日韓近代史資料集

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鬱陵島を鬱島と改称し、島監を郡守と改正することに関する請議書
 
右の件、該島は東溟に特立し大陸から遠隔であるが、開国504年に島監を設置して島民を保護し事務を管掌させており、島監裵季周の報告と本部視察官禹用鼎、東務司の視察録を參互節査したところ、該島地方は縦が八十里ほど、橫は五十里で、四圍壁の中に巨山があって北より南に至る。その間に大川あり、広さ深さは舟を幾つか容れることができ、その土は肥沃で民は素朴であり、この数十年、人口は蕃殖し、戸数は四百余戸あり、墾田は万余斗落ある。
居民の農作一年の収量は、藷二万余包、大麦二万余包、 豆一万余包、小麦五千包という。大まかに戸数、田数と穀数を陸地の山郡と比較すれば、数は及ばないが甚しく劣るものでもない。
最近、外国人が来て交易し、交際上のことも有り、島監と称するのでは行政上の障害もあるため、鬱陵島を鬱島と改称し島監を郡守に改正するのが妥当であるので、この段、勅令案を会議に提出する。
光武四年十月二十二日
                 議政府賛政内部大臣 李乾夏
議政府議政 尹容善 閣下 査照
 
(1900 - Oct. 22 - A petition by 李乾夏 "鬱陵島鬱島改稱하고島監郡守改正請議書", which excluded Dokdo from UldoCounty.)
 
 
イメージ 1




  勅令41号の制定を求めるこの請議書を見れば、彼らの関心は鬱陵島にしかないことが分かります。説明されているのは鬱陵島本島のことだけです。しかし、勅令には「区域は鬱陵全島と竹島石島を管轄する」というように、請議書では全く説明されていない属島が規定されました。このことは、この二つの属島が特に説明をする必要もない、本島の近くのそこら辺にある小島のことだと想定することが可能です。いや、想定することが可能というよりも、そうとしか考えられないでしょう。
 朝鮮半島から鬱陵島までは約130Km、そして鬱陵島から竹島/独島までは88Kmあります。それほど離れた島を属島として管轄に入れるなら何がしかの説明があるはずですね。それがないのです。しかも、この請議書は島監裵季周、内務部の視察官禹用鼎、務士ラポートの情報をもとにしているわけですが、この3人とも竹島/独島まで行ったという記録が一切ありません。もちろん、それ以前の鬱陵島視察官たちも誰一人竹島/独島まで行って見て来たという記録はありません。
そもそもこのときの鬱陵島視察は、日本人が鬱陵島に勝手に入り込んで狼藉を働いている、という認識がもとになっているわけです。その際、もし竹島/独島も韓国の領土だと思っていたのなら、鬱陵島よりもよほど日本に近い独島はどういう有り様になっているのだろうと心配するのが当たり前で、それなのに誰も現地を見に行かないというのも普通考えられないことです。つまりは、竹島/独島には何の関心もなかったのです。おそらくは、鬱陵島から90Kmぐらい離れたところに小島があることすら知らなかったのでしょう。
 
 そして、この請議書には鬱島郡の管轄区域を説明する地図が添付されていないということも結構重要な事実です。「実は地図は添付されているのだが、それを公開すると石島は独島ではなくて観音島のことであったという事実がバレてしまうので隠されているのに違いない」というのは全く根拠のない私の邪推ですから、こんなことは言わないことにします(イウトルガナ)。韓国側の研究者が誰も添付地図のことを言わないということは、添付地図はなかったのだと理解しましょう。
 しかし、添付地図は無かったのだとしても、新しい郡を設置して「鬱陵全島と竹島石島を管轄する」なんていう内容を決定する重大な政府会議において、全く地図なしで議事が進行したのでしょうか。常識的に考えてちょっとそういうことは考えられないですね。「鬱陵島ってどんなところだったかな?」とか「竹島とか石島とかいう島はどこにあるのか?」というような疑問に答えるために何らかの地図は必須である、と想定することが可・・・・もとい、必須であると言えるでしょう。請議書のために特別に地図が作成されたのではないとすれば、それは既に存在する地図が説明に用いられたことを意味します。そして、ここが大事なところですが、この時代のころまでの朝鮮及び大韓帝国の地図に竹島/独島を描いたものなどただの一つも無いわけです(先日、「独島」を書いた謎の地図が発見された、というニュースはありましたが)。ということは、つまり勅令41号制定会議では竹島/独島を描いていない地図で説明が行われたことになります。
常識をもとに考えればそういう結論になります。だから、石島が竹島/独島であることなど有り得ないのです。
では、会議のときにどういう地図が使われたのかというと、もちろんそんなことは分からないのですが、ただ、請議書の中に「該島地方は縦が八十里ほど、橫は五十里」という説明があるのが注目されます。鬱陵島の大きさは「縦80(32km)、横50(20km)」と把握されているわけですが、これは何を意味するのか。
 
実は、この18年前である1882年に鬱陵島を調査して『鬱陵島検察日記』を書いた検察使李奎遠は、現実とは違って南北が長く東西が短い鬱陵島の地図を残しています。
 
 
鬱陵島外図
 

これが「縦80里、横50里」ということかも知れません。そして、この二つの地図が説明に用いられたのかも知れないわけです。何しろ、直近の公式検察使の報告結果ですからね。
 外図を見て見れば、鬱陵島の周囲の島と岩が多数描いてありますが、そのうち今の竹島(チュクト)が「竹島」とされ、今の観音島が「島項」とされていて、その他は全て「○○巌」()ですね。ここに描いてあるものから岩は除いて、「島」というに値する「竹島」と「島項」を勅令に規定したと考えれば非常にスムーズにことが理解できます。「鬱陵島外図」が説明に用いられたということは証明はできませんが、可能性としてはかなりあるのではないでしょうか。
 
 そして最後に『独島問題概論』の記述です。1955年に韓国政府の外務部政務局が政府の内部資料として作成した『外交問題叢書第11号 独島問題概論』の中では、1900年勅令41号を説明しながら、「独島は記録と実際知識によって早くから知られており、鬱陵島の一属嶼として封禁期においても往来が絶えることがなかったのは前述したとおりで、独島をあえて鬱陵島の行政区域に編入したと宣言する必要もなかったのであり、また、ことさらに公的記録を残す理由もない」として、竹島/独島は勅令41号には規定されていないことを正直に認めているのです
 石島は独島ではない! 韓国政府は確認ずみ
 
 
結局、石島は竹島/独島ではないのだから、可能性うんぬんを言うのは間違いなのです。「歴史学」を駆使して間違ったことを世に広めてはいけません。池内さんの石島論は「竹島/独島と石島の比定問題・ノート」で終わりにしておけば良かったのに、今回の新書では要らぬことを付け加える結果となってしまいました。
 


閉じる コメント(4)

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精緻な考察、いつもながら感服です。(matsu)

しかも、しっかり史料も示しているので、とても説得力があります。
「歴史学」はこうありたいものだと思います。

「縦長」の李奎遠の地図が使われたというのは、おおいにありうることだと私も思います。おっしゃるように
>何しろ、直近の公式検察使の報告結果ですからね。

2016/5/10(火) 午後 7:55 [ cqh*m42**0427 ] 返信する

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matsuさん、ちょっとホメ過ぎの感が・・・・(汗)

しかし、歴史上のことを「可能性」であれこれ言っていいのならいろいろと言えますねえ(笑)

2016/5/10(火) 午後 9:46 [ Chaamiey ] 返信する

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>歴史上のことを「可能性」であれこれ言っていいのならいろいろと言えますねえ(笑)

その通り。そんなのが多すぎます。
しかも「~のはずだ」と思い込んでいるから、それにあうように見える史料があると「~の可能性を読み取ることは不可能ではない」とくる。「歴史学」というのはそんなに甘い学問なのか。(matsu)

2016/5/11(水) 午前 8:30 [ cqh*m42**0427 ] 返信する

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Chaamieyさん 本当に、いつも感心しているのです。(matsu)

>もし竹島/独島も韓国の領土だと思っていたのなら、鬱陵島よりもよほど日本に近い独島はどういう有り様になっているのだろうと心配するのが当たり前で、それなのに誰も現地を見に行かないというのも普通考えられないことです。つまりは、竹島/独島には何の関心もなかったのです。

これも賛成です。

2016/5/11(水) 午前 8:32 [ cqh*m42**0427 ] 返信する

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