日韓近代史資料集

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2. 岡村の日本領土・隠岐認識の背景
岡村は1882年に処女作である『小学地誌字引』を執筆した。18728月に日本で「学制」が公布された後、地理教育は学生たちに教科書の文章を読ませたり内容を暗記させたりすることに注力し、そのために教科書の名称に「字引」、「字解」等がついた補助教材が出版された。「字引」、「字解」は教科書の本文に出て来る郡、村、山、川、海湾、島嶼などの名前を抽出して読む方法を書いたり[読仮名]、用語の読み取りと語義を分かりやすく解説した注解を付けたものだ。また「物産」あるいは「産物」という項目では本文に記載された産物の名前が発音が書かれて羅列されている(6)。『小学地誌字引』は南摩綱紀が1880年に発刊した『小学地誌』の「字引」だ。例えば、『小学地誌字引』の「隠岐国」には「四郡[知夫、海部、周吉、越智]知夫里島[知夫郡]……附属[スキソウ]」と記されている(7)。したがって、岡村の日本領土と隠岐に対する認識は『小学地誌字引』の底本である『小学地誌』を根拠に間接的に調べることができる。
岡村が『小学地誌字引』を執筆した理由は、『小学地誌』が当時文部省が発行していた代表的な地理教科書としてその内容を信頼したためだと判断される。
文部省は、「学制」の公布後である1874年に小学校地理教科書を広く普及するために、まず『地理初歩』(1)、『日本地誌略』(4)、『万国地誌略』(3)3部を刊行して全国に普及させた。続いて、文部省は、1879年に新しく「教育令」を公布して歴史と共に地理を一つの教科として独立させ、1881年に「小学校教則綱領」を用意して小学校地理の内容を新しく規定した。この綱領によれば、地理は第4学年で学校近辺の地形から次第に世界地理の総論、日本地理の大要、58道の地理を、5学年で残りの日本と外国地理の大要を習うというものだった。文部省はこの綱領を用意するのと同時にそれに見合った地理教科書を開発して地理教材の基準としようとしたが、その教科書が正に『地理初歩』、『日本地誌略』、『万国地誌略』38冊の内容を精選して小学校授業に適切な形態で総合再編集した『小学地誌』(3)だった。したがって、この綱領に適合した文部省発行の『小学地誌』は、当時の代表的な地理教科書として広く普及しただけでなく、以後発行される地理教科書の体裁と内容を決定する基準になった(8)
 
 
(6) 中川浩一 『近代地理敎育の源流』 p8687

(7) 岡村増太郎 『小学地誌字引』1 梅原亀吉 外 1882.10 p31。この他にも『小學地誌』に関連して三宅少太郎『小学地誌字引』 益智館 1881.2 ; 大島東陽 編 山崎静山 校 『改正小学地誌字引』 1 青琳堂 1881.10 ; 松原清三郎 『小学地誌字引大全』 1-2 岡田辰之助 外 1883.2 ; 三吉道保 『小学地誌復習問答』聚珍社 1883.10などが出版された。

(8) 海後宗臣 等編 「所收敎科書解題」 『日本敎科書大系』 15(近代編 地理1) p628629 ;「地理敎科書総解説『日本敎科書大系 近代編』 17(近代編 地理3) p601 ; 東京書籍株式会社社史編集委員会編『近代敎科書の変遷』 p150152

 
 

『小学地誌』 1 では、日本の位置に関して、「亜細亜洲東部の帝国で、四大島及び数多くの小島を合わせた総称だ。海を間に置いて[外国と]相対するが、北が露西亜で西は支那である。」と簡略に記述されている。これと対になる「日本全図」は、経緯度線が引かれた基礎の上に日本を中心に「朝鮮」、「樺太島(サハリン)」と「支那」、「台湾」の一部で構成されているが、当時の日本領土が道別に彩色された反面、外国領土である朝鮮と「樺太島」などは無色だ。また「千島列島」、「小笠原諸島」、「琉球(先島)」、「対馬」、「隠岐」など日本の国境地域の島々は名前と共に表記されているが、経緯度上で竹島(鬱陵島)松島(独島)は含まれる空間があるのに描かれていない(9)。すなわち、独島は日本領土と認識されていなかったのだ

『小学地誌』 2 の「山陰道」には「北は海に瀕する。」と、「隠岐国」には「四島を合わせて一国であり、四郡に分かれる。……知夫里島、中島、西島を島前と呼び、北の一島を島後と呼ぶ。前後の間は互いにほぼ二、三里離れている。全島には岬湾と岩礁、断崖が多い。……附属の小島はおよそ180[個が]ある」とそれぞれ叙述されただけで、鬱陵島と独島は取り上げられていない。これの対になる「山陰道図」には国別に彩色されて重要な地名、山名が記されているが、鬱陵島と独島は除外されたまま隠岐までだけを描いている(10)。同じ本に載った「西海道図並琉球図」、「北海道図」に経緯度外に位置する「與那國島」、「千島列島」が別途の部分図として表示された事実から推測すれば(11)、鬱陵島と独島は山陰道の範疇に属していなかったことが分かる。したがって、『小学地誌』の本文と『日本全図』、『山陰道図』などを見れば、自然に「竹島」と「松島」は日本領土から除外されたと判断される。
 
(9) 南摩綱紀 『小学地誌』 波號 1, 文部省, 1880 p8, p1112の間
(10) 南摩綱紀『小学地誌』 波號 2, 文部省, 1880 p7p12p1213の間

(11) 南摩綱紀 『小学地誌』 波號 2, p3536の間p3738の間

 
 
考だが、『小地誌』 3の「図」では日本の領土がっ赤に彩色されたが、鬱陵島、島だけでなく隠岐もやはり描かれていない(12)これと連して、南摩1874年に『日本地誌提要』を根幹として執筆した小校地理科書である『内地誌略』に隠岐の管轄範囲の経緯度が明記されて竹島と松島が述されたという点は注目に値する。彼は、「かつて海経歴して、今その目耳聞したところに基づいて『日本地誌提要』として考証して『内地誌略』を執筆したが、『日本地誌提要は、最近、正院地誌課において編纂して各府県に送って訂正したもので、事審確、坊本私著の類ではない」とその理由を明らかにしている。また、緯度にしても「いまだ詳確のを見ることはできなかったが、世の中に刊行されたところの新古諸について訂し、海岸は伊能氏の図及び英両国の測量官が同撰して[作った] 1870年の[]などを主とした」という原則を提示した(13)
『内地誌略』1 に載った「地全図」では日本領土が別に彩色されたが、「朝鮮」と「樺太島」は無色だ。また千島列島、小笠原諸島、琉球など境地域の島の名前は表記された反面、鬱陵島と島は緯度上に空間があっても描かれていない(14)。そして『内地誌略』3に載った「山陰道図」も国別に彩色されているが、隠岐までが描かれているだけで鬱陵島と島は除外されている(15)。これら二つの地は『小地誌』の「日本全図」、「山陰道図」と比較して見れば、ただ地形がそれほど精巧でなく描かれて地名が簡略に記されているだけで、その形態はほとんど似ている。
 
 
 

(12)南摩綱紀『小學地誌』 波號3 文部省 1880 p910の間

(13)南摩綱紀『内地誌略』 1 羽峰書屋 1874 「凡例」 p1

(14)南摩綱紀『内地誌略』 1 後ろ部分

(15)南摩綱紀『内地誌略』 3 羽峰書屋1874 後ろ部分

 
 
さらに『内地誌略』 3 の「国」には「北緯約3550分余から3630分に達して、西620分から640分余に達する。……嶋は松嶋その他小嶋およそ183[周吉郡沿海75嶋、隠地郡沿海43嶋、知夫郡沿海45嶋、海士郡沿海16嶋○此国の西北に当って松島・竹島がある。土俗相伝えるところでは、隠地郡福浦港から松島へ海路およそ6935丁、竹島へ海路およそ1004丁で、朝鮮までおよそ13630丁という。]」と記述された(16)。この内容は、島の数を183個と記録した点が違うだけで『日本地誌提要』とほとんど同じだ。しかし「隠岐国」四郡の島の個数を合わせれば『日本地誌提要』と同じように179個だ(17)。特に目につく点は、「隠岐国」の管轄地域の極北が「3630分」と明示されていて、そこに属する「その他小嶋」に松島(独島)、竹島(鬱陵島)が含まれなかったという事実だ。すなわち、南摩は『日本地誌提要』を根拠としたにも拘わらず、経緯度上で「隠岐国」の管轄地域から松島と竹島を除いたのだ。これは、筆者が調査した範囲内で隠岐の経緯度を記録した最初の日本地理教科書だと判断される。
要するに、『小学地誌字引』の底本である『小学地誌』の著者南摩は『日本地誌提要』を根拠に『内国地誌』を執筆して松島と竹島の内容をそのまま転載したが、二島を経緯度上でも隠岐の範疇から除外して「内地全図」と「山陰道図」においてもいずれも表示しなかった。松島と竹島の存在を知っていたのに二島を日本領土と見なさなかったのだ。このような『内国地誌』の日本領土あるいは隠岐の管轄地域と松島・竹島に対する南摩の認識は『小学地誌』にそのまま継承・反映されたし、これを土台に『小学地誌字引』を執筆した岡村に受容されたと見られる。
 
 

(16)南摩綱紀『内地誌略』 3 p1011

(17)ユン・ソヨン『近代日本官撰地誌と地理教科書に現れた独島認識』 p373374

 

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