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【書評】

外国人労働者・移民・難民ってだれのこと? 内藤正典著

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◆移民社会への心構えを説く

[評]宮田律(現代イスラム研究センター理事長)

 日本政府は労働力不足に対応するために出入国管理法を改正し、四月から新たな外国人受け入れ制度をスタートさせた。在留資格である「特定技能」を二段階に分け、まず「1号」の外国人を五年間で約三十四万五千人受け入れる計画だ。より高い技能をもつ「2号」になった人たちは、家族の帯同が認められ、上限なしに滞在期間を更新できるという事実上の外国人の永住システムが確立された。

 「移民政策はとらない」と安倍首相は主張してきたが、突然の方針転換である。日本では定義すらよく知られていない「移民」とは、家族と一緒に定住した人たちのことをその家族を含めて言う。本書は、ヨーロッパにおけるトルコ人などムスリム(イスラム教徒)移民を研究してきた著者が、外国人労働者受け入れ問題、移民・難民とは何かを、ドイツなどの事例とともに平易に解説する。

 欧州では、文化や慣習が異なるムスリム移民や難民たちが、彼らの排斥を唱える極右勢力の台頭をもたらしている。ムスリム移民が欧州社会に溶け込めない疎外感からテロを起こしたこともあった。

 日本人や日本の社会は、外国人労働者の受け入れ拡大に伴い、接触することが多くなかったムスリムたちに偏見なく接することができるだろうか。日本では、イスラムはテロや紛争と絡んで報道される場合が多く、少なからぬ日本人にイスラムは危険な宗教という認識ができあがっていることは、著者の言う通りだ。

 また、日本が外国人労働者を受け入れる相手国の数が多すぎて母語で裁判を受けられない危惧など、様々な問題点も指摘され、彼らに日本人と平等な権利が与えられるべきだと強調される。

 少子高齢化が進む日本は、経済を維持するために外国人の労働に頼らねばならない。その日本の制度的不備を指摘しつつ、移民社会を隔絶させないで絶えずコミュニケーションを図ることを説くなど、日本人の心構えや振る舞いはどうあるべきかについて有意義な示唆を与える一冊だ。

(集英社・1728円)

1956年生まれ。同志社大大学院教授。著書『となりのイスラム』など。

◆もう1冊 

浅川晃広著『知っておきたい入管法』(平凡社新書)。法改正の意味を解説。

 

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