東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 5月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

強制不妊 国賠償認めず 旧優生保護法は「違憲」

写真

 旧優生保護法(一九四八~九六年)下で知的障害を理由に不妊手術を強いられた宮城県の六十、七十代の女性二人が国に計七千百五十万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、仙台地裁は二十八日、旧法は違憲との判断を示す一方、被害者救済に向けた立法措置を取ってこなかった国側の責任を認めず、請求を棄却した。

 全国七地裁の同種訴訟で初めての判決。原告側の新里宏二弁護団長は判決後、違憲の判断に一定の評価を示しつつ「被害者の救済につながらないと意味がない。憤りを禁じ得ず、失望も大きい」と述べ、控訴する方針を明らかにした。

 今年四月、被害者に一時金三百二十万円を一律支給する救済法が議員立法で成立、施行された。安倍晋三首相が反省とおわびの談話を発表したが、国の責任には触れられなかった。各地の被害者は、国の直接的な謝罪と十分な補償を求めて裁判を続ける。

 判決理由で中島基至裁判長は「旧法は個人の尊厳を踏みにじり悲惨だ」として、幸福追求権を定めた憲法一三条に違反し、無効だと指摘。

 「不妊手術は子を望む者の幸福を一方的に奪い、権利侵害は甚大だ。被害者の損害賠償請求権を確保する必要性は極めて高い」とし、不法行為から二十年で損害賠償請求できなくなる国家賠償法とは別の法律をつくる必要性があったと認めた。

 ただ「国内では子を産み育てるかどうかを意思決定する権利(リプロダクティブ権)に関する法的議論の蓄積がなく、国会にとって立法措置が必要不可欠かどうかが明白ではなかった」と違法性は認めず、賠償責任を否定した。

 また判決は、損害賠償請求権が二十年で自動的に消滅する除斥期間は「法律関係を速やかに確定させることの重要性から画一的に定められ、合理的だ」とし、適用を求めた国の主張を認めた。原告二人の手術からは四十年以上たっている。

 二人は十代半ばで不妊手術を受け、結婚の機会を失ったり夫との関係が破綻したりしたとして、昨年一月以降に提訴。請求額は六十代女性が三千三百万円、七十代女性が三千八百五十万円だった。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】