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【社説】

熱中症 大災害に匹敵する怖さ

 五月なのに気温が上昇している。熱中症への注意が必要だ。正しい知識を持ち対策を取れば回避できる疾患である。誰でもその危険があると理解し生活のあらゆる場面で予防に取り組みたい。

 千五百十八人。厚生労働省によると昨年六~九月に全国で熱中症で亡くなった人の数だ。過去十年で計八千六百四十七人に上る。これは阪神大震災の死者数六千四百三十四人を上回る。

 もはや気象現象というより災害と考えた方がよさそうだ。

 今日、運動会を予定している小学校もあるだろう。既にその練習中に子どもたちが熱中症となり救急搬送されたケースも各地で出ている。備えを早めたい。

 熱中症は、高温多湿な環境下で体内の水分と塩分が不足し体温などの調整がうまくできなくなり、めまいや頭痛などの症状が出る。さらに運動や意識の障害などを起こす。症状の悪化は命に関わる。

 消防庁によると昨年、救急搬送された約九万五千人の約半数は高齢者、それ以外の成人も約四割を占めた。建設や運送、製造業など屋外作業をする職場で多発している。農作業中だった人もいる。

 発生場所も屋外とは限らない。死亡者の約四割は住居だった。気温と湿度が高いと屋内でも起きる。つまり生活のあらゆる場面で多くの人が熱中症になる危険性があることを再確認したい。

 個人はもちろん、職場では事業主が、学校では教員やスポーツ指導者が、介護施設や保育所などでは職員が予防に目を配ってほしい。必要なら屋外活動を中断、中止する勇気を持ってもらいたい。

 発生を防ぐには、正しい知識と気象状況の把握が大切になる。室内では室温の調節に気をつける。外出時は帽子や日傘を使う。高温なら外出を控えたい。こまめな水分補給に加え体を冷やす保冷剤などを活用したい。

 気象庁は熱中症対策用の気象情報を出している。各地の熱中症危険度を示す環境省の暑さ指数を活用することも有効だ。対策に関する情報も関連する省庁がホームページなどで提供している。

 ただ、政府は関連情報を各省庁バラバラに発信している。熱中症の被害増に危機感があるのなら、例えば環境省や気象庁が“司令塔”役を担うなどさらに分かりやすい情報提供を考えるべきだ。

 もし自力で水が飲めなかったり意識がないなど熱中症が疑われる人が周囲にいたら、迷わず救急車を呼んでほしい。

 

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