると、県内での観察記録は今回が初めて。住民らは、あぜ道への立ち入りや会員制交流サイト(SNS)などへの写真投稿を自粛。幼鳥がいることを隠して環境を守り、北帰行まで静かに見守った。 (山谷柾裕) クロヅルは羽を広げた時の翼長が約一八〇センチで、全体的に灰色だが、飛翔の際には黒い風切り羽が目立ち、首が黒いのが特徴。シベリアなどで繁殖し、中国などで越冬する。世界で約二十五万羽が生息する。日本野鳥の会自然保護室長の葉山政治さん(62)によると、日本には年間十羽前後しか飛来せず、そのほとんどが鹿児島県出水市のツルの大規模越冬地に紛れ込み「迷鳥」という扱いとなっている。葉山さんは「若い個体なのでナベヅルやマナヅルなど日本で越冬する種類に交じって飛んできて、はぐれたのだろう」と推測する。 昨年十一月上旬、地元の男性が「サギより大きい、見慣れない鳥がいる」と町に連絡。日本野鳥の会や専門家への照会で、頭にひよこのような濃い黄色が残るクロヅルの幼鳥と分かった。稲穂の刈り取りが終わった水が残る田んぼで過ごし、ドジョウやタニシを探して食べていた。 人間が近づくと水田を対角線上に歩き去る用心深さ。一方で、たまに上空を旋回する以外は、飛び去る気配もなかった。「少しでも居心地をよくしてやろう」と、芝崎区長の吉岡隆繁さん(74)ら住民が連携。犬の散歩コースを変えるなど、静かに暮らせる環境を整え、“かん口令”も敷いて、隣接区の住民とともにクロヅルが越冬していることをひた隠しにした。もともと集落の奥にある水田だったこともあり、あぜ道は自然と立ち入り禁止に。地元の愛鳥家も「幼鳥の存在が知られたら、カメラマンが集まって鈴なりになってしまう」と、撮影した写真の発表を控えたことで、静かな暮らしが続いた。 三月二十五日ごろ、北へ飛び去るころには、黒々とした羽をたたえる大人の姿に成長。吉岡さんは「五カ月も毎日見ていると愛着も湧く。草を空中に上げて遊んだり、かわいらしいところがあった」と振り返る。「昨冬は雪が積もらなかったから、たまたま居てくれたのでは」と語りつつも、来年の飛来に期待している。 今、あなたにオススメ Recommended by PR情報
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