3月6日に保釈された日産自動車のカルロス・ゴーン前会長の変装が物議を呼んでいる。無罪請負人といわれる弘中弁護士は、別の弁護士の判断だったとし「無罪を訴えるならもっと堂々との意見もあるが、ユーモラスでいいという考え方も」と苦しいコメント。でも笑いをとる必要って?
野球ではだましあいが基本。走者を誘い出すピックオフなど今や普通の戦術である。この世界でユーモラスといえば、中日のコーチも務めた達川さんをおいてほかにはいない。広島の選手時代に取材した。
だましの基本パターンは3つ。打席では内角球に当たったフリ。顔をしかめて一塁に走りだす。マスクをかぶれば、打者の顔面付近でミットをひらひらさせてから外角球を要求。さらにショートバウンドの球を捕球しながら後逸をよそおい、走者の飛び出しを誘う…。ただ、やりすぎて晩年は効果がなかった。
確か1990年ごろだと記憶するが、走者三塁で右足のつま先を投球がかすめた。暴投なら1点。達川さんは「当たっていない」と必死にアピールしたが、判定は死球。テレビの珍プレーでもおなじみのシーンを生で見た。翌日、彼は親指の先をはさみでくりぬいたシューズで練習にでてきたのには笑った。打撲でまともに靴が履けなかったのである。
「わしゃ、最初のうちは審判のクセまで研究してノートにつけたよ。この審判はクレームをつけるとストライクゾーンが逆に狭くなるとか」
冒頭の変装に関しては、当該弁護士がブログで謝罪したが、何事もやるならここまで研究しなくちゃ。(増田護)