日韓近代史資料集

韓国ニュー・ライトの応援+竹島問題

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「韓国軽視」の姿勢?

1905年の竹島領土編入に当たって、日本政府の官僚たちにはその島はひょっとしたら朝鮮のものかも知れないという認識があったはずなのに、韓国政府に対して事前照会も事後通告も一切行われなかったことから、「当時の日本における韓国軽視の姿勢が鮮やかに浮かび上がってくる」というのが池内さんの評価です。

しかしですね、そういう評価は無理なのです。日本政府は国際法の無主地先占という概念を用いてことを処理しました。なぜ国際法というもの用いたかというと、一言で言えば、西欧列強から文句を言われないようにするためです。あるいは、日本も西欧列強と同じく国際法を理解して実践する文明国家であるのだ、ということを示したかったのです。つまり「西欧諸国に追いつきたい」、「西欧諸国から軽んじられないようになりたい」という当時の社会状況の現れの一つであったと言えるでしょう。
だから、間違ったことはできないのです。「無主地先占」などと格好の良いことを言いながらその実は隣国の領土である島を自己の領土としてしまうなどというようなアホウなことをやったならば、西欧諸国から「やっぱり国際法など理解できない未開人だな」とバカにされる危険性は大いにあったでしょう。当時の官僚たちはそのくらいのことは当然に考えた、と推測するのは無理があるでしょうか? 官僚たちは、韓国を軽視して好き勝手をやったならそのツケは日本に返って来るおそれがあると分かっていた、と見るべきでしょう。
だから、当時の日本政府は、韓国政府に事前照会することはなかったものの、それなりに情報を集めて(主たる情報源は中井養三郎でしょうか)「他国の占領の事実がない」と判断したから領土編入を決定した、と考えるのが自然ですね。そして、その判断は結果として何も間違ってはいなかったのです。
 
しかし、池内さんの分析は「もし閣議決定の前に照会がなされていたら、どうなっただろうか」というふうに続きます。ちょっと長くなりますが、詳しく引用しないと著者の考えがうまく伝わらないので長文引用です。そして、この部分は池内さんがこの本で特に言いたかったことの一つではないかと思います。
 
 
19063月、神田由太郎の発言を聞いた沈興沢は、「本郡所属独島」に関わる緊急報告を間髪を入れずに上司に宛てて送付した。急報を受けた地方官・中央政府の高官たちいずれも、独島は韓国領であると即応した。独島が大韓帝国領であることを示す明文はどこにも見つからないが、彼らの発言の様子からすれば、1906年までに独島に対する国家的領有の意識が存在したことを読み取るのは不可能ではない。そして19049月にはすでに「独島」なる島名が鬱陵島在住朝鮮人知識層のあいだで頻用されていた。とすれば、1904年のうちに日本側から照会がなされたならば、おそらくそこで「りゃんこ島」領有の正当性をめぐる議論が紛糾することになったに違いない。そこでは証拠の有無の提示や確認作業を必要とするから、少なくとも19051月の閣議決定はできなかっただろう。
 ラスク書簡は「この島は、かつて朝鮮によって領土主張がなされたとは思われません」と述べるが、1905年の閣議決定前に事前照会がなされたとすれば、おそらく韓国政府は(証拠能力の有無はともかくとして)明確な領土主張を行ったはずである。そして、そうした主張は、「朝鮮の一部として取り扱われたことが決してなく」とする認識を覆す行為につながったはずである。(p237)
 
 
 この文章をその前の論述とも併せて私なりに要約すれば、つまり、1905年の日本の竹島編入は一応有効で、サンフランシスコ講和条約でも1905年の編入を有効と見て竹島は日本領土と決定されているけれども、それは実は、もし編入の際に日本政府が韓国政府に事前照会をしたならばその時点で紛糾したに違いなく、そういう紛糾があったならば、サンフランシスコ講和条約でも竹島が果たして日本領と判断されることになったかどうかは非常に疑わしいのだ、竹島は形の上では日本領になっているけれどもそれは非常に危うい事実経過の上にかろうじて成り立っているに過ぎないのだ、だから島根県告示での編入公表でも合法だなどと軽々しく言うべきではない、ということなのでしょうね。こういう考え方について皆さんはいかがお考えになりますか?
 
 
 (続く)

 

閉じる コメント(9)

池内氏の主張は「単なる推測」ですね。
また、国際法の法理を理解していません。

国際法の観点からすると、証拠は「疑義の無いもの」が求められます。
「○○していたら、✕✕だったかもしれない」という想像・憶測をもって、手続上有効な領域権原の確立を阻むことはできません。

そもそも「先占」という権原そのものが「早い者勝ち」の理論です。
他国より先に実効的占有を行使した国の領土権の確立を認めるものです。
日本の手続そして動機になんの瑕疵があるのでしょう?

また国際法では、両国の実効的な占有が入り乱れて行使される「競合」という状態が指摘されています。
この場合「一方の国の実効的な占有を認めない」という考え方をするのではなく、「両方の国の実効的な占有を有効なものと認めて、その上でより強い根拠(実効的な支配)を有している国の領土権を認める」という「相対的な強さの比較」の原則が適用されます。

どうやら池内氏の主張は「権原・権利の確立を棄却する」という理論のようで、根本的な所で誤っているように感じます。

池内氏は「法には正義がなく、歴史には

2016/4/2(土) 午後 11:52 [ mam*to*o*1 ] 返信する

↑また、最後の文章が切れてしまった…

>池内氏は「法には正義がなく、歴史には



>池内氏は「法には正義がなく、歴史には正義がある」とでも言いたいのでしょうか?

2016/4/2(土) 午後 11:54 [ mam*to*o*1 ] 返信する

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例えるならば、「サッカーの試合」ですね。
ワールドカップの決勝戦で、両チームが死力を尽くして闘うとします。

両チームにとって勝利は重要ですから、ルールに許される限りのあらゆる手を模索するでしょう。
そしてルールに則って行われたプレイの結果、Jチームが得点を得たとします。

ここで解説者が
「先ほどのJチームのプレイにはラフなプレイが行われたが、プレイヤーに『反則を取られるかもしれないと思いながらプレイをした』という意識が存在したことを読み取るのは不可能ではない。
そのプレイヤーが「先ほどのプレイはルールに抵触したかもしれない」と申告した場合、反則が取られていたかもしれない。
よって先ほどの得点は有効ではない可能性がある。
ルール的には問題ないかもしれないが、ルールどおりに得点した(合法)だと主張するのは、開き直りでないならば、あまりにも配慮が足りない。」
と解説するようなものです。

さらに解説者は続けます。
「よってJチームは、相手チームに対して進んで譲歩しなければならない…!」

2016/4/3(日) 午前 1:01 [ mam*to*o*1 ] 返信する

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この解説者の説明を聞いて
「なるほど!Jチームは相手チームに譲歩しなければいけない!解説者の説明は実にもっともなことだ!」
と思うでしょうか?それとも
「なにいってるの?ルール的に問題がないなら得点は有効だよ。解説者の正気を疑う…」
と思うでしょうか。

私は後者です。


そもそもラフプレイというのは「当時征服の権原は有効だったので、日本は朝鮮を『征服』して竹島の領土権を得た」というような、ルール的にはOKかもしれないが、ギリギリの領土権主張。というレベルでしょう。

でも、日本が主張しているのは「先占」なんですよね。
実効的占有の有無を重要視した、とても品行方正な主張です。


これに対して「合法だと主張するのは、開き直りでないならば、あまりにも配慮が足りない」なんて主張する池内氏の解説は…(苦笑)

2016/4/3(日) 午前 1:14 [ mam*to*o*1 ] 返信する

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大韓帝国の独島に対する国家的領有の意識が存在したなら「鬱島郡の配置顛末」で沙汰止みになったことの説明がつかないと思います。統監府にムリヤリ言わされたとか言うんでしょうか。そんなに「国際法より歴史を重んじよ」というなら、国際法的には領有権確立の十分条件たり得ない江戸時代の竹島と日本の関わりも重視していただきたいものです。

2016/4/3(日) 午後 0:44 [ h2b ] 返信する

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お二方のコメントありがとうございます。全く、何でこういうことを言わなければならないのか理解できないことですね。
池内さんは竹島について日本人が「竹島は日本領だ、根拠は1905年の編入であり、またサンフランシスコ条約だ」と声高に主張することがよほどお嫌いのようですが、有効なものを主張することがなぜいけないのか、そこには個人的な何かの思い入れがあるんでしょうねえ、良く分かりませんが。

2016/4/3(日) 午後 8:30 [ Chaamiey ] 返信する

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それに、事前紹介したなら紛糾したはずだと決めつけてあるわけですが、h2bさん御指摘のとおり、「鬱島郡の配置顛末」が反論材料になります。次回に取り上げる予定です。

2016/4/3(日) 午後 8:32 [ Chaamiey ] 返信する

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学問的外皮をまとった反日論
Chaamiey様
matsuです。
>そこには個人的な何かの思い入れがあるんでしょうねえ

池内さんの議論を「学問的外皮をまとった反日論」と言った人がいますが、皆さんはどう思われますか?

mamatotoさんのサッカーの例はとてもわかりやすいです。
法(ルール)に基づいて国益(勝利)を追求することは、倫理的にも道徳的にも「正しいこと」であって、「悪いこと」ではありません。相手をおもんぱかって「わざと負けてあげるのが正しい」というのは、ひねくれた議論です。それこそ、相手を見下した態度であり、成熟した関係を築くことは出来ないでしょう。

2016/4/13(水) 午前 7:13 [ cqh*m42**0427 ] 返信する

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「学問的外皮をまとった反日論」ですか、なかなかうまいですね。

2016/4/13(水) 午後 7:26 [ Chaamiey ] 返信する

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