新月の悪魔(かごの悪魔三次創作) 作:澪加 江
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再開を早めたいと思って書いたそばからの投稿です。
使わせていただいたプロット的にも大詰めですし、お話も収束なので次回投稿はさくさくできるといいなと思っております。
「どういうおつもりなのですか!?」
放心状態から戻ったジルクニフを見送った後、カシュバの前に現れたのはナザリックからの迎えだった。その迎えに着いて行き、案内された部屋にいたアインズに詰問した。カシュバはアインズが皇帝と好意的に知り合いたいと相談されたので二人を引き合わせたのだ。
決して帝国がナザリックの属国になる手引きの為ではない。
「俺に嘘をついたんですね」
恨みがましい気持ちと悲しい気持ちとがせめぎ合う。カシュバはアインズの事を信じていたのだ。
手酷い裏切りにあったというのに今でもアインズを信じたいという気持ちがある。それに歯痒さを感じる。
「嘘?」
至極不思議といった言葉遣いで首を傾げる姿はアンバランスで不気味だ。
「ああ! お前には計画の変更を確か伝えていなかったな」
納得だ、と頷きこちらを見据える死の支配者。改めてその重圧に挫けそうになる。生者を模倣する動きに吐気がする。しかし自分の中に確かにある何かがその仕草を“変わってない”と感じる。それはきっとウルベルト様がそう感じているのだろう。
このナザリックで自分は今れべりんぐというものを行なっている。それの影響なのか以前より強くウルベルト様を感じる。限界まで強くなってしまったら、そうしたらきっと自分はーー
「時間がないのでな、帝国と、ついでに王国を使った大規模な作戦を行う事にしたのだ。主役はウルベルトさんでな。勿論お前にも協力してもらう。その分の報酬もきちんと用意しよう」
「報酬?」
「ああそうだ。ーーなあカシュバ、お前が本当に大切に思うのは人類ではあるまい?」
「!!」
例えるならばそれは背骨を冷たい手で撫でられる感触だろうか。
寒気と怖気が同時に走り、そして自分が気づいていなかった核心に気付かされた狼狽。それはアルシェが人でなくなった時から感じていたずれだ。
「お前は自分の手の届く周りが幸せならば、それで十分だと思っているのではないか」
はくはくと口がただ開閉する。
いや、そんな事は無い。
その言葉が出てくると思っていた喉は詰まったように動かない。
「舞台は収穫期真っ最中の、何と言ったか、毎年戦争をする平野だ。その新月の晩にウルベルトさんに簡単な魔法を打ってもらう。演出は大事だからな。存分に盛り上がる舞台を作らなければ」
世界中に我が名を響き渡らせる。
子供ですら言わない夢を語る強大な不死者の姿は、それが実現するのでは無いかという恐ろしさをはらんでいた。
真に人類の事を思うならば反対するべきなのだ。
なの、だがーー
「お前は元人間の娘とその家族と幸せに生き、私は我が友とその愛し子達と幸せに生きる。その世界を共に作ろうではないか」
カシュバの想い人であるアルシェは人間から悪魔になった。
その事を恨む気持ちは十分にある。しかし、同時にアルシェと自分が幸せに過ごすには、余りにもこの世界は居心地が悪い。
元人間をはいえ、悪魔に堕ちた人間を心から迎え入れる国などない。一瞬帝国の鮮血帝が頭をよぎったが、彼が受け入れてくれるのは見返りや利用価値があるからだ。自分はそれで良かった。しかし、アルシェをそんな相手に任せたくは無い。今まで必死に頑張って生きてきたアルシェに、これ以上苦労や苦悩をさせたくなかった。
そしてここにきて、やっと気づいた。
そう、全ては遅く、自分の力では覆せない所まで来てしまっていたのだ。
もうカシュバはナザリックで生きていくしかないのだ。
だが、幸いな事に今の自分は踏みにじられる立場ではない。他の人間と比べるべくもない圧倒的な力を持っている。
成り上がってみせるとあの日、ボロ布に包んだ金貨を引きずった少年の行く末としては上出来では無いだろうか。
顔を上げたカシュバにはギラついた欲が滲んでいた。
その肉欲すら喚び起させる顔を見て、モモンガの側に控えていたアルベドは楽しむ。やはり人間は堕落させてこそだ。心の寄る辺にしていた少女を悪魔に堕とし、保護する名目でナザリックでの滞在を促した。決断にキレは無かったが、最後にはその少女の為に頭を垂れた。その時以上の愉悦が背筋をのぼりゾクゾクと身を震わせる。完全にこの人間を落として見せた。至高の御方の依り代も他愛がない。むしろ唯一崇めるべき対象は隣におられる死の支配者ただ一人。それ以外など何者であろうが虫ケラだ。
だと言うのに、何故モモンガ様は他の方々をこうも必死に探されるのか。このナザリックには唯、貴方様だけがいらっしゃればいいのに。
(いっそ気づかれない様にこの人間を殺してしまおうか?)
甘美な誘惑にアルベドの瞳は揺れる。しかしすぐに思い直す。全くもって悲しい事だが、モモンガ様はそれを望まれていない。
それにナザリックの僕など及びもしない程の叡智を持つお方に気づかれないなどという事はないだろう。
何よりも、何よりも確信としてある。もしモモンガ様の目の前にナザリックと、至高の御方々があり、どちらかしか選ばなくてはいけなかったら。
しばし迷って下さるかもしれない。けれど、最後に選ばれるのは私達ではない。
(私達を、私を一番に愛して下さい。何でもしてみます。全てを、全てを貴方様に捧げ、けして傷つかない様に守ってみせます)
頭で描いたままのやりとりがアインズとカシュバの間で行われる間、聖母の微笑みで見守る悪魔はその愛憎が渦巻くままに思考を巡らせる。
全ては愛する事を許していただけた、ただ一人の心を手に入れるために。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
やられた。
ウルベルトが一月ぶりに目覚め、その間の出来事を知った瞬間に思ったのはそんな言葉だった。
発案は誰だろうか。モモンガさんだとは思いたくはない。何というかこれは彼にしては悪魔的すぎる。きっとナザリックのNPCに何か言われてこうなったのだろう。そう信じたかった。
どうするべきか、そう悩んでいると高いノックの音がする。カシュバの部屋として割り当てられたここは第六層の森の中にある小屋で、他に人間の女達が暮らしている筈だ。誰かが何かの用だろうか? そう思って扉を開けると目の前に居たのは戦闘メイドの一人。夜会巻きにされた艶やかな黒髪を見下ろし名前を思い出そうと苦戦しーー
「ユリか」
「はい。お目覚めをお待ちしておりました」
カシュバの記憶の方が自分の記憶よりも探りやすい。いや、戦闘メイドの名前をすっかり忘れてしまってたのもあるだろう。が、自然に記憶を探った時にカシュバのものも思い出せる。その事に少しの恐怖を味わいながら要件を聞く。
「モモンガ様がお呼びでございます」
そう言ってユリは服を掲げる。それは懐かしいものだった。デミウルゴスの服のデザイン、その没案の中で気に入ったものを自分用に残しておいたものの一つだ。自分のアバターに合わせた落ち着いた色合い。それをユリに促されるまま着る。
最後にワンポイントのアクセントに派手なスカーフをまく。おかしいところは無いかと見た姿見の中には、垢抜けた青年がそこそこに似合ったスーツを着ていた。
そして案内されるまま第九層にあるモモンガさんの部屋まで行く。指輪があれば良いのだが、基本部外者であるカシュバに持たせるものでは無いのだろう。
まるで偉い身分になったかの様なやり取りの後、モモンガさんの許可を得て部屋に入る。
こちらを見たモモンガさんは破顔した。
骸骨の、動かない顔に対しておかしな表現だが、確かにモモンガさんは笑った、と思う。ゲーム時代だったら笑顔のアイコンで迎えてくれただろう。
しかし、そんな空気と裏腹に、支配者ロールをしている彼の声は落ち着いている。いっそ人間味の無い冷淡な声だ。
もし、中身がモモンガさんと知らなかったら、見た目通りの人外として不信感を抱いただろう。
「待ってましたウルベルトさん。知ってるとは思いますが、来月、起きたらやって欲しい事があります。カシュバとの記憶の繋がりがどの程度かわからないんですけど、もう一度説明した方がいいですよね?」
「……いや、大丈夫ですよモモンガさん。計画は全部知ってます。王国と帝国の戦争に割り込めば良いんですよね。でもそれ、本当にモモンガさんのやりたい事ですか? 数万人単位を使ったパワーレベリングなんて、倫理に反しますよ?」
そう。カシュバの記憶から読んだ今回の作戦ーー建国とギルドの名前を広げるのと、そして、カシュバーーウルベルトのパワーレベリング。ウルベルトの悪魔的部分はその無駄の無い邪悪な計画に拍手を送っているが、カシュバの人間的な部分は隙のない邪悪な計画に非難の声を訴えてくる。
「何を言ってるんですかウルベルトさん」
そんな非難混じりのウルベルトの訴えを、至極不思議だという様にモモンガは首を傾げた。
「貴方に早くナザリックに戻ってきてほしくてみんなで考えたんですよ。それにレベルの低いままだと不安でしょう? だから手っ取り早くレベル上げてた方がいいと思ったんですよ! ウルベルトさんもそう思うでしょう?」
声を弾ませた彼は、もう人間的な良心や倫理とは程遠い場所にいるのだろう。もう自分の知る彼では無いのではないか。
そう思ってしまった。
でも、ーー
『今日は今のところ俺とウルベルトさん二人だけなんで久しぶりに二人で狩りに行きませんか? 確か前ウルベルトさんが欲しがっていたドロップある所今いい感じに過疎ってるらしくて。超位魔法撃ってパパッと集めちゃいましょうよ!』
内容は邪悪だが彼にとってはかつてのあの日と同じ感覚なのだろう。ウルベルトの人生の中でも楽しいと思えた、そして思い出の箱に入れてしまった日々の続きができると、このギルド長は純粋に喜んでいるのだ。
結局、ウルベルトはナザリックの計画に参加するしかない。埋め込まれた楔は頑丈で、人間の情が邪魔をしてウルベルトにはちぎれない。アルシェもその妹達も、帝国の運命を背負ったも同然のカシュバは身動きが取れない程雁字搦めだ。
そして自分も。仮初めの世界に置いてきた居場所と、好ましいと思う友人を見限れない。
少し一人になりたいからと断って、一人墳墓の地上部分に出て考える。
かつての自分と仲間達が作ったNPCはなんと悪辣で頭が良く、そして容赦が無いのだろうか。ウルベルトはそう設定した側ではあるが、実在して動き出すとなるとここまでなのか。少ない情報からではあるが、モモンガさんも自分と同様種族であるアンデットに引きづられて元の倫理観とかけ離れた存在になっているのだろう。そして、それに拍車をかけるのはギルドメンバーの残した遺産。NPCの存在だ。言ってはなんだが、モモンガさんにここまでの行動力は無い。ギルド時代やその前を考えても積極的にだいそれた行動を起こす人じゃなかった。にもかかわらず、何万人もの他人を巻き込んだ作戦を実行するのは周りのNPCによる影響が大きい筈だ。
いかに穏健で慎重派なモモンガさんでも、周りを過激な行動派で囲まれればそれに引きづられる。人数の少ない時の活動で、たまたま、るし☆ふぁー以下アインズ・ウール・ゴウンの過激派代表が集まった時は出来るだけ穏便になる様に調整しつつもはっちゃけた行動をしていた。今回のこれも、まったくもって遺憾な事だがそういう事なんだろう。
「ウルベルト様」
甘い声。目を向けた先には予想した人物。
守護者統括アルベド。
アルシェを悪魔に変え、アルシェとその妹達の安全と引き換えにカシュバを手の平で転がした敏腕悪魔。
「そろそろお戻りになられてください。モモンガ様が心配されております」
隙のない美しい所作は荒れ果てた外装になっているこの地表部分では違和感が強い。
「そうだな。いつ急な眠気が襲うかわからない」
モモンガから疲労無効の指輪を渡されたが、結局つけれなかった。おそらくカシュバのタレントと関連していると思われる。なのでウルベルトは今までと同様眠りに落ちたらカシュバと意識が変わるのだろう。そして目覚めたら作戦日当日だ。朽ちた墓石の一つに座っていたウルベルトは立ち上がるーー前に考え直す。
「せっかくだから少し話さないか、アルベド」
自分の目の前にある墓石だったものを指す。それに一瞬の躊躇いを見せて、しかし断るのは不敬だと思ったのだろう、大人しくアルベドは座った。
「今回の俺のパワーレベリング、成功したらどうなると思う?」
「ウルベルト様の力が増して体の持ち主を乗っ取るのではないかというのが我々の見解です」
「なるほど、興味深い意見だ。それに現実感がある」
カシュバがこのナザリックで生活する様になって一ヶ月。この一月でウルベルトは自分とカシュバの意識が混じるのを感じ取っていた。それはカシュバに課されたレベル上げの効果だろう。生活環境の変化を鑑みたとしても、これ程の急激な変化は今までなかった。
「アルベドは確か戦士職だったな。今の俺は何レベルくらいに感じるんだ?」
「今のウルベルト様は40程でしょうか? 掴み所がない部分もあるのではっきりとは申せませんが」
「40ね。そんなものか」
100に近づくほど意識が混ざると仮定すれば、あと10レベルもすれば新月の晩だけ体の支配権を手に入れることができるというのも変わるかもしれない。そこまで考えて、どうしてモモンガが強硬に自分を強化したがるのかがわかった気がした。
「アルベドはモモンガさんをずっと見ていたのか?」
「ナザリックのものは皆、至高の御方々が一人、また一人とナザリックを去って行かれたのを知っております。最後に残られた慈悲深きモモンガ様が、長い時間を一人で過ごされていたのも知っております」
「……ナザリックにとって俺は邪魔だ、と、思っているんだな」
カシュバに対するアルベドの態度、そして今のやりとり。それを総合的に判断して出した結論をウルベルトはあえて口に出した。
この優秀な守護者統括は、自分が来たことによる不和を憂いている。その目が、取り繕えない苛立ちと憎しみを覗かせる。
それは決まってウルベルトがモモンガと話をしている時だったり、ウルベルトがモモンガの話題を出した時だった。そして今の発言。少なくともアルベドは“最後に残ったモモンガこそがナザリック地下大墳墓の支配者である”と考えている。それを他の僕に躊躇わせるウルベルトの存在が邪魔なのだろう。
「モモンガさんと対立する気はない、と言っても駄目だろうな」
「ええ。口先ではなんとでも言えます」
「ナザリックの為に俺が戦うという証が欲しいのか? だから帝国の為でも、自分の為でもない、モモンガさんとナザリックの為の作戦に参加しろと?」
「……」
返事はない。つまりこれはアルベドの思いとは違うという事だ。ならば、ーー
「そうだな。俺がナザリックに帰ってくるのは問題が起きそうだ。今は人間の体だしトップが二人いるのは良くない」
「わかっていただけたのでしたら嬉しいです。ウルベルト様、随分と話し込んでしまっています。モモンガ様のところへお戻りください」
「機会を見てカシュバごと殺す……はモモンガさんからの信頼を失うから嫌なんだろう? アルベド、お前の欲望はなんだ?」
「……」
アルベドの警戒心が高まるのが手に取るようにわかる。
ウルベルトにとっては自分の種族はビルドの為のものであり、自分の趣味とあった見た目からのものだ。だからウルベルトが真に悪魔的思考になったのはこの世界に来てから。合計時間で考えても二週間もない。しかし、アルベドにとっては違う。邪魔な存在であると思いながらも“至高の御方”である自分はナザリックを作った造物主であり“生まれながらの悪魔”自分よりも高位の存在として見ている事がうかがえる。
そんなものが自分の望みを聞き出そうとしている。
悪魔に悪魔の取引を持ちかけるのはどうかと思うし、正直新米悪魔の自分には荷が勝ちすぎているがしょうがない。自分の為だしカシュバの為だ。だから、今まで観察した中での対アルベド最高の切り札を初手で使う。
「ところでアルベドは結婚式に憧れは?」
「は?」
「前々からモモンガさんはギルメン以外に興味がなさすぎて心配だったんだ。アンデットとは言っても一生を添い遂げてくれる伴侶が、盤石な支配には必要だと思う」
突拍子もない発言に眉を寄せて訝しんでいたアルベドも、ウルベルトが言葉を重ねる度にその真意を見抜く。
信じられないと目を開き、顔を赤らめ、わなわなと口を動かし、でもそんな中で必死に頭を回転させて最善の道を探している。
「俺は正式にアルベドをモモンガさんの正妻に押そうと思っているんだけど、アルベドとしては他に想い人がいたりするのかな?」
「それ、は!」
「モモンガさんは俺らに甘いからなー。言えば何だかんだ折れてくれると思うんだよね。今でも結構アルベドの事意識してるみたいだし。まあ、アルベドの自由意志を尊重するよ。答えは次の新月の日にでも聞かせてくれ」
百面相のアルベドを残して指輪を起動させる。目指すは第九階層、ギルドマスターであるモモンガの私室。さっきは結構感情的になりすぎていたので正直気まずいが、モモンガさんだったら気にしないだろう。いつでも彼は嬉しそうに迎えてくれていた。
それが変わることなど考えずに、ノックをして入室の許可をまつ。大仰な事だが仕方がない。ウルベルトとしてはなれないが、カシュバとしてはすっかり習慣付いてしまっている。許可と共に中のメイドがゆっくりと扉を開けて中へと促す。
促されるまま中に入って、徐々に眠さを覚える体で、本日二回目のモモンガとの対談が始まった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ウルベルトにあしらわれた後、しばらくして我に返ったアルベドは今日の分の自分の仕事を終わらせてからモモンガの私室を訪れた。
ウルベルトの方は既に体を元の持ち主に返した後の様でいなかった。それに胸を下ろしつつ、本日の仕事の成果と報告をモモンガへする。ふむふむと顎に手を当てて頷くモモンガの手に自分と交換した指輪がはまっている光景を想像して、くふーとアルベドは声をもらす。それに優しい主人はどうしたのかと聞くが、なんでもありませんとかわす。まだ決まった訳ではない。そもそもウルベルトに返事をしていないし、本当に彼をナザリックに迎えることがいいことなのかを真剣に検討するに至っていない。その事を考えれば考えるだけ、頭にちらつく正式に夫婦となった後のモモンガとの生活にアルベドは悶えてしまう。
子供用の服の準備はばっちりである。後はモモンガ様からーー
「今日は随分と上の空だなアルベド。疲れている様なら明日一日ーーはお前の仕事が重要なので無理だが、半日程度休める様にするが?」
「申し訳ございません。勿体無きお言葉ありがとうございます。しかし作戦の決行日まで日もございません。疲労無効のアイテムも頂いておりますし、ゆっくりするのは終わった後で十分でございます」
貞淑に頭を垂れてモモンガを見つめる。
ウルベルトのあの発言以降流石に気を抜きすぎていた。自分の自由時間はあるのだから検討するのはその時で十分だろう。
恋に溺れる少女の様なアルベドは、既に自分の意志が決まっている事から目をそらして任されている仕事に没頭した。