【ドラニュース】【龍の背に乗って】2度流れた阿知羅の「運」 ドームで取り戻せ2019年5月29日 紙面から
28日の正午に決定、発表された雨天中止。12時20分に出発するはずだったバスは、空のままナゴヤドームを出た。東海ラジオで実況予定だった大沢広樹アナウンサーは、本社に向かい夕方の番組を担当した。大きく業務が変わってしまったのは、バスの運転手と大沢アナだけではない。 「天気には勝てないですね。自分は1軍に定着しているわけでもローテーションに入っているわけでもないので複雑ではありますが・・・」 先発予定が吹き飛んだ阿知羅は、淡々と自分の運命を受け入れた。どんなときも彼のヒゲはぴくつかないが、僕なら延々と泣き言を言う。なぜなら、彼の先発が飛ぶのは2度目。今季の雨天中止も2度目。前回(5月14日)は大野雄が翌日にスライドすることで、結果的に阿知羅が登板機会を失った。つまり、2度とも雨にたたられたのは阿知羅なのだ。 野球選手には技術と体力はもちろんだが、僕は運も必要だと思っている。彼らはグラウンドに立たないことには、何も証明することはできないからだ。忘れられないのが全盛期の井端弘和の言葉だ。彼は肉体的負担の大きい遊撃手で、フルイニング出場を続けていた。 「僕が痛いと言えば、誰かが代わりに出るんです。大活躍するかもしれない。でも、出させなければそうはなりません。だから僕は痛いとは言わないんです」 井端はこれを「隙」だと言った。目の前に「隙」を落とせば誰かが拾う。5月5日にプロ初勝利を挙げた阿知羅だが、右手親指をほんの少し痛めたことがきっかけで次の登板が延期された。上がるはずのマウンドで清水や勝野もプロ初勝利で続き、雨、雨・・・。念のために書くが痛いのを我慢しろなんて思っていないし、阿知羅のケガに落ち度はない。ただ本物のレギュラーは「隙」を見せないし、逃さない。この先は14試合、ドーム球場が続く。逃がした運を取り戻すマウンドは、今度こそ流されない。 (渋谷真)
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