穏やかなるかなカルネ村   作:ドロップ&キック
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二桁到達♪
同時に法国先遣隊との戦闘イベントが決着っす。
果たしてロンデスさんの運命は……?(謎のロンデス推し
エンリさんは普通の可愛い村娘デスヨ?






第10話:”カルネ村防衛戦・前哨戦イベント終了”

 

 

 

”パァン!!”

 

感覚的には褐色の男が消えたと思ったら、斜め右前にいたベリュースの頭が破裂音と共に爆ぜていた。

ロンデスに言わせれば「な… 何を言ってるのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった……」といういわゆるポルナレフ状態だったに違いない。

 

ただはっきりしているのは、褐色の男(ゼロ)が何かをして嫌悪すべき隊長の首から上がなくなったのと、

 

”とんっ”

 

錯覚だと思うが空中で静止したように見えたゼロがベリュースの成れの果てのブレスプレートのあたりを軽く蹴り、反作用で首から下はぐらりと揺れて落馬し、ゼロはむしろ優雅にさえ見える跳躍で元居た位置に戻ったと言うことだった。

目から入った情報の処理を拒否するような頭の痺れを感じながら、

 

(ベリュース、駄目じゃないか。こんなに中身を撒き散らしたりしちゃ)

 

と顔についた不快な感覚を拭う。

妙な柔らかさを持つそれは、きっとベリュースの頭の中に詰まってた役に立ってなかった物だと妙に緩慢な思想でロンデスは理解した。

頭蓋骨の中身が役に立ってたのなら、きっと自分はここに居ないのだろうから。

 

『斉射三連! 放てっ!!』

 

現実的な感覚が戻ってくる前に、どこか遠くから聞き覚えのない若い女の声が聞こえた気がした。

どういうわけか明確な意思を持った声のはずなのに、意味が理解できない。

ただ、激しい痛みと共に意識が途切れる前に感じたのは、

 

(こりゃ死んだな……)

 

自分を突き刺さろうとあらゆる方向から飛来する無数の矢だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

「なんと不甲斐ない……!!」

 

神官服の少女、エンリ・エモットは憤慨しながら呆れるという器用な感情の発露を見せていた。

勝負はまさに一瞬だった。

スペル・タトゥーも発動させず武技も使わず、本気とは程遠いゼロの”ただの飛び蹴り”と、弓と弩の斉射三連で方がついてしまった。

時間にして始まりから終わりまで1分とかかってない。

 

まさかエンリも斉射三連だけで射撃停止命令を出す羽目になるとは思ってなかったようだ。

これでは、満足な戦闘経験が稼げないではないか。

 

いや、今はそうじゃないとエンリは思い直し、

 

「後続があるかもしれませんから、ゼロさん、拒馬を出したまま引き続き警戒態勢を維持してください」

 

「わかった。俺も物足りぬからな。出来れば強者の来訪を期待する」

 

「同意しますよ。私もまさかこうも早く終わるとは思ってませんでしたから」

 

とエンリは中に運び込まれる人間と馬を見た。

回収時、特に馬に暴れられるのも面倒なのであらかじめエンリとデイバーノックの二人で集団化した睡眠魔法をかけてある。

 

 

カルネ村は豊富な資金を後ろ盾に、篭城基本の防衛兵力として今のところ弓兵と弩兵の育成に力を入れている。

その甲斐もあり、カルネ村の戦闘員の半数はこれらの兵士だ。

今回参加した兵もほぼその比率であり、人間だけで言うなら約50名が矢を放ち、斉射三連なので計150本の矢がベリュースを除いた24騎の騎兵に襲い掛かったということになる。

正面からは弩、丸太塀の上からは長弓、道の左右の草むらからは挟むように短弓に射掛けられた……加えて、エンリは実は事前にある命令を出していた。

それは、

 

『なるべく人を狙ってくださいね? 軍馬は貴重なので、迷惑料代わりになるべく手に入れちゃいましょう♪』

 

かくて24体の急造ハリネズミは完成したのだ。

帝国兵風の鎧はあちこちに穴が開き、引っぺがして売ったとしても二束三文だろう。

無論、村で使う気はない。誰が望んで下級装備などを使いたがるということだ。

 

それにエンリには、10代の少女らしいささやかな夢がいくつかある。

例えば、今は兼任の短弓隊を本格的な弓騎兵(軽騎兵)に再編することなんかがそれにあたる。

できれば突破力を期待できる重騎兵も揃えたいが、馬への負担を考えるとスレイプニール(八足馬)か、いっそモモンガに頼んで”アイアンホース・ゴーレム”を出してもらったほうがいいかもしれないが……ただ、あまりにもモモンガに頼りすぎるのもどうかという葛藤もあった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「姐さん、こいつまだ生きてるみたいですぜ?」

 

「なら怪我をしてる馬と一緒に、広場に並べておいてください」

 

(モモンガ様も全員殺すなと言ってたし)

 

事情聴取がどこまで出来るかわからないが、

 

「回復させた後、《チャームパーソン/人間種魅了》でも使えばいいですか」

 

抵抗(レジスト)されたら《ドミネート/支配》って手もあるし)

 

エンリはもう平常運転だった。

もしかしてこの少女、アンデッド並の精神沈静化特性でも標準装備しているのだろうか?

 

「ところで姐さん、死んでるのはどうしやす?」

 

「そうですね……」

 

エンリは少し考え、

 

「《死者復活/レイズデッド》しても灰になりそうだし……そのまま腐らせるより馬は馬肉に、人は人間種以外の皆さんの御馳走っていうのはどうでしょう? わざわざ埋葬する義理もありませんし」

 

亜人が人の肉を喰らうのは当たり前。だから人を襲うのだ。

エンリだけでなくそれはカルネ村の住人にとってただの自然の摂理であり、別に嫌悪感のある話じゃない。

共に暮らす村人を食料と看做さなければいいだけだ。

故に敵対者の遺体に配慮する必要を、エンリは特に感じてはいなかった。

むしろ馬にせよ人にせよ、放置して腐らせるなど公衆衛生的に言語道断だ。

 

「そいつぁいい。人肉なんて久しぶりだからウチの連中も喜びまさぁな」

 

エンリはにっこり微笑み、

 

「それは何より。これで英気が養えれば上々ですよ♪」

 

ここは死の神(モモンガ)を信奉せし村。死は生の一部であり、また死は誰かの生に繋がる。故に死は無駄にしてはならないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでくださりありがとうございます。
なんか勢い任せで書いてたら、二桁話数に到達してました。
これも応援してくださった皆様のおかげです。ありがとうございました。

それにしても「外道、炸裂しろ!」の後は弓矢の斉射三連で終了とは、原作に比べ我ながらえっらい呆気なく終わってしまったなと(^^
まあ、騎兵の機動力や運動性を忘れ棒立ちの24騎に150本の矢が集中すれば……ってことで。

カルネ村はその信仰の影響からか、独特の生死感を持つみたいです。


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