| (続き) 本文の「疆域」の対となる「日本全図」は、それこそ日本の「疆域」に属する領土が全て描かれた全図だ。この全図には海洋領域を現わす斜線が引かれていて、赤色で国別境界線が表示されて「最高地」、「高地」、「低地」に分けて彩色されている。また、本州・四国・九州を中心に経緯線の外に位置する「北海道」、「千島諸島」、「大隅諸島・琉球諸島」だけでなく「小笠原島」が部分図として描いてある。朝鮮と近い東海(「日本海」)には「対馬」、「隠岐」、「佐渡」が名前と共に描いてあるが、鬱陵島と独島はその位置に「北海道」と「千島諸島」の部分図が入っているので表示されなかった。だが「八丈島」は真っ赤な点線で「伊豆」に属すると表示され、わざわざ「琉球諸島」部分図の空間を確保しながらも描いてある(注26)。したがって、鬱陵島と独島は「千島諸島」の部分図のためでなく、日本の領土と認識されなかったために表示されなかったものと判断される。 ⋅ このような岡村の独島認識は、「日本総図」と同様に『新撰地誌』2の訂正再版に初版とは少し違った形態で載せられた「日本全図」においても確認することができる。この全図は初版と違って経緯度線が追加され、海洋領域を現わす斜線はなくなり、右側下段にあった「大隅諸島・琉球諸島」、「小笠原島」などの部分図の上に左側にあった「千島諸島」が配置されて「小笠原島」の部分図はその左に移されて、「北海道」部分図が中央の地図に移動してその位置には朝鮮の一部と東海全体が姿を示した。編集上の変化で地図の大きさは「比例尺750万分の一」とで若干小さくなったが、日本の全ての領土が表示されたのだ。しかしこの「日本全図」にも鬱陵島と独島はその位置が表示される空間ができたが描かれていない。したがって、岡村が二島を日本でなく朝鮮の領土と見なした事実は、初版よりも改正再版の「日本総図」と併せて「日本全図」においてより一層明確になったということが分かる(注27)。 (注26) 岡村増太郎 『新撰地誌』 2 p41∼42の間 (注27) 岡村増太郎 『新撰地誌』 2 1887(訂正再版) p41∼42の間。 参考だが、筆者が所蔵する訂正再版本(1887)では初版本の 「日本全圖」がそのまま掲載されてもいる。 地図 1「日本總圖」 (『新撰地誌』 1 1886) 地図 2 「日本總圖」 (『新撰地誌』 1 1887) 地図 3 「日本全圖」 (『新撰地誌』 1 1886) 地図 4 「日本全圖」 (『新撰地誌』 1 1887) 地図 5 「山陰山陽及南海道之圖」 (『新撰地誌』 2 1886) 地図 6 「亞細亞」 (『新撰地誌』 3 1886) このように、岡村が鬱陵島と独島を日本領土と見なさなかったという事実は、初版の「日本全図」と「日本総図」を比較して見ればはっきりと現れる。「日本総図」では日本の位置を周辺国家と関連して把握するために隠岐の左側に朝鮮東海岸の二島を描き入れ、「日本全図」では日本の疆域だけを正確に表示するために二島を除いたまま隠岐だけを表示したと判断されるためだ。さらに、二つの地図で全て日本の領域あるいは疆域は彩色された反面、朝鮮などの外国領土が彩色されていない点を勘案すれば、鬱陵島と独島は日本でなく朝鮮の領土という事実が良く現れる。 このような岡村の日本領土観は、万国誌に該当する『新撰地誌』 3の「亜細亜」の地図により一層はっきりと反映された。この「亜細亜」には琉球諸島から対馬を経て北海道と千島諸島を含む日本の国境線が鮮明に引かれているためだ。ところが、日本の領土を表示した国境線には隠岐は含まれているが、目で見ても独島は明らかに除外されている。鬱陵島と独島は描かれていないものの、「日本総図」と同様にその位置に朝鮮領土であることを間接的に表示する斜線が引かれている(注28)。したがって、「日本総図」、「日本全図」、「山陰山陽及南海道之図」、「亜細亜」などの地図、そして外国と国境を接する島々や隠岐の付属島が列挙されたに関わらず鬱陵島と独島が一度も叙述されなかった本文の内容を互いに比較・総合して調べれば、誰でも鬱陵島と独島が朝鮮領土という事実を簡単に理解できる。 特に『新撰地誌』は日本文部省から「文部省検定制小学校教科書用書」として検定を受けた教科書だったために、独島は朝鮮領土という事実は岡村だけでなく日本文部省も認めたことになる。併せて、独島を日本領土から除外したまま日本国境線を表示した岡村の「亜細亜」地図は現在まで知られた「文部省検定制」を受けた教科書の中で最も時期が早いという点でもその意義が大きい。 (注28) 岡村増太郎 『新撰地誌』 3 文學社 1886 p15∼16 <コメント> この時期、日本の政府だろうと地理学者だろうと、別に今の竹島のことを「日本の領土だ」なんて意識していたわけではないし、海図に載っている航行注意物ではあるとしても、それを地理教育上特記すべき「島」というほどの土地と認識していたわけでもないだろう。だから、これらの教科書に竹島が描かれていないのは当たり前のことですよ。 だから、ここに取り上げられている指摘はどうでもいいことなのだが、細かいことを一つ言えば、地図6「亜細亜」についての赤字部分の説明は果たしてそうなのかな。今の竹島が描かれていないのは事実だが、「その位置に朝鮮領土であることを間接的に表示する斜線が引かれている」のですかね? 竹島の位置は国境線のごく近くだと思うのだが、朝鮮の周囲の斜線はそこまで及んでいないのではないか。 そもそも、実際は竹島という岩礁の存在を抜きにして国境線を引いてあるのだから、それが竹島のどちらを通っていても竹島の領有権判断を証明するものにはなりませんね。(隠岐と鬱陵島の中間を国境線だと考えた場合には、竹島の位置は朝鮮側に入ってしまう可能性は高い。) |
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