日韓近代史資料集

韓国ニュー・ライトの応援+竹島問題

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そして、話はいよいよ著者(池内氏)が最も言いたいところにさしかかります。池内氏はサンフランシスコ講和条約で竹島が日本領として残ったこと自体は認めているわけですが、そこには実は重大な問題があると考えておられるようです。次のような文章があります。

 
問題は、サンフランシスコ平和条約はいったい何を根拠にして竹島を日本領と判断したか、である。現在までのところ、その点を明らかにしうる唯一のよりどころはラスク書簡しかない。そして次項で述べるように、ラスク書簡は1905年の日本領編入を中心的な論点とみなしている。そうである以上、竹島問題の最大の争点は、1905年の日本領編入をどのような歴史的事実としてきちんと評価するかにかかっているのである。(p231)
 
 
ラスク書簡(1951.8.10)の竹島関係部分は次のような文章ですね。
独島もしくは竹島またはリアンクール・ロックスとして知られる通常は無人の島嶼については、我々の情報によれば、韓国の一部として扱われたことは一度もなく1905年頃から日本の島根県隠岐島庁の管轄下にあります。この島は、これまで韓国によって権利の主張がなされたことは明らかではありません。
 
 
既に知られていることですが、サンフランシスコ講和条約の草案作成過程では、最初のうちは竹島は韓国領土とする案が作成されていました。しかし、日本政府の努力によって1905年の領土編入以後のことがアメリカ政府に正しく理解され、最終的には竹島は日本領土という条約となりました。
普通ならばこれでお終いとなるところですが、池内さんの場合は、「竹島問題の最大の争点は、1905年の日本領編入をどのような歴史的事実としてきちんと評価するかにかかっている」というふうに、そもそも1905年の編入自体が問題があったのではないかという考察に進みます。
 
 
竹島日本領編入を行った1905年を前後する時期に生起した諸々の史実を振り返ったときに、釈然としないものを感じざるをえない。(p236)
 
 
ということですが、「1905年を前後する時期に生起した諸々の史実」というのは、第6章に書かれていること、すなわち、1960年代の新聞に掲載された回想記事によれば、1900年ごろには複数の朝鮮人漁民が独島へ個別に出漁し、細々とながらもアシカ猟を行っていたと認められること、竹島編入のきっかけを作った中井養三郎は最初は韓国政府に申請しようと考えていたが、その理由として朝鮮人漁業者との競合が想定されること、1906年に竹島編入を知った韓国政府の大臣たちが「独島が日本領土だというのは全く根拠のない話だ」などの反応を示したこと、などを指しているようです。一言で言えば、日本への編入の前に、韓国側でも竹島に対してかなりの関わりを既に持っていたと考えられる、ということでしょうね。
韓国側でもある程度竹島(編入前は「リャンコ島」、韓国では「独島」)に関わりを有していたのに日本が一方的に領土としたのは「釈然としない」ということのようです。釈然としないことを具体的にいうと、次のような点だそうです。
一つ、竹島を領土編入しようとするときに、海軍、農商務省、内務省、外務省の官僚たちには、その島は韓国領かも知れないという疑念があったはずだが、編入前に韓国政府に照会もしなかった。
一つ、編入後に韓国政府に公式の通知もしていない。
一つ、ときは第一次、第二次の日韓協約が締結されて韓国の外交権が失われていった時代である。そういうときに、事前照会も事後通告も一切考慮されなかったことから、当時の韓国軽視の姿勢が鮮やかに浮かび上がる。それは韓国に対する諸施策によって日に日に日本の政治的影響力が大きく膨らみゆくなか、次第に行動の自由を縛られつつある韓国に対してわざわざ事前照会・事後通告をする必要もないとする相手を見下した態度である。
 
そして、次の見解が表明されます。
 
 
島根県告示での公表は国際法に照らしても合法だと主張するのは、開き直りでないならば、あまりにも配慮が足りない。(p237)
 
 
さて、竹島問題というのは今現在の領土紛争であり、韓国を相手としてこれから解決すべき大きな外交問題です。島根県告示という地方官庁の告示であっても国際法上は合法だと主張すること(かつて、日本の外務省は韓国政府が「日本の地方庁の一つによるそのような単純な告示は、その島嶼に対する韓国の主権に決して影響を与えるものではない」と言って来たことに対してそういう主張をしたー1954210日付け亜二第15)が、「開き直り」あるいは「あまりにも配慮が足りない」ものかどうかは知らないが、仮にそうだとして、では今後の問題解決に向けて、日本政府は島根県告示に関してどういう態度を取れということになるのでしょうかね。韓国政府に対して「確かに島根県告示では不十分でした、今は韓国に事前照会ないし事後通告をすべきであったと考えます」とでも言えということになるのでしょうか。
まあ、池内さんもそこまで言うつもりはないのでしょうが、最後のほうで一般論として「日本人・韓国人を問わず、自らの弱点を謙虚に見つめ直し、譲歩へ向けて勇気をふるうことが、いま求められているのではないか」(p253)という言葉があるので、韓国側としても既にある程度の関わりを有していたリャンコ島を韓国に事前照会ないし事後通告もせずに「一方的に」領土としたことも日本側の一つの「弱点」として考慮して、何かの譲歩の素材とすべきだ、という主張になるのでしょう。
 
こういう議論で問題になるのは、日本が「韓国の領土を奪った」のかどうかということですね。もし日本が韓国の領土を奪ったのであれば当然それは問題ですが、実際は日本が領土とする時点で竹島は韓国の領土ではなかった。韓国政府中央は竹島の存在すら知らなかった。だから、領有実現に向けての動きを進めていたわけでもない。それを日本が「先占」した。それだけのことです。県が告示しただけであって事前に韓国に通告をしなかったとしても先占は有効である(池内さんもそのこと自体は認めている)のだから、そのことを主張して何が「開きなおり」若しくは「配慮が足りない」となるのか分からない。


 

閉じる コメント(8)

この点に関しては、池内氏は「サンフランシスコ平和条約をちゃんと理解していない」と非難せざるを得ません。

>「サンフランシスコ平和条約はいったい何を根拠にして竹島を日本領と判断したか、である。現在までのところ、その点を明らかにしうる唯一のよりどころはラスク書簡しかない。」

この文章からして「???」です。

ラスク書簡は、サ条約の「条約解釈に関する補助的資料」です。
つまり「ラスク書簡はサ条約の結果であって、原因ではない」のです。

池内氏は、ラスク書簡をサ条約の「原因」つまり「源」と考えているようです。
ですから1905年の島根県編入の正当性を、サ条約の竹島処理の正当化と直結させています。

違うのです。
サ条約の領土処理とは「放棄」です。
過去の支配(1905年の編入等)から領土権を「創設」したのではないのです。

「竹島が放棄されなかった」ということは「1905年の編入を始めとして既に創設されていた日本の領有権に変更を加えなかった」ということです。

1905年以降の日本の支配とは、国際法上のeffectivites(国家の主権的行為)なので

2016/3/29(火) 午前 0:19 [ mam*to*o*1 ] 返信する

池内氏のこの部分の記述は、韓国お得意の「国際法的な根拠を歴史的認識でひっくり返すぞ」論法と著しく酷似しています。

「国際法的に合法かどうか」というのは、あくまで国際法上の事柄です。
「池内氏の考えた歴史的基準」で「配慮している」か「配慮していないか」を判別するのは全くの無意味です。
ご自分を「歴史と法の審判者」とでも勘違いしているのでしょうか。

一番大切な所で大きく躓いた、という印象を受けました。

2016/3/29(火) 午前 0:31 [ mam*to*o*1 ] 返信する

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「1905年以降の日本の支配とは、国際法上のeffectivites(国家の主権的行為)なので」(尻切れ)

「1905年以降の日本の支配とは、国際法上のeffectivites(国家の主権的行為)なのであり、「歴史的考察に基づく配慮」とは無縁の「法的根拠」なのである」

2016/3/29(火) 午前 0:59 [ mam*to*o*1 ] 返信する

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そうですね。サンフランシスコ平和条約で竹島は日本領として残ったので、残った理由が何であろうと竹島日本領はどうしようもない現実です。条約は1905年の竹島領土編入を有効なものと見たから竹島は日本領として残ることになったという点は池内さんの説明でいいだろうと思うのですが、池内さんは、ささいな事実から竹島編入に疑問を呈し、ひいてはサンフランシスコ条約自体も問題があるように匂わせる言い方をしています。何でそういうことを言いたいのか分かりません。

2016/3/29(火) 午後 8:58 [ Chaamiey ] 返信する

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池内氏は歴史学の専門で国際法の専門ではないとラジオ出演でも明言していました。国際法の専門家は、この問題では塚本先生でしょうか。その受け売りになりますが。池内氏は、1904年9月~1905年の国際法に基づく領土編入手続きの法的効果を理解しようとしていないようです(この編入行為は相手側の協力を要しない単独行為で法的効果生じる)。池内氏の赤い字(P236P237)のところは、韓国側もこの編入前の時期(1900~04年ころ)リャンコ島に何らかの関わりを持っていた、ゆえにこの編入行為には倫理的に釈然としないのものを感じ、相手側への配慮も足りない、と感じているのでしょうか!。

一方では日・韓でリャンコ島に競合状態が生じていたとも言います。ならば、国際法に基づく先占・領土編入手続きを取って法的に勝ったのは日本側でした。ただ、この法的効果を否定するためには、リャンコ島が「無主地ではなかった」と主張するしかありません(現状「鬱陵島の属島説」以外に明確な根拠を示すことに成功していません)。本文記事と前の皆さんのコメント・Gの本コメにも関連しませんが、4月1日が近づいて参りました。気を付けましょう(笑

2016/3/29(火) 午後 10:06 [ gku***** ] 返信する

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そうですね、4月1日のニュースには跳び付かないように心しましょう(笑)

2016/3/29(火) 午後 10:14 [ Chaamiey ] 返信する

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池内氏の主張する相互譲歩なるものがどういうものなのか読んでない(おい)人間にはよく分からないですね。ロッコール島よろしく無主地に戻すとか、黒瞎子島よろしく分割するとか、あるいは爆破するとかでしょうか?爆破論は日韓双方に魅力を感じている人が少数ながらいる印象を受けます。私はあまり同意できないのですが。

2016/3/30(水) 午後 7:56 [ h2b ] 返信する

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本を読んでもそこは書いてないので分かりません。絵空事なので具体的には書けないのかも知れません。「強いられる譲歩よりも主体的に選択した譲歩のほうがいい」という考えも述べられていますけどね。

2016/3/30(水) 午後 9:10 [ Chaamiey ] 返信する

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