メダカは、ここ数年でたくさんの新品種が誕生し、さらに今も増え続けています。
このような新品種を中心としたメダカは、主に“変わりメダカ”と呼ばれています。
近年、次々と登場している新品種のメダカたちは、もとは白メダカや青メダカなど、
変わりメダカの中でも基本とされるメダカが元になって生まれてきています。
それは、長期間かけて累代繁殖され、様々な過程を経てできてきた品種なのです。
その一部を、系統図に表してみました。
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- 黒メダカ
- 原種メダカから突然変異によって生まれた緋メダカ、この緋メダカから産まれた子ども達が先祖返りした個体を黒メダカと呼ぶ。原種メダカに近い色をしてはいるが、れっきとした変わりメダカである。水鉢などで飼うとノスタルジーを感じさせてくれる。
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- 琥珀メダカ
- 黒メダカの中から体色が琥珀色に変わる個体を選抜育種して固定されたメダカ。楊貴妃メダカの祖となったメダカで、この種が誕生しなければ、楊貴妃メダカはもちろん、三色も紅白も誕生しなかった。最上級まで色が揚がった個体は本当に深みのある色味となる。
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- 楊貴妃
- 琥珀メダカからの育種によって作出されたメダカ。様々な朱赤系メダカの祖であり、現存する三色や紅白のメダカもこの品種の誕生なくしては生まれることが無かった。成長するにつれて緋が濃くなり、しっかりと飼い込まれた個体はその名の通り傾国の美貌をもつ。
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- 初恋
- 楊貴妃メダカのだるま体型品種。全身をめいっぱい使って泳ぎ回る姿がとても可愛らしい。可愛らしい姿になっても楊貴妃メダカの美しさを兼ね備えており、成長するにつれて大変美しい体色になる。低水温や強い水流に弱いため、飼育にはひと工夫が必要。
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- 楊貴妃透明鱗(紅)
- 楊貴妃メダカに透明鱗メダカを交配させて作出されたメダカ。普通体型・ヒカリ体型など複数のバリエーションがあり、それぞれの系統によって紅・篤姫など名前が付けられている。多くの三色・紅白メダカの祖となったメダカ。
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- 紅龍
- 楊貴妃透明鱗メダカ(紅)からの選抜育種により固定・作出されたメダカ。鱗に赤銅色の縁取りが現れ、規則的な模様を描くことが特長。楊貴妃の血を受け継いでいることもあり、成長するにつれて朱赤色が濃くなっていく。色揚りを楽しみたい品種のひとつ。
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- 赤頭龍黒
- 楊貴妃透明鱗メダカ(紅)からの選抜育種により固定・作出されたメダカ。成長するにつれて朱に変わっていく頭部と、墨に縁取られた鱗(ブラックリム系統)が特長。しっかりと墨が乗ると、この鱗は龍鱗を髣髴とさせることからこの名がついた。黒い容器や青水での飼育がオススメ。
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- 錦龍三色
- 楊貴妃透明鱗メダカ(紅)からの選抜育種により固定・作出されたメダカ。透明鱗性の三色メダカで、緋がよりくっきりと鮮やかに現れる。稚魚の段階から色揚りの良い個体のみを選抜して育種が重ねられてきたため、色揚りの早さも特長の1つ。墨を際立たせるために、黒い容器で飼育するのがオススメ。
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- 錦龍紅白
- 楊貴妃透明鱗メダカ(紅)からの選抜育種により固定・作出されたメダカ。透明鱗性の紅白メダカで、緋がよりくっきりと鮮やかに現れる。錦鯉のように、紅と白の際(境目)がはっきり現れることが特長。錦龍三色同様の選抜育種を行っており、色揚りを楽しみながら飼育したい。
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- 銀かむろ
- 錦龍三色からの選抜育種により固定・作出されたメダカ。身体の透明感をより引き出すために、独自の育種を行って生み出された。腹膜の金属光沢がとても美しく、これは個体差・飼育環境により赤・オレンジ・ピンク・緑など七色に変化する。
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- 紅かむろ
- 銀かむろに緋を乗せるために錦龍三色との戻し交配を経て固定・作出されたメダカ。頭部にピンポイントに現れる緋が特長で、完全に色の揚った個体は、錦鯉や金魚の丹頂を思わせるような体色になる。稀に体表に墨が乗る個体も存在するため、繁殖させても楽しい品種。
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- 幹之メダカ スーパー
- 多くを語る必要はない。なぜなら、その姿を一目見れば、誰しもが魅了されて止まないから。変わりメダカ史上、最も劇的な進化を遂げたメダカといっても過言ではないだろう。このメダカがいたからこそ、現在のブームが巻き起こり、そして新たな進化が生まれた。これからも注目し続けたいメダカ。
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- 流星
- 幹之メダカの背ビレ無し体型品種。幹之メダカと背ビレ無しメダカ(らんちゅうメダカ)の交配によって作出された。背中を走る体外光が背ビレで途切れず、一筋の流星のように見えることからこの名が付けられた。黒い容器で上見を楽しみたい。
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- オーロラ幹之
- 幹之メダカの体表の色素胞の多くが欠乏した品種。そのため、からだが透き通って見え、頭部は淡いピンク色に見える。このメダカの登場によって様々な新品種メダカが世に現れるようになった。最先端のメダカ育種を目指すには絶対には欠かせない存在。
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- スーパーブラック
- 青メダカからの育種により固定・作出されたメダカ。黒メダカの黒とは異なる漆黒の体色をもっている。幹之メダカや楊貴妃メダカなどと並び、メダカブームのきっかけとなった。白い容器では、せっかくの体色が褪せてしまうので、黒い容器で飼育する。
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- 黒龍、黒揚羽など
- スーパーブラックに透明鱗遺伝子を組み込むことで作出されたメダカ。普通鱗ではなくなったことで、常に体色の黒が発現するようになった。黒龍・黒蜂・黒揚羽など様々な新世代ブラック品種が作出されており、好みに合せて楽しめる系統だ。
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- 黒蜂
- ブラック系メダカの一品種で、ヒレが黄色く染まることが特長。黒龍と同じく、透明鱗性のブラック系メダカである。2018年現在となっては当たり前のようになってきた黒と黄色(赤色)の美しいコントラストを体色にもつメダカだが、この黒蜂の登場によってその可能性が発掘されたことは紛れも無い事実である
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- 全身体内光(幹之体内光)
- 淡い緑色の体内光が全身におよぶ幹之体内光メダカの派生品種。幹之メダカの変異個体として現れた幹之体内光の選別育種をおこない、特徴である体内光を全身に伸ばしていったものである。緑光や新緑光に代表される新しい色味をもつメダカには、この体内光がもつ形質が大変重要な要素として機能している。今後もその進化から目が離せない。
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- 金鱗龍
- クリアブラウンメダカのヒカリ体型品種を金鱗龍と呼んでいる。鱗を黒く縁取る、クリアブラウン由来の『ブラックリム形質』がこのメダカにも色濃く現れるため、ヒカリメダカ特有のグアニン光と相まって、ときに非常に美しい姿を見せる。ブラックリム形質を有するヒカリメダカ作出のための種親としても重要な品種である。
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- 紅薊
- クリアブラウンメダカの血統をもつ品種のひとつである。一般的な紅薊は、からだ全体が朱赤色に覆われ、その上にブラックリム形質による黒斑が現れる。この紅薊の赤と黒のコントラストは、数あるクリアブラウン系メダカの中でも特に美しい。オリジナル個体から派生した、よりコントラストが際立つ紅薊なども誕生しており、その魅力は今後ますます高まるだろう。
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- 乙姫
- クリアブラウンメダカに紅(楊貴妃透明鱗ヒカリメダカ)を交配させて作出されたメダカ。紅由来の朱赤色の体色と、ヒカリ体型が特長。朱赤色の体色・ブラックリム形質による黒斑・ヒカリメダカのグアニン光。これらの3要素が揃った個体は大変美しい。上見でも横見でも楽しめる品種である。
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- オロチ
- 白い容器・透明な容器に入れると黒い色が褪色してしまうという、ブラック系メダカの弱点を克服した品種。これまでブラック系のメダカで最も問題視されてきたことが、このメダカの登場によって解決された。しかし、なぜ色が周囲の環境に関わらず漆黒を維持するのか、その機序ははっきりとは分かっていない。今後の進化にも注目したいメダカである。
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- 緑光
- 2017年、淡い緑色の体色を持った『緑光』『新緑光』などのメダカがリリースされた。全身体内光や百式などの体内光をもつメダカと幹之メダカの交配によって作出された品種である。原種のメダカが持つ本来の褐色の体色に幹之などがもつ青い体色が加わることで、緑色を発現するようになったと言われている。今後、この緑色の体色がどのように変化するのか、楽しみである。
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- 百式
- 透明鱗性の幹之メダカ作出の過程で現れたメダカで、面白い特長を備えている。百式という名前は、体内光・内膜光(腹膜上の光)・体表に点在する虹色素胞の光が、百通りの色味を表現するということで名付けられた。透き通ったからだと、その光を観賞したいメダカである。
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- 五式
- 黒と赤の競演を実現させた新世代型のブラック系メダカ。体色はオロチのように真っ黒だが、各ヒレが赤みを帯びることが特長である。黒蜂メダカに栗神メダカや朱赤透明鱗メダカなどを交配させた後、さらに複数回交配を行って作出された。今後のメダカを語るためには欠くことができないメダカに違いない。
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- 黒百式
- 2017年、百式からの育種を経てリリースされたメダカ。百式の体内に黒色素が散在して、全身が黒っぽく見える品種である。体内に黒色素が存在しているためか、この黒百式の『黒』は三色などのメダカに比べて色が飛びにくく、水槽でも見栄えが良い。全身に黒が及ぶような黒百式の誕生が待ち遠しい。
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- 黄幹之
- その名の通り、黄色の体色をもった幹之メダカ。黄色素が入る幹之メダカは現れないという通説を覆したメダカである。オーロラの血統を受け継いでいるため、体外光と黄色体色の共存が可能になった。作出当初は、まさに黄色がかった幹之メダカであったが、黄色は徐々に赤色へと進化してきている。楊貴妃に体外光が乗ったような、目の覚めるような赤色をした黄幹之の誕生もそう遠くないのかも知れない。
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- 灯
- 幹之メダカとクリアブラウンの交配によって作出されたメダカ。幹之メダカをベースとした体色の上にうっすらと黄色が乗ることが特長。体外光もしっかり乗ってくるため、とても美しい品種である。カラーバリエーションに富み、コレクション性があることも特長のひとつ。また、他品種に体外光を乗せるための種親としても重宝されている。
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- 夜桜
- オーロラ幹之メダカの交配によって作出された、いわゆる新世代型メダカ。オーロラ幹之にラメ光を入れる方向で交配が進められ、完成したメダカである。オーロラ幹之由来の頭部のピンク色が、ブラックリム形質の墨の中で輝く様が『夜桜』を彷彿とさせるためこの名が付けられたという。しかし、その表現型はバリエーションに富んでおり、写真のような黄色素を多く発現している個体や、淡いピンク色を呈する個体など多岐に渡る。
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- 女雛
- オーロラ幹之メダカの交配によって作出された、いわゆる新世代型メダカ。柿色と呼ばれる緋とブラックリム形質の墨が特長である。交配によって得られた仔の中から黄色素胞をもつ個体を累代飼育し、前述の柿色を手に入れた。稀にオーロラ幹之由来の体外光をもつ個体も出現する。そのような個体は異種交配の親として大事に育てたい。余談ではあるが、2017年にメダカ界の注目を一身に集めた『煌』は女雛と夜桜の交配によって作出されたメダカである。
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- 煌
- 夜桜と女雛を交配し、複数回の累代飼育を重ねて生み出されたのが煌である。2017年にリリースされたこのメダカは、当時としてはセンセーショナルすぎるものであった。というのも、しっかりとした体外光をもちながら、柿色と呼ばれる緋も乗っている。これはそれまでのメダカ通説を覆すものであったためだ。煌の登場後、様々な品種に体外光を乗せるという動きがより活発になり、現在、煌をルーツとする多くのメダカが誕生している。
突然変異で現れたヒレ全体が大きく伸長するメダカ。熊本県の松井養魚場にて作出されたため、この名がついた。
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- 松井ヒレ長
- 熊本県松井養魚場にて育種されたため、広くこの名で呼ばれるようになった。背ビレ・胸ビレ・しりビレ・尾ビレそれぞれが相似形を描くように伸長することが特長である。完全体となったこのメダカが泳ぐ姿は、とてもメダカとは思えないほど優雅。
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- 天女の舞
- 松井ヒレ長メダカの特長をもつラメ幹之メダカ。伸長したヒレに幹之メダカ由来の青い金属光沢が入るため、他のメダカでは見られない美しさをもつ。泳ぐたびにヒレが水になびき、その美しさをより一層際立たせる。上見でも横見でも楽しめるメダカ。
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- 透明鱗三色・紅白系松井ヒレ長
- その名の通り、透明鱗三色・紅白の特長を有する松井ヒレ長メダカ。2018年現在、松井ヒレ長メダカのバリエーションは多岐に渡っているが、意外にもしっかりと三色・紅白メダカの特長が発現している松井ヒレ長メダカは少なく、多くのメダカ愛好家がこぞって育種に取り組んでいる品種でもある。
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- 天鳳
- 天女の舞がもつ美しさをさらに極めたいという背景から育種が行われ、作出されたメダカ。ヒカリ体型となったことで、背ビレ・しりビレの両方がしっかりと伸長するとともに、尾ビレはハート型のダブルテールとなることが特長。また、鉄仮面幹之のように頭部にしっかりと体外光が乗ることも魅力のひとつで、ヒカリ体型由来のグアニン光やラメもその美しさを際立たせている。
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- サタン
- オロチメダカを「松井ヒレ長」化させた品種。極上の個体は、伸長したヒレ先まで全てが漆黒となり、そのヒレがなびく姿は最早メダカとは別の魚とさえ思わせるほどである。オロチの血を受け継いでいるため、どのような環境でも体色を維持することができる。ぜひ、横見でその美しさを観賞して頂きたい。
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- ブラックキング
- 黒蜂メダカと松井ヒレ長メダカの交配によって作出された品種。全身真っ黒のタイプや、ヒレに黄色が乗るタイプの個体が存在する。白い容器や透明な容器で飼育しても体色が色あせにくいため、松井ヒレ長形質の特長を存分に味わうことができる横見での飼育がオススメ。
2016年夏以降、メダカ市場を席巻している系統のひとつ。鱗の一枚一枚に虹色素胞がより強く発現するメダカで、金魚・鯉などでいう銀鱗に近い。ラメメダカの元祖としては青ラメメダカやラメ幹之メダカが有名である。選抜育種を重ねることでラメをより強くすることが可能である。
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- 黒ラメメダカ
- 黒い身体に映えるカラフルなラメ光が特長のメダカ。それまでのラメの常識を覆す、七色にきらめくラメは変わりメダカ界に衝撃を与えた。この品種の登場によりラメメダカ旋風が巻き起こり、様々なラメメダカが作出されたことは記憶に新しい。黒い容器で飼育するのがオススメ。
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- 琥珀ラメメダカ
- 琥珀体色に七色のラメ光が乗った美しいメダカ。琥珀メダカの血を受け継いでいることで、成長するにつれて深みのある体色に変わっていく。全ての色素胞をもっているため、新たなラメメダカ作出の親としても活躍できる。黒い容器でじっくり飼い込むと、琥珀体色がさらに際立つ。
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- 三色ラメ
- 紅・白・墨という三色の体色をもち、そこにラメが乗ったラメメダカ系品種のひとつ。作出されてまだ2年ほどの比較的新しい品種である。三色メダカにラメが加わることで、その鮮やかさが増した。黒い容器で飼育すると、紅・白・墨・ラメそれぞれの美しさが際立つ。
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- 紅白ラメ
- 紅白メダカにラメが乗るタイプのメダカ。紅白の体色とラメ光はとても相性がよく、紅白をより際立たせて見せてくれる。三色ラメメダカ同様に、飼い込むほど紅色が揚がっていくとともに、ラメも輝きを増すようになる。黒い容器で飼い込んで、上見で楽しみたい品種。
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- オロチラメ
- オロチメダカ進化品種のひとつで、漆黒のからだにラメが乗るメダカ。オロチに青ラメ形質を組み込み、育種を重ねることで、この形質を獲得した。成長するに伴い、ラメの輝きはより美しくなるため、じっくりと飼い込んで育てたい品種。今後もその進化に期待がもたれるメダカである。
実際に育種をおこなっている現場スタッフが、
あの変わりメダカに辿り着くまでの道のりを公開。
【紅から錦龍三色へ】 紅のF1を採ったとき、その中に緋と白地と黒色素胞のバランスがよい個体が、わずかに現れた。 これを選抜育種すれば三色メダカになるのではないかと考えたことが三色メダカ作出のきっかけである。 しかし、この個体は、約200匹中わずか5匹。さらにF2では目標としないメダカが9割以上を占めた。 それでも累代飼育を重ね、ある程度の固定率が得られるようになったのはF6からであった。 そこから、思い描く緋と墨の乗り方を追求するために、更に代を重ね、現在はF11。 このメダカ、あなたの下ではどう進化するのだろうか。
【錦龍三色から錦龍紅白へ】 錦龍三色を育種していくプロセスで稀に現れたのが、墨が全く入らない紅白メダカである。 もちろん、紅にも墨は入らないのだが、紅とは緋の入り方が全く違うメダカだった。 これらを紅白作出のための親として確保し、育種をおこなっていったが、三色以上にその道は険しかった。 どうしても墨が乗った個体が出てしまう。 その率、F2ではほぼ全て、F5でも半数に及んだ。 現在、錦龍紅白としての累代もまたF11、墨は消えた。 純粋な紅白のコントラストを存分に楽しんでもらいたい。
錦龍三色の固定率がある程度の数値になってきたとき、この透明鱗系三色の透明鱗をさらに追求したらどうなるのかと思考にふけっていた。 当時、透明鱗のメダカはまだまだ少なく透明鱗の求道こそメダカの歩む道と考えたためだ。 そこで、シースルーアルビノという大半の色素胞が欠乏した品種を、錦龍三色と交配させたのである。 結果として生まれたのが銀かむろと紅かむろ。これらのメダカは表皮・真皮の色素胞が少なくなったため、腹膜などの金属光沢が際立ち、他の透明鱗性のメダカとは一線を画すメダカとなった。 ディテールまで話をするならば、錦龍三色とシースルーアルビノの異種交配では、黄色素胞による緋が飛んでしまう個体が多く現れたため、銀かむろしかできなかった。 どうしてもこの系統に緋を乗せたかったため、銀かむろと錦龍三色の戻し交配をおこない、現れたのが紅かむろである。どちらも一文で表したが、かなりの交配を重ねたことも追記しておく。 系統としては最近話題となっているオーロラ幹之系統に近いものがある。 そのため、現在はオーロラ幹之系統との異種交配にて新品種作出に取り組んでいるところである。
スーパーブラックにパンダメダカなどの透明鱗形質を組み込む。 この育種により黒龍や黒蜂、黒揚羽などの第二世代型ブラックメダカが誕生した。 スーパーブラックなどのいわゆる普通鱗タイプの第一世代型ブラックメダカにおいて、どうしてもついてまわった問題、それが『白とび』である。 第一世代型ブラックメダカを白や透明の容器で飼育すると、黒色素胞が凝集してしまうため、せっかくの魅力的な黒体色が失われてしまっていた。 これに対し、冒頭で紹介した第二世代型ブラックメダカは、同様の環境でも白とびが起こりにくいという特長を手に入れた。 パンダメダカの透明鱗形質を獲得したことで、虹色素胞が欠乏し、黒色素胞の凝集・分散に影響が出たという説が有力であるが、はっきりとした機序は明らかになっていない。 現在は、オロチメダカというさらに白とびしない第三世代型ブラックメダカが世に現れ、ブラックメダカの世界はますます奥深くなっている。
ヒレ全体が相似形を描くように伸長する、松井ヒレ長メダカ。 熊本県長洲町、福岡県大牟田市を中心として育種・固定されたメダカである。 この血統のメダカを最初に発見した松井養魚場の名を冠している。 これまでに様々なメダカの進化が確認されてきたが、その中でもとりわけこの松井ヒレ長系統の出現は革新的なものであるように思える。 もともとの松井ヒレ長メダカはパンダ形質をもつメダカであったが、ここに幹之メダカやラメ幹之メダカなどを交配し、累代飼育を重ねて作出されたのが天女の舞である。 天女の舞は、幹之メダカ由来の体外光とラメ幹之メダカ由来のラメ光、そして松井ヒレ長メダカ由来のヒレを兼ね備えたメダカである。 さらに、松井ヒレ長に幹之の形質が組み込まれたことで、その特徴的なヒレに青い金属光沢が現れる。 そのヒレが水になびく姿は、天女が纏うといわれる羽衣のようである。 ここで松井ヒレ長メダカの遺伝的な話をしよう。松井ヒレ長メダカなどのヒレ長形質は、遺伝的に劣性であり、非ヒレ長形質と交配させるとF1では出現しない。 しかしながら、F1で得られたメダカどうしを交配させると、F2では必ずヒレ長形質が現れる。 例えば、天女の舞をベースとして新品種を作出したい場合は、F2が出るまで我慢することが重要である。 F2の中から、理想とするメダカにもっとも近く、かつヒレ長形質をもつメダカを選抜し、さらに累代飼育を重ねていく。これが松井ヒレ長メダカをさらに進化させる方法なのだ。 いまこの瞬間も、日本全国で新たな松井ヒレ長メダカが誕生していることだろう。
※F1とは異種間の交配で生まれた一代目。F2は、F1同士の交配で生まれる二代目のこと。
2004年、かつて誰も目にしたことの無いようなメダカが世に現れた。その名は、楊貴妃。燃えるような朱赤色の体色が唯一無二の特長である。リリースされてから10年以上が経った今でもなお、赤系メダカの頂点に君臨し、人々を魅了し続けている。
さて、ここではそんな楊貴妃の奥深さをほんの少しだけ覗いてみたいと思う。
そもそも楊貴妃というメダカは、メダカ好きならば一度は耳にしたことがあるであろう『めだかの館・大場幸雄氏』の手によって作出された品種である。琥珀メダカの中から稀に現れる朱赤色のメダカを選抜育種して固定された品種が楊貴妃と呼ばれる。
しばしば誤認されがちであるが、濃い体色のヒメダカが、楊貴妃、というわけではない。それは色素胞の組成に目を向ければ一目瞭然だ。ヒメダカは黒色素胞の欠乏によって、あのオレンジ色の体色を発現させているが、それに対し、楊貴妃は琥珀メダカ由来の黒色素胞の影響を受けるため、あのように燃えるような朱赤色を発現させることができる。事実、楊貴妃にブラック系のメダカを交配させて得られる仔魚たちは、よりシャープな色味を出すようになるものだ。また楊貴妃の朱赤色にも様々なバリエーションが存在することが確認されている。オリジナル系統作出を目指すのも、楊貴妃の深淵に迫るひとつの方法かもしれない。
先に書いたように、楊貴妃にはカラーバリエーションが存在し、微妙な色味の違いに加え、体型の違いなどによって系統分けがなされ、初代楊貴妃から数えた累代数が振ってあることが多い(ex. 楊○○など)。しかしながら、このようにしっかりと系統分けされた楊貴妃が、一般流通することはほとんどない。楊貴妃が好きで純血統の維持を続けてきた愛好家の下で大事に大事に管理されている個体ばかりである。もちろんその入手は大変困難なものとなっている。色の濃さに注目されがちな楊貴妃だが、このすばらしいメダカを生み出した血統にも注目してみてはどうだろうか。信頼のおけるメダカショップで純血統の楊貴妃を購入し、純系の維持をする。これは楊貴妃の真の魅力に迫ることであると同時に、5年後・10年後の変りメダカ界にとっての大きな財産となりうるに違いない。
錦龍三色や紅かむろなどの「新品種が生まれてきた歴史」のパートでも記述したが、このようなメダカたちの祖となったメダカが紅である。ここでは紅から始まる累代記をご紹介したいと思う。今後、皆さんのメダカ繁殖のヒントなってくれれば幸いである。
紅は、楊貴妃透明鱗メダカに付けられた品種名である。同じ楊貴妃透明鱗でも、系統の違いによって篤姫という品種が存在する。この紅を親として迎え入れたのは2014年、すべてはそこから始まった。
【龍の鱗をもつ2種類のメダカ】
F1個体の中に三色メダカの形質をもっていそうなメダカが現れたことは上記でも紹介した通りであるが、これ以外の個体から選抜育種を行って固定した品種が紅龍(こうりゅう)メダカと赤頭龍(せきとうりゅう)メダカである。まずはこれら2種に着目して話を進めていく。紅龍メダカと赤頭龍メダカ、両者とも名に龍という字を冠しているが、その理由は鱗にある。龍の鱗といえば、その一枚一枚がまるでひとつの生物であるかのような存在感を放つ。紅龍メダカの鱗は、朱赤色の基調色に赤銅色の縁取りが入り、一方で赤頭龍メダカの鱗は、琥珀透明鱗由来の山吹色の基調色に黒の縁取りが入る。この縁取りが鱗を際立たせるため、龍鱗を髣髴とさせるような鱗となる。
さて、これら2種のメダカは、紅のF1個体の中に現在の完成形に近いメダカが既に存在していた。そのプロトタイプとも呼べる個体たちを始めて見たときも、やはりその鱗に目を奪われたことを鮮明に記憶している。朱赤透明鱗系の紅からここまではっきりした琥珀透明鱗が出現したこと、そしてヒカリ体型であるはずの紅から普通体型のメダカがより多く出現したことは未だに謎ではあるのだが。F2以降の育種は比較的容易で、選抜と淘汰をひたすら繰り返すだけで異種交配の必要は無かった。そのような経緯を経て、F4個体では固定率が8割を越すようになった。現在もこれらのメダカは血統を維持し続けている。
【紅から錦龍三色、そして錦龍紅白へ】
ここでは上記「新品種が生まれてきた歴史」では書ききれなかったこだわりのポイントなどを書いていく。先述の通り紅のF1から緋と白地と黒色素胞がバランスよく入った個体が現れた。緋が少なければ、それは白斑メダカになってしまうし、白地が隠れすぎるとそれは赤斑メダカとなってしまう。墨が入っていなければ、それは親の紅そのものである。今思えばこのバランスが良い個体が現れてくれたことが、何よりの僥倖であったと思う。しかしながら、このメダカを得たからといって上手くいかないのが、メダカ育種の常。F2では同様の特徴を持つメダカはほとんど得られなかった。それでも出現率が若干ながら向上したこともあり異種交配などはせずに、狙った特徴をもつ個体を集めていく選抜育種の姿勢を貫いた。
F6時点での固定率は約50%、この頃になると思い描く最終形の柄をもつ個体がちらほら現れようになり、それらを親に用いることができた。それと同時に、色揚りが早い個体と、より鮮やかな朱赤色を発する個体を選抜して親に用いるようになった。現在F11の錦龍三色、このようなヒストリーのもと作出されたメダカである。
錦龍紅白は、文字通り同系統の錦龍三色の紅白形質メダカだ。このメダカを作出するにあたり、とにかくこだわったのは、純粋な紅白であること。紅白メダカとして売られているメダカの中には、一見紅白に見えても、保護色を発現させた際、墨が現れる個体も存在する。個人的な意見になるが、やはりそのようなメダカは紅白とは呼べない。紅白の錦鯉を、青水に入れても墨が出てこないように、紅白を名に冠するメダカはいかなる状況でも紅白でなければならないと考えた。黒い容器でしっかりと飼いこみ、一切墨が出なかった個体を次世代の親に用いることを繰り返した。F11を迎えた現在、紅白のカラーバリエーションを固定することに挑んでいる。丹頂や鹿の子など金魚で見られるような紅白柄である。紅白メダカの柄は遺伝子によって制御されているため、育種を進めていけば柄の固定も理論上は不可能ではない。今後も錦龍紅白の進化を追い続けたい。
【透明鱗を超えた透明鱗。紅かむろと銀かむろ】
透明鱗をさらに追求するためにシースルーアルビノという大半の色素胞が欠乏した品種を、錦龍三色と交配させたことは先述の通りである。表皮・真皮の色素胞が少なくなったため、腹膜などの金属光沢が際立ち、当時の他の透明鱗性のメダカとは一線を画すメダカとなった。現在、このような金属光沢は内膜光と呼ばれ、百式メダカや幹之体内光メダカなどで着目されることが多い。
錦龍三色とシースルーアルビノを交配させて得られたF1個体は、緋や墨をもたらす黄色素胞と黒色素胞が消失してしまったのか、その多くが白メダカを透明にしたような表現をもつメダカであった。どうしたものかと頭を抱えたのを覚えている。案ずるより産むが易し!と、F1を全て親にしてF2を採ることを決断した。得られたF2には若干ではあるが墨が入る個体が現れた。これが銀かむろの祖となったメダカである。この銀かむろの祖となったメダカは思い描いていた、より透明なボディを持っていたため、これを親としてF3を採卵し始めた。しかしながらF2でもF3でも緋が乗るメダカはついに現れなかった。親に用いたシースルーアルビノは純粋なアルビノで、どちらかといえば黄色素胞が遺伝されても良いはずなのだが。これも未だに紅累代記における謎である。
どうしてもこの系統に緋を乗せたかったため、考えたのが銀かむろと錦龍三色の戻し交配である。代を重ねること3代。頭部に緋が乗る個体が現れた。しかしその緋はどちらかというと黄色に近く、とても緋と呼べる代物ではなかった。しかし、これにさらに濃い体色をもつ錦龍三色を交配させて代を重ねること、さらに3代。やっと緋とよべる緋がのるようになった。そしてこの時、この品種の名前を『紅かむろ』と名付けようと心に決めた。今更、名前の由来の話になってしまうのだが、かむろとは漢字表記すると冠となり、文字通りかんむりのことを指す。頭部に緋が現れるメダカ、緋をかぶったメダカということで紅かむろと名付けたのだ。実を言うとこの時まで銀かむろという名前も存在しておらず、紅かむろに対して銀色に輝く頭部をしていたため、銀かむろと名付けたのだった。
面白いことに紅かむろの緋は、頭部以外に入ることがめったにない。おそらくこの辺りにはシースルーアルビノの血が色濃く現れているのだろう。透明鱗の追求を目指して作出に励んでいただけで、系統などは全く意識していなかったのだが、最近になって話題になってきたオーロラ幹之に近いと推測している。オーロラ幹之もまた体表の色素胞を少なくしたことで進化を遂げたメダカである。そのため、オーロラ幹之系統との異種交配によってさらなる進化に期待がもたれる。
この2年間ほどでメダカの表現型は非常に多岐に渡るようになった。楊貴妃メダカや幹之メダカなどの誕生に次ぐ進化の過程にあると言っても過言ではないだろう。その背景には、あるメダカの誕生が大きく関与している。そのメダカこそが、オーロラ幹之という品種である。この品種は、他のメダカに比べ色素胞の数が少ないため、腹膜の金属光沢や、鰓が透けて見え、それでいて幹之メダカ特有の体外光を有するというちょっと変わったメダカである。このメダカを一目見たとしても、最も熱いと言われる所以は分からないかもしれない。しかしながら、このオーロラ幹之系統が、変わりメダカの未来をも変えようとしているのである。
では、具体的にどのような進化を遂げたのか、その一部をお話ししたい。
・ 多色ラメが誕生した(※ここでいうラメとは、鱗一枚一枚がキラキラと輝くことを指す)
多色ラメとは文字通り、複数の色に輝くラメ光のことである。それまでのラメ光というのは金魚や鯉がもつ銀鱗のように金属光沢をもつだけの単色光であった。それに対しこの多色ラメは、虹のように七色に輝く。これは何故であろうか?この謎を紐解く前に、ラメについて解説したい。そもそも鱗がラメのように輝くのは、鱗に虹色素胞が集中するためである。この現象は金魚や鯉などの魚でも見られ、その魚は銀鱗と呼ばれる。しかしながら単に虹色素胞が鱗に集中するだけでは鱗はこのように単色に輝くだけである。ならば、虹色に輝く多色ラメはどのような機序のもと発現しているのか、それには『薄膜干渉』と呼ばれる物理現象が大きく関与していると考えられている。この現象に関して記述を始めると、高校の物理の授業をしなければならないので、何故オーロラ幹之系統でこの現象が起きるのかについてのみ記述したい。
まずは色素胞が通常通り存在するメダカに光が当たった場合、どうなるか具体例を用いて解説する。
表皮に黄色素胞が多く存在しているため、赤~黄色の光を特異的に反射して赤系の色を発する。
表皮に虹色素胞が多く存在しているため、緑~青色の光を特異的に反射し、かつ金属光沢をもつ色を発する。
表皮に色素胞が少ないため、光はほとんど反射されることなく透過するのである。透過した先に鱗があった場合、その光は反射されるのだが、ここで起こるのが『薄膜干渉』という現象で、反射された光と透過してきた光がぶつかることで七色の光を発するようになるのだ。
すなわち、オーロラ幹之系統がもつ色素胞が少ないという特徴のおかげで、この薄膜干渉が引き起こされた結果、多色ラメが誕生したのである。
・赤い幹之メダカ誕生へ一歩近づいた
数年前までは赤い幹之メダカは絶対に存在しないというのが通説で、多くの人がこの理論を疑っていなかった。というのも、幹之メダカ特有の虹色素胞による金属光沢は他の色素胞の下層に存在するため、例えば楊貴妃のような朱赤色を発現させた場合には、その色の下にあの金属光沢が全て隠れて見えなくなってしまうのである。一方、オーロラ幹之系統のメダカにおいては、色素胞が少ないため、他の色素胞に覆われたとしても金属光沢を目にすることができる。例えるなら、厚いカーテンではなくレースのカーテンで遮光したような状態である。この現象の発現が可能になったことで、幹之メダカの進化の可能性がいっきに広がった。これまでは不可能であった朱赤色や真っ黒、ぶち柄の幹之メダカの作出も夢ではないのである。
ただし、色素胞が少ない分、色の表現もまだまだ弱く、楊貴妃のような朱赤色をもった幹之メダカはまだ登場していない。しかし、『黄幹之』という黄色い幹之メダカや、『煌』というより朱赤色に近い柿色と呼ばれる色を発する幹之メダカも現れ始めており、多くの愛好家たちが次のステージを目指して今この瞬間も育種に励まれている。
全身が朱赤色の幹之メダカが誕生するのもそう遠い未来ではないような気がする。
・これまでにない様々な体色の表現が可能になった
読者の方の中には耳にタコが出来てしまった方がいらっしゃるかもしれないが、オーロラ幹之系統は、色素胞が少ないメダカである。この品種が登場する前のメダカといえば、単色・ぶち柄・三色柄・紅白柄などが主であった。このような体色が悪いという訳ではなく、オーロラ系統の血が入ることによって、それまでには無かった体色をもつメダカが現れるようになったのである。例えば、頭部だけ朱赤色で他は墨に覆われるようなツートンカラーのメダカ、オーロラ幹之のような体色に多色ラメが乗り、頭部のみが黄色になるメダカなど枚挙に暇が無い。
このような表現が可能になったのはやはり、オーロラ幹之の色素胞が大きく影響しているのだろう。この辺りの機序も明らかになっていないため、婉曲的な表現になってしまうことをお許し願いたい。
以上、3つの具体例だけではお伝えできないほどの魅力がまだまだオーロラ幹之には秘められている。この系統無くして、今後の変わりめだかを語ることはできないのではないかと思う。ぜひ、このメダカを手に入れてその魅力を実感してもらいたい。そして変わりメダカの新たな歴史に新たな1頁を、あなたの手で追加して欲しいと心から思う。
2013年、熊本県長洲町、福岡県大牟田市にて、革新的な進化を遂げたメダカが生み出された。その名は、松井ヒレ長メダカ。この血統のメダカを最初に発見した松井養魚場の名を冠している。ここでは、このメダカの素晴らしさと、秘められた進化の可能性をお話ししようと思う。
松井ヒレ長メダカの魅力は、何と言ってもやはりそのヒレにある。広がったヒレをたなびかせて泳ぐ様は、その魚がメダカであることを忘れさせるほどである。腹ビレ以外のヒレが、相似形を描くように伸長することが他のヒレ長メダカとの違いであり、そしてこの違いこそが、松井ヒレ長メダカの進化を生み出す秘訣とも言える。
現在、松井ヒレ長メダカを祖として作出された様々なメダカが誕生している。幹之メダカの特徴をもつ『天女の舞』、オロチメダカの特徴をもつ『サタン』、この他にも松井ヒレ長形質を巧みに取り入れた新品種メダカが存在する。そのどれをとっても言える事、それは、ヒレの伸長による美の強調である。例えば、天女の舞は、伸びたヒレに幹之メダカ由来の青い金属光沢が入り、サタンではヒレ先まで漆黒が乗る。つまり、伸長したヒレに別の形質、特にヒレの色に特徴がある品種の形質が入ることによって、二つの特徴が相乗効果を生み出すのである。これこそが松井ヒレ長メダカのもつ進化の可能性の一つである。想像してみて欲しい、三色メダカや紅白メダカの緋が入ったヒレが伸長したら・・・、楊貴妃メダカがヒレ長形質を獲得したら・・・。想像するだけで、ワクワクしてしまうのは私だけだろうか。
さらに、松井ヒレ長メダカがもつ別の進化の可能性。それは位置特異的なヒレの伸長である。ベタやグッピーにはダンボ(エレファントイヤー)という胸鰭が特に大きく伸長する品種が存在する。メダカにおいてもこのような進化は可能であると考える。というのも、分類学上比較的近縁種のグッピーに関してはヒレの伸長に関する遺伝情報がある程度明らかになっており、ブリーダーはそれをもとに品種改良をおこなっている。メダカのヒレ長形質の発現にも、同様の遺伝子制御が関与していると思われる。もし、これが明らかになれば位置特異的にヒレを伸長させることも可能であるだろうし、変わりメダカの表現型がいっきに広がり、さらなる進化を遂げることは確実である。まずは経験則的にヒレの伸長を制御するところからであるが、将来的にはこの遺伝子関与の機序が明らかになることを願ってやまない。