@chablis777
シャブリ

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♪~
(仲)君のお兄さんが東洋の大杉社長に会ったらしいんだよ。
(咲太郎)孤児院から北海道に渡って本当に 苦労したやつなんです。
奥原なつ 奥原なつです!
(信哉)バカだな 咲太郎は…。余計なことしなけりゃなっちゃんが入れたかもしれないのに…。
♪~
(なつ)お兄ちゃん…。
こんばんは… あっ なっちゃん いたの?信さん。
(亜矢美)いいとこ来た。一緒に飲みましょうよ。
あっ いや… あの 実は さっき咲太郎が 警察に捕まって…。
えっ?どういうこと!?
お兄ちゃん 何をしたの!?
なっちゃん 落ち着いて。別に 悪いことをしたわけじゃないんだ。
悪いことしてないのに警察に捕まるって どういうこと?
いや あの… 捕まったっていうか取り調べを受けたっていうか…。
サンドイッチマンをやってたんだ。
それで 人だかりが出来て交通の妨げになったみたいで…。
許可を取ってなかったらしい。
でも まあ 警察を出てるからここに戻ってきてると思ったんですけど…。
で どこで?その サンドイッチしてたって…。
歌舞伎町みたいです。歌舞伎町?
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
買って下さい 私の真心。
売って下さい あなたの恥じらい。
(タップする靴音)こよい花開く 夢のひととき。
踊る阿呆に 見る阿呆。
同じ阿呆なら 朝まで踊って下さいいとしいあの子と。(タップする靴音)
さあ夢のスウィートホームへ帰りましょう!
(レミ子)煙カスミが出演してま~す!
♪~
(カスミ)♪「ロイド眼鏡に燕尾服」
♪「泣いたら燕が笑うだろう」
♪「涙出た時ゃ空を見る」
♪「サンドイッチマン サンドイッチマン」
♪「俺らは街のお道化者」
♪「呆け笑顔で今日も行く」
なっちゃん…。
お兄ちゃん…。おう 何だ? なつ。
こんなとこに来んな お前。
何してんの?
この子 店の子?
違うよ この野郎! この子に触んな!
何だ 客に向かって その口は!
(レミ子)あんたは まだ客じゃないでしょうが!
すいません! すいません すいません…。
すいません…。チッ!
信が なつを連れてきたのか!すまん…。
ちょっと 仕事の邪魔しないでよ!
お兄ちゃん!
おい なつ ちょっと来い。
一体 何なんだ?
分かんない…。
お兄ちゃんが 何やってんのか私には 全然分かんない。
何 言ってんだよ。何も悪いことはしてないよ。
なつ お前がつらいのは分かるけどもう忘れろ。
あんな会社 入らなくてよかったよ。
えっ?おい 咲太郎。
お兄ちゃんは 本気で そう思ってるよ。
俺たち 孤児院にいたような人間はいつまでたっても差別を受けることがあるんだよ。
咲太郎 お前自分が何したのか分かってんのか!
いいから 信さん。
お兄ちゃんは 今 何やってんのさ?
だから見てのとおり サンドイッチマンだよ。
鶴田浩二の歌が はやってから人気があるんだよ。
それが お兄ちゃんのやりたいこと?
全然分かんないよ。
何が分からないんだ?
マダムに 借金を返すために働いてるんだろ。
お前に 少しでも 肩身の狭い思いをさせないために働いてるんだ。
私のためなの?
だったら やめてよ!
私… タップダンス踊ってるお兄ちゃん見て何だか 悲しくなったよ。
だって お兄ちゃん 昔と ちっともやってること変わってないんだもん…。
焼け跡で進駐軍に向かって踊ってる時とやってることおんなじじゃない!
昔は楽しかったけど…今は悲しかった。
(レミ子)ちょっと待ちなさいよ!あんたは 北海道で生きるために牛の乳搾りしてたんでしょう?
こっちだってね生きるために 人前で踊ってんのよ!
バカにしないでよ!バカになんかしてません。
お兄ちゃんのやりたいことが分からないと言ったんです。
だから…俺は ムーランルージュを復活させたいんだって言ったろう。
それだって 亜矢美さんのためでしょ!
お前に 何が分かるんだ?
分かるよ!
ムーランルージュを復活させるために人にだまされて お金を借りてその肩代わりをマダムにさせたんでしょ?
ねえ それじゃ人に迷惑かけてるだけじゃない!
お兄ちゃんが 自分のために真面目に働いてるなら 何してもいいの…。
もう人のために頑張らなくていいんだから!
もっと 自分のために頑張ってよ!
もう人のことは ほっといてよ!
なつ…。
おい そこで何してるんだ?
あっ いえ 大丈夫です…。えっ?
大丈夫ですから…。女の子泣かせて 何やってんだ!
おい… おい ちょっと来い!
♪~
ゆうべは すいませんでした。
(光子)警察から連絡があった時は本当に驚いたわ。
すいません…。
まあ 座って。
お兄さんと 何があったの?
私には 兄のことがよく分からないんです。
分からない?
それは しかたないわよ。ずっと離れていたんだし…。
いつも 人のことばかり考えてて兄自身は ちゃんと生きてないみたいな気がしてて…。
それは 私のせいでもあるんです…。
私が 東京に来たせいで兄は ますます 昔のまま自分のために 生きられなくなっているのかもしれません…。
咲ちゃんは 自分のことより人のために生きるのが好きなのよ。
そういう人もいるのよ。
私の亡くなった祖母はねムーランルージュのことはあんまり好きではなかったけど咲ちゃんのことだけはなぜか気に入って かわいがってたのよ。
先代のマダムがですか?
それで ムーランルージュが潰れた時咲ちゃんを この川村屋に雇おうとしたの。えっ?
咲ちゃん すっごく喜んだんだけど結局 それを断ったわ。
断ったんですか…。
岸川亜矢美さんって ダンサーのことを母親みたいに思ってるでしょう?はい。
その人の居場所を作ってやることが今の自分の夢だからって。
だから 何としてもムーランルージュを復活させたいんだ。
そのために 自分のやれることは何でもやるってね。
その話は 兄からも聞きました。
つまり そういうやつなのよ 咲ちゃんは。
バカなところがあるけど人を思う気持ちは純粋すぎるぐらい まっすぐなの。
その咲ちゃんが ずっと 心の中で本当は 何を求めているのか…。
その答えが あなたなんじゃないかしら。
(ドアが開く音)
(野上)マダム…あの マダムにお会いしたいと…。
(亜矢美)失礼いたします。
あら… お久しぶりです。亜矢美さん。
マダム ゆうべは 咲太郎が大変お世話になりました。
いいえ 私は何も。
どうぞ これを お納め下さい。
何でしょう? これは。
咲太郎が お借りしておりましたお金です。 1万円だけですが。
あなたから受け取る筋合いはございませんよ。
いや どうぞ…。今は これで精いっぱいです。
受け取れません。お受け取り下さい!咲太郎の借金は 私の借金。
(光子)これは 私の責任ですから!(亜矢美)いえ いえ いえ…。いくら マダムが…咲太郎に恋をされていたからといっても咲太郎のしたことは許されることじゃありません。
ちょ… ちょっと待って下さい!何か勘違いしてるようですけども…。
いいんです! 誰だって 恋をしちゃったらもう しょうがない。
してませんから!恋でしょ… 何てったって 恋! うん!
でなかったら マダムのような方が咲太郎の保証人になって下さるなんてううん 不自然…。してない!
なつさん あなたに聞きたいことがあったんだ。はい…。
してませんから!分かってます 大丈夫。
なつさんあなた 戦死されたお父様の手紙を持ってらっしゃる?
はい…。
その手紙の中に 家族の絵が描いてあったって聞いたんだけど。
はい。 絵がありました。うん。
咲太郎は その絵を思い出しながら自分でも 家族の絵を描いて私に見せてくれたの。
はい。
えっ…。
これ お兄ちゃんが描いたんですか?
(亜矢美)あいつは 自分で絵を描いて自分の心の支えにしてきたんだわ。咲太郎が あなたにどんだけ迷惑をかけてるか…。
だけど あいつは 今でも そうやって一生懸命 生きてんだよね。
それだけは 分かってあげて。
そっくりです…。
お父さんの絵に この絵 そっくりです…。
♪~
なつよ… 咲太郎をどうか許してやってくれ。
♪~


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