【大相撲】朝乃山、きょうにも初V 栃ノ心破り、ただ一人2敗守る2019年5月25日 紙面から
◇夏場所<13日目>(24日・両国国技館) 2敗を守った平幕朝乃山(25)=高砂=が単独トップに立った。朝乃山は大関復帰まであと1勝としていた栃ノ心(31)=春日野=との行司軍配差し違えの勝負を拾った。14日目に朝乃山が豪栄道に勝ち、鶴竜が栃ノ心に敗れれば初優勝が決まる。鶴竜は高安に敗れて3敗となり、高安は給金を直した。豪栄道は正代を下して9勝目を挙げた。 感謝の思いを原動力に朝乃山が、前に前に攻めて栃ノ心を寄り切り、令和初の賜杯へグッと近づく11勝目をもぎ取った。行司軍配差し違えの末の白星だったが「勝つのはあれしかない」と頭から突進し、左上手争いを制して流れをつかむ万全の相撲っぷり。結びの一番で鶴竜が敗れたことで再び単独トップに立ち、14日目にも初優勝が決まる「マジック2」となった。 「強い人とやる時は、頭から行け」 立ち合いは、2017年1月に関取昇進決定の一番を見届け、40歳で亡くなった母校・富山商高相撲部の浦山英樹元監督の金言が背中を押した。勝ち越しを決めた9日目に試すと「ここ一番で出ると思う」と予告していた。 今場所、いつもは中日から使う「浦山英樹」とフルネーム入りの化粧まわしを、初日から着け続けている。「令和になって初めての場所で悩んだけど『先生と一緒にいこう』と。自然にです」。亡き恩師が誰よりも身近に、寄り添ってくれる。 大関復帰にリーチをかける栃ノ心へ、強烈な恩返しも果たした。春場所は終盤戦で5連敗し、7勝8敗と負け越し。悔しさをバネに稽古量と質の両立を求める中で、胸を借りまくった。 右の相四つでがっぷり組む力比べでは、勝ち目なし。「先に上手を取って、上手を取らせない。走るだけ。止まったら負けだと思っていた」。連日の稽古で転がされて砂まみれになりながら、大一番へ勝ちパターンを組み立て結実させた。 平常心を強調しながらも歓喜の瞬間のイメージは、着々と出来上がっている。優勝祝いは「タイじゃなくてブリ」と故郷富山を代表する出世魚を熱望し、おどける心の余裕も頼もしい。 朝乃山の「山」の1文字は、富山だけでなく恩師の名字も意識した。最後の教えは、手紙だった。「横綱になれるのは一握り。お前はその無限の可能性がある。富山のスーパースターになりなさい」。震える字が、目に焼き付いている。 手紙は巾着に入れ、支度部屋にも持ち込んでいる。富山出身力士として、横綱太刀山以来となる103年ぶりの頂点の景色を、一緒に確かめる。 (志村拓)
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